俺達は暗闇の底で、そっと世界を守る。

久遠 れんり

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第四章 脅威は広がっていた

第45話 過去の話

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「おい、お前誘ってこい」
 横山 晃司よこやま こうじはクラスのいじめられっ子。

 始まりは、一年のくせに彼女がいるなんて、生意気だと訳の分からない理由だった。
 その子が本当に彼女なら、問題がないわけでも無いが、単なる同中で話をしていただけ。
 そして先輩は、俺達にも愛情を分けておくれと彼女にねだり、股間を蹴られて逃げられた。
 それでさらにまあ、生意気だと……
 もうね。

 そして、同じ部活に所属をするクラスメートまで、彼をぱしりとして使うようになった。

「水祭さんを? 本気ですか?」
 話を聞いて驚いた。

「ああ、なんだそりゃ? てめえ、横山のくせに意見するとは百万年はええ」
 そう彼女の家は、旧家で、武道か何かを教えていて、門下生には警察官とか暴力組織の人とかが居ると噂になっている。

 へたに関わると沈められる。
 そんな噂が立っていた。

「まあ良いですけれど、知りませんよ」

 そう言ったら殴られた。


「すみません。そういう事で行ってもらえますか?」
 説明をすると、彼女はきょとんとしている。
 初めて身近で見たけれど、まつげは長く、色白で、本当にお嬢さんという感じ。
 噂では彼女も怖いと言っていたが、そんな感じには見えない。

「ええと、すみません。よく分からないけれど、部室で同級生とか先輩が私を襲うために待機しているから…… 行って欲しいと聞こえたんだけど……」
 全くその通り。
 俺はうんうんと頷く。

「そうです。中に居るのは屑ですので、海に沈めるなり山に埋めるなり好きにしてください」
 俺はそうお願いをする。

 ついぎゅっと手を握ってしまった。

 彼女はじっと見てくる。
 手は繋いだままで、特に嫌がられていない。
 こっちがドキドキしてきた。

「ひょっとして、虐められているとか?」
「はい、そうです」
 そう言うと、うーんと、彼女は悩み始める。

「分かった何とかするから、手を離してくれる?」
「あっはい、すみません」
 手を離すと、一瞬彼女の手が霞んだ気がした。

 雫は、手をミストで消毒をした後答える。

「約束は十六時なのね?」
「はい、そうです」
「分かったわ、潰してみるから。安心をして」
 彼女はそう言って、ニコッと笑ってくれた。

 マジ天使だ……
 俺は、姿が見えなくなるまで、見送る。
 まあ教室目の前だから、二秒くらい?

 その日、これでいじめがなくなると考えたら、ものすごく嬉しくなった。
「はっ、後日、菓子折とか必要なんだろうか?」
 
 などと考えて、いたらあっという間に放課後になる。
 クラスから、ニヤニヤしながらいじめっ子達が出て行く。

 雫のクラスでも、幾人かが嬉しそうに教室を出て行く。
「なんだあれ?」
「うーん。エアサッカー部の連中が、部室で私を襲いたいらしいのよね」
「部室で襲う? なんだそりゃ?」
 そう聞くと、分かっているくせにと、雫の肘打ちが、颯司の脇腹を襲う。

 パシッと払うと、雫はくるっと回り力を逃がす。
「私に興味があって、色々としたいみたいよ」
 そう言って雫は、颯司をじっと見る。

 未だに、誘っても手を出してくれなくて雫は悩んでいた。
 嫌いなの? そう聞くと好きだよと答える。
 でもそれは、朱莉にも同じ。

 思春期のギクシャクの中で、連携のために付き合いもありかと思うが、ギクシャクしだしたときには、命が危ないと颯司は考え一歩が踏み出せない。
 無論、どっちと付き合うという問題もある。

「行こうか?」
「あーうん。潰したいからさ、先生も呼んできて、コミュニケーションアプリにメッセージを送るから分かった。うーんすでに準備はできて、部室棟の両側に見張りがいるな」
「分かった、行ってくる」
 そう言うと、ぎゅっと抱きついてくる。

 つい普段のつもりで、儀式をする。
 そうお小遣い稼ぎで、一度ミスった後、このおまじないを望むようになった。

 だがここは教室。
 音が止まる。

「じゃあ行ってくるね」
 そう言って、雫が出た後、ざわざわが始まる。
「うーん。あれ良いわね。私もしよう」
 朱莉がニヤニヤし始める。

「あの後、雫は怖かったらしくてね」
「ああ、あの時ね」
「それでまあ、戦うための儀式が始まったんだ」
「むう。私も怖いのぉ」
 朱莉がそう言うと、後ろから声が聞こえる。

「私も怖いのぉ…… ……さあ、職員室へ向かっておこうぜ」
 陸斗がそう言って、抱きついてきたので躱す。

「ああ、そうだな」

 そうして待っていると、『たすけてえ、犯される。エアサッカー部の部室』とメッセージが来る。
「先生大変です。学内で、強姦事件です」
 そう襲われているとか行っても動かない。
 重要であることを伝える。

「そんなばかな、ふざけた……」
 たまたまいた先生だが、俺達の顔をみて固まる。

 そう俺達が絡むと、小さな事件でも大きくなる。
「場所はどこだ?」
「エアサッカー部の部室です」
「あいつらか……」

 エアサッカーがどういう部活か知らない、商品としてホバータイプの円盤はある様だが、それとは関係ないらしい。

 少し前。
「おっ、本当に一人で来た」

 つかつかと近寄り、部室のドアを開ける。
「あなたたちも仲間なんでしょ? 入ったら?」
 そう言って外にいた二人を中に入れ、ドアを閉める。

 その瞬間に、部室の隙間から水が噴き出す。
 最初は、きちんと襲われるつもりだった。

 そう考えたのだが、触れられるのはもってのほか、目付きも、空気もすべていや。どう考えても我慢ができないと思い、どうせ中に居るのは、汚物ね。汚物は丸洗いと、短絡的に決めた。

 朱莉なら丸焼きだから、それよりはましだっただろう。
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