俺達は暗闇の底で、そっと世界を守る。

久遠 れんり

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第三章 暗躍する者達

第24話 混乱

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「おい聞いたか?」
「なにを?」
「死人が人を襲っているらしい」
「はっ? ラノベかよ」
「マジなんだって」
「そういえば、警官が多いな」

 町で、そんな話が流れ始めた。

 その頃警察も大騒ぎ。
「絶対にチームを組め、二人では駄目だ」
 その頃、パトロール中のパトカーを残し職員が消える事件が多発を始めていた。
 警官も人間。
 本人や家族から勧められて、退官をする人間が増え始める。

 元々、特別国家公務員は、ある程度から役職は上がらない。
 キツく給料は安い。
 集中的に狙われ始めれば、一部の熱血的な人間を除き退職者が増えていく。


「暑ーい、今日で二日目。あと三日……」
 朱莉は一人ぼやきながら学校へ向かう。

 その途中で、誰も乗っていないパトカーが落ちていた。
 ドアが毟られて、人は居ない。
 だがエンジンはかかっていた。

「そして、やな匂い」
 クンクンと匂うが、途中で途切れる。
「車かなぁ?」
 周囲を探査するが、それらしいものが感じられない。
「颯司がいれば、もっとハッキリ探せるのに」
 ぼやきながら、電話をする。

「事件ですか、事故ですか?」
「あの、○○町の道ばたに、ドアを毟られたパトカーが落ちてます。どうしましょう?」
「遺失物でしたら、お近くの交番へ届けていただけますか?」
 とまあ、適当なお返事。

「パトカーなので、重くて無理です」
 電話の向こうで、気配が変わるのがなんとなく分かった。

「パトカー…… 落とし物?」
「ええ。エンジンはかかりっぱなしで、ドアが毟られています」
 そこまで言うと、途端に、あわて始めた相手。

「ちょっと待ってください、署員を向かわせますので」
 そう言われると、朱莉は困ることになる。
 彼女は重要な、補習へと向かう所。
 朱莉にとって、颯司がデートしないと言うなら、ものすごく軽くなる物だが、警官が来て現場検証という事なら、途端に重要になる補習。

「私学校で補習があるので、失礼します」
 そう伝えて、ぶちりと切る。
 だが相手は警察、すぐに折り返して電話がかかる。
 当然、着拒である。

「何とかなるわよね、私も見たわけじゃなし」
 そう思ったが、学校にまできた。

 補習は、圧迫面接のような事情聴取と平行で進められ、帰りにお言葉を頂く。
「火祭のお嬢さんだったのね。もう少し真面目にお勉強をしないと、御父様の顔を潰すことになるわよ」
 などとまあ、向こうもこっちも苦笑い。
「ありがとうございます」
 そう言うしかなかった。

 朱莉の成績が、国家にバレた瞬間である。
 その後、仕事の関係でどうしても警察に出会うため、そのたびに頑張っておるかね、とか、真面目に励んであるかね、なんていう言葉を、警察の偉い方から聞かれることになる。


 有名と言う事も、悲劇を生むようだ。


 そして、親のところに依頼が来たようで、警察が言うことには。
「おちおちパトロールに出ることができない。何とかなりませんでしょうか」
 そんな依頼だったようだ。

 そう暴力組織である警察も、武力が通じない相手にはどうしようもない。それは自衛隊も同じ。

 こちらは、宮内庁管轄。
 お願いをされれば、動かなくてはならない。
「正式な依頼として受理をいたします」
 そういう事になったようだ。

 そうして、町全体で風が強くなった頃、被害は他の町でも発生をする。

「風が、何かを捕まえた」
 風魔 導かざま しるべ二十八歳が、見つけた方を指さす。
「本当なの?」
 火遣 萌ひつかい もえ二十九歳外部かしげな目で見る。

 素直に走り出す者達、水音 清深みずね きよみ二十七歳、土柱 塚雄どちゅう つかお二十八歳。
 彼らはこの地方を司る者達。
 幼馴染みで、揃って独身。

 駆けつけたが、パトカーの残骸。
 ただ、導が追いかける。

「あっちだ」
 ヘルメットに仕込んだ、ヘッドセットから声が聞こえる。

 狭い道を取り、先回りをする。
 窓にフイルムを貼った怪しい黒いバン。

 まだ中から、声が聞こえる。
 まあ、来るな、痛い、いやぁとまあそんな声。

 横に並んで、蹴った瞬間。
 向こうからのぶちかまし。
 だが、一般人とは違うのだよ。

 いきなり道路に、石柱が生える。
 ぐしゃっと車の前部が潰れる。
「ちっ。能力者に見つかった」

 後ろに乗っているのは、鬼ではなく兵隊の子鬼だったが、何かを食わさないと、自分たちが食われるため餌の捕獲回数が増えていた。
 おかげで見つかった。

 組織の人間も結構大変なようである。

 逃げ回り、廃工場へと逃げ込む。
 アジトの一つ。
 ここには、鬼が二体居た。
 鬼一口おにひとくち目一鬼まひとつおに
 あまり有名ではないが、鬼は鬼。
 人とは違う。
 存在を隠す結界が周囲に張られて、風から身を守っていた。

 車が止まり、兵隊達は逃げていく。

 子鬼達は、まだ食事中。
 十匹ほどが、警官二人にかじりついていた。
 麻酔もなく、囓られる。
 それはどれほどの苦痛なのか……

 追いつき扉を開いたとき、すでに亡くなっていた。

 風が吹き込み、子鬼達を切断。

 背後で吹き上がる鬼の気配。
 周囲を風が探査をして、人が十人ほどそして鬼が二体。
 風がが吹きすさび、組織の兵隊は、アキレス腱を切られる。

 鬼共は、流石に効かなかったようだ。

「風がはじかれた、鬼が二体居る、人間は逃げられないように足を切った」
「りょうーかい」
 土柱 塚雄が体に土を纏突っ込んでいく。
 その鎧は土だが、銃弾さえはじく。
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