俺達は暗闇の底で、そっと世界を守る。

久遠 れんり

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第三章 暗躍する者達

第31話 思惑

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 解放された怨霊は、取り憑いた男の記憶を時間をかけて読んだ。

 過去に怨霊は、政治の中で右大臣に登ってみたり、関東の豪族として兵を挙げたり、色々しただが、封じられて時間が飛んだ。

 この世界では、帝にあまり力は無く、議会が力を持つ。
 暴力組織も、制限がひどくあまり大きな動きができない。

 最初の浮浪者は、組織を手に入れるときに、撃たれて体が壊れてしまった。
 次の奴は、体も良かったが、そもそも不摂生が祟り体がボロボロだった。
 あの奇妙な薬は駄目だ。

 そのため、人間を諦めて鬼達を仲間にと思ったが、奴らも自我が強く、思ったように動かない。

 そして、必ずじゃまをしに来る組織。

 暴力組織の中で、為替などを扱っていた男に取り憑いて、優雅な暮らしの中で今を学んだ。

 結局は、金だな。

 空にそびえる、昔には考えられなかった建物。
 そこの最上階をワンフロア、この男は持っている。

 そう、当時の帝よりもよっぽど良い暮らし。
 見たこともない食い物、呼べばすぐに来る女達。

 だが、その満足感はすぐに薄れる……

 大昔、この国にまだ帝などいなかった時代。
 農作業を行い、集団ができてその中で周囲の集落を襲い、暴力で集団を大きくした。
 村の英雄とも言える自分を、欲に駆られた友達が俺を焼き討ちした。

 そう、それが怨霊となる、俺の恨みの始まり。

 殺され彷徨った俺は、周囲で、勢いのあった村長に取り憑き、俺の作った村を襲った。
 俺を焼き討ちした奴らは、生きながら皮ををはいでやった。

 それから、千年近く暗躍後、封じられた……

「つまらんな」
 女達は、金の為にやって来る。
 そう、俺のためではない。

 あの頃、貧しかったが満足があった。
 強く行動力のある俺自身を欲して、女達も男達も俺の元にやって来た。
 それは、脳を焼くように甘美なもの。
 承認欲求という言葉がある様だが、俺の望むのはまさにそれだろう。

 考える。
 復活をして、俺は何をしたい……

 この男のおかげで、金は幾らでもある。
 だがつまらん……


 ついにやりました。
 閉じ込められて苦行を積み、静殿の皆伝を頂く。

 胸がじゃまだが、自分でもう少しで敏感な所を舐められるくらい柔軟ができる。
 まあしないが……

 これを考えれば、人間というもの、可能性は無限。
 体が柔らかくなり、忍者の体術を、これから教えてもらえることになった。

 だけど、私はそこで不思議な世界を見る。
 ただ立っている静殿。
 だけど、ある距離に入ると、なぜか私は床に寝ている……

 Tu ma fe puuruトゥ マ フェ プール えっなに??

 そう、そんな言葉しか出ない。
 静殿は和やかに立っているだけ。

「この範囲に入れば、攻撃をするからよく見てね」
 そう言って、立たされる。

 そして、手を取りに行くと、また床に。
 たおれて、起き上がる。
 それだけで、私の足はプルプルし始める。

 倒れるときは痛くなく、床を滑る様に倒される。
 まるでマジック。

 一時間もすれば、私は立つことができなくなる。
「うーん。少し待ってね」

 そう言うと、静殿は颯司達を連れてきた。
 横に、朱莉殿と雫殿が立っていた。

「ゆっくり、体術を教えてあげて、いま重心のずらしだから」
 そう説明をして、静殿は出て行ってしまった。

「何をしていたのかな?」
 少し赤い顔をして、颯司殿が聞いてくる。

「分かりません。近寄れば床に寝ていて……」
 それだけで、颯司殿はああという顔。
 他の二人はうんうんと頷いている。

「手を良いかな」
「はい」
 そう言って右手を出す。
 手首をもたれて、体から離すように手を引っ張られる。

 私は、柔軟になった体を使い踏ん張った。
 その瞬間に、引っ張る向きが変わり、颯司殿に向かって倒れる。

 小柄な体で、がっしりと支えられて、抱き合う形になってしまう。

「どう、体を崩すのがなんとなく分かった?」
 耳元で聞かれて、思わず声が出る。
「ひゃうっ」
 その瞬間声が響く。

「颯司、ぎるてぃ。私が代わる。さっさと離れて」
 割り込んできたのは、女の子二人。
 雫殿が、颯司殿を引き離し、朱莉殿が目の前に来る。

 だけど、雫殿は颯司殿に抱きついたまま離れていない。

 だけどそれを指摘しようと思うと、私は倒れそうになる。
 だが手を引かれて倒れない。
 そのかわり、別の方向に倒れそうになる。
 そして、手を引かれ色んな方向に倒されそうに倒れそうになるが倒れさせてもらえない。

 ゆらゆらとあっちこっちに、勝手に体が持って行かれる。

 踏ん張ろうと思っても、踏ん張れない。
 だけど、倒れさせてもらえない。

 その内、酔ってしまい、道場の綺麗な床にキラキラとしてしまった。

 それが最後、足が滑って自分が出した液体の上に……

「「「あっ」」」
 そう。最悪。

 皆が走りモップなどがすぐに出てきて、あっという間に掃除がされる。
 そうそれは、熟練の技。

 幼少期からの教育、そのたまものらしい。
 私にはカルチャーショック。
 小さな頃から掃除……

「これも、鍛錬の一つなのよ」
 雫殿の言った言葉に驚いてしまう。
 幼少からの生活すべてが鍛錬……
 これはかなわないはずだ。

 まあ鍛錬というのは、修行という意味なのだが、アマンダには理解できない。
 掃除が、技の一つだと理解をした様だ。

 こうして、彼女の忍者への道はまだ遠く……
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