俺達は暗闇の底で、そっと世界を守る。

久遠 れんり

文字の大きさ
38 / 55
第三章 暗躍する者達

第38話 確信

しおりを挟む
「忍者とは、今も闇のものと戦っている」
 アマンダは、今日も怪しい日記を書き記す。

 今日見た光景は、強烈だった。
 突然燃え上がる炎。
 あれはきっと火遁の術。

 フランスにいた頃、見た書物。
 それに書かれていたことは本当だった。
 パルクールのような動きで、あらゆる所を走り回り、魔法のような術を使う。
 そして、闇のものと戦う。
 そうそれは忍者。

 それこそが私の目指す姿。
 
 パルクールとは、フランス発のスポーツ。建物の上、壁、到る所をアクロバティックに走り回る。

 そうその姿は、忍者そのもの。

 ただそれは、忍者の極一方面の姿。

 本物は、気配も見せず術を使う。
 術こそすべて。

「むうっ」
「あらあら、アマンダさん。また家の中でそんな格好をして」
 静さんに見つかってしまった。
 廊下で仁王立ちをしていたら、叱られた。きちんとパンツは穿いているのに……
 理不尽。

 
「ああ暑い」
「火使いがこの暑さで参るの?」
「雫ってば、そのミストは何?」
「いいでしょう。颯司はもっとこっちに来る?」
 朱莉が、駅前のお店で売り始めた、秋の先取りサンマアイスを食べるというので店に向かっている。

 俺と雫はイチジクアイス。
 サンマは、癖がありすぎて、一部マニアのみが買うものだ。
 香川県には、うどんの入ったアイスがあると言うが、まあそのたぐいだな。

 世の中には、鮭いくらアイスもあるんだから、良いだろう。

 だけどまあ、暑い時期にはおかしなものもいる。

 橋の欄干の袂、子ども達が遊んでいるのかと思うと、カッパ達が流れて遊んでいた。

 こいつら、俺達以外だと、普通の子どもにしか見えない。
 そう何か偽装をしている。

 たまに川を覗くと目が合ったりするし、変わった町なんだよ。

 駅前に行くと、並んでいる人達、半分が人間じゃない。
 そして、サンマアイスが馬鹿売れ。

 おじさんも困惑しながら、毎年作っているらしい。

 温かい御茶と、アイスを買う。
 なぜかそれが決まり。

 近くの公園で並んで食べる。
「うん。これこれ」
「喜んでそれ買っているの、半分向こう側の奴らだったぞ」
「良いのよ、美味しいは正義」
「前に売っていた、ウナギアイスは消えたな」
「あれはだめよ、生臭かったし」
「そうなのか?」
「うん」
 違いが分からん。両方食べたが俺にはあわなかった。

 その日は町でうろつき、八咫烏が鳴く頃家へと帰った。


 すると、何があったのか、廊下にアマンダが倒れていて、右手の指先には、涙でままさんとダイイングメッセージが書かれていた。

 とりあえず無視をする。

 夕飯時に話しを聞くと、アマンダが例のごとく、裸でうろついていたので、水牢に座らせてお説教をしたため足が死んでいたらしい。うちの水牢は地下水のため十五度くらいしかない。


 さて、泣き暮らすアマンダを連れて、山へキャンプにやって来た。

 ここは、キャンプ場ではなく、家の山。

 無論、皆来ている。
 今年はたまたま家の山だと言うだけで、皆の家も、山がある。
 恒例の夏のキャンプ。
 そうキャンプと言うが、サバイバルと言った方が良い。
 慣れないうちは、死にそうになった。

 そして一人、場違いに喜んでいる奴がいる。
 そう、アマンダだ。

 周りでは、皆が黙々と荷物を点検し、装備を装着をする。

 各山には主がいる。
 気を付けねば、命に関わる。
「大丈夫なの?」
「大丈夫でしょ。あなたたちでも五歳くらいで、普通に過ごせたじゃない」
「おれは、五歳だけど、朱莉は最近まで死にかかっていた気がする」
「そうだったかしら?」
 かあさんは変ねえと首をひねる。

 父さん達が、子ども達を集めて、ゴール地点とマップを配る。
 そして一言。
「よし生き残れ。帰宅は明後日なので、午後0時にここへ戻ること。颯司拾ってきたのはお前だ、アマンダの面倒を見ろ。以上。散会」

 その瞬間に、父さん達は笑いながら消える。

 それを見て固まるアマンダ。

「ほら荷物を持って、行くぞ」
「イエスサー」
 一応、アマンダの軍服は、ケブラーポリパラフェニレン テレフタルアミド繊維を編み込んである。
 ケブラーとは、アラミド繊維で耐熱及び引張り強度が高い。
 デュポン社の登録商標である。

 ただ紫外線に弱いので、使い捨てにしている。
 うちは軍より過酷なんだよ。

「どうするの?」
 雫が、あらあらという感じで、アマンダを指さす。

「うん? 覚えているだろ。足を引っ張るとどうなるか……」
「あーそうだったわね。先に行くわ」
 引き吊った顔で雫はそう言うと、逃げるようにいなくなる。
 無論、幾度となくその扱いを受けた朱莉は、とっくに消えた。

「俺はいた方が良いんだろ」
「そうだな、手間を掛ける。どうせ朱莉はどこかで泣いているだろ」
「ああ、お腹を壊すのは得意だからなあいつ」

 そう変なものを、すぐ拾い食いする。

「ほら行くぞ。これを体のベルトに引っかけろ」
 俺の背中から伸びたロープを渡す。

 アマンダです。貰ったフックをカションとはめ、行くぞと聞こえた瞬間、世界が変わった。

 颯司と小太り陸斗は、はじけるように走り出した。
 そう、キャンプは、私の思うキャンプではなかった。
 簡単なマップを見てオリエンテーリングの様な要素を持った物だとは理解をした。

 だけど、すぐに私の足は地面から離れた。
「アマンダ、枝だ、蹴れ」
 枝、どこ?

 見ると三メートル向こう、二メートル下方に枝。
 どうやって…… ひいいいっ……
 きっと私は死ぬ…… そう確信をした……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...