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第一章 異変の始まり

第8話 何とか脱出

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 実は、こちら側に来たとき。
 勢い余って、シャーマンゴブリンを、来た瞬間に蹴り倒した。
 前回はワイヤーがあって、それを頼りに開いたが、今回は完全に繋がりが切れた状態。

 そんなことを知らない、改は、はたと考える。
「どうしよう? 帰れないから、とりあえず。捕まった人たちを助けるか?」
「そうだね。すでに脱がされ始めてるから、やられちゃうよ」
 そう言って、手で顔を覆っているが、指は全開。見えているよな。

 ちなみに、ぐったりして、脱がされているのは、同い年くらいのお兄ちゃん。
 その脇で、ゴブリンの凶悪な物はそそり立っている。

「うわー。前戯もなしで。痛そう」
「そう思うなら、ワクワク顔で見ていないで。助けるぞ」
「えー見物しないの?」
「おまえ。他人事だからって、それはないだろう」
 そう言いながら、走り込み。頭を蹴り上げる。

「ぎゃっ」
 そんな声を残し、飛んでいく。
「きゃあー。やっちゃえ。改」
 そんなに声を出して、騒ぐから周囲に集まってくる。

「ああ面倒。だけど、この前のを使うと。全員輪切りだ」
 何かないか?

「くそう。リストでも出ないのか。不親切。大体あのじいさん。力をあげようとしか、言わなかったからな」
 イメージする。ストーンパレットって石つぶてか。石の矢は、スートンアローとかで良いのか? 頭で考えるが今イチ。

「うーむむ。刀をこの手に」
 うん? 光が集まって。イメージ通りの、落書きのような剣が出た。
「無いより、ましか」

 ぶんぶん振り回し、殴っていく。
 切れねえ、何だ。このなまくらな剣は。

「今度、デッサンの勉強をしよう。まずは裸婦からだな。でも落書きのような万結だと怒るよな」
 あっしまった。意識したら出てきた。
 15cm位の、抱っこをせがむ万結みたいなもの。見られる前に投げよう。
 ちょっと、大きいゴブリンがいたので、万結もどきを投げる。
 胸から上が爆散した。

 畜生、周りで、サバトが開催され始めた。

「万結おい。何処へ行った」
「ここ。ゴブリン。殴ったら死んじゃった」
「良いんだよ。倒せるなら殴れ。もう幾人かやられてる」
「あっ本当だ。へー。あんなおっきいの、すごいね」
「かわいそうだろう。助けろよ」
 そう言って、倒しに行く。


 もうね、必死で倒しまくった。

 男も女も服が破かれて色々まずい。
 もう万結は、隠すふりもせず見て回ってる。
「人それぞれ、違うのね」
 頭をこずく。
「何を見てるんだよ?」
「改だって、見てるじゃん」
「仕方ないだろう。集めているんだから」
 そう、散らばっている人たちを集めている。
 合わせて、15人くらい。

「ふう疲れた」
「ここって集落だよね」
「壊滅させたから、懸賞金なら出ないぞ」
「あっそうだ。残念」
「ほら」
 さっき買った御茶を渡す。

「おにぎり買ったよね」
「ああ食うか。おしぼりが先だな」

 まったりしていると、30分くらいで、ゾンビのように皆が動き始めた。
 そして、当然ながら、叫び声とかが聞こえ始める。
「ゴブリンは、倒しました」
 それだけ伝える。
 暖かいから、皆薄着なんだよな。

「すみません。此処何処でしょうか?」
「多分、異世界側だと思います」
「異世界?」
「ゴブリンを追いかけていたら、ここへ来たので」
「そうですか。戻れないのでしょうか?」
「さっき来たところへ、入ったけれど接続が切れていて」
「そうですか」

 そんなことを話していると、周りでも此処何処だよと言う声。
 やられたと言って、泣き出す声。
 様々。そして、旦那より良かったという声まで。

「試してみるか?」
 そう言って、洞窟まで戻ってみる。
 万結は背中側に張り付いている。

 手を開き、意識を集中する。
 この向こうは、日本。日本。駅前。
 うん? 何か感じた。
 目を開けると、揺らぎが見えた。
 顔を突っ込むと、人が大騒ぎして警察も集まっている駅前。
 顔だけだが、声をかける。

「此処何処ですか?」
 その声に反応した警官は、見て驚くが答えてくれる。
 正解か。
 俺は、後ろ。異世界側に振り返り。叫ぶ。
「見つけました。繋がっている間に、早くこっちへ来てください」
 それを聞きつけ、ぞろぞろやってくる。
 体が半分の俺を見てぎょっとするが、手招きをする。
「早く。閉じると、俺の体が半分になりそうなので」
 そう言うと、あわてて皆が集まり。抜け始める。
 1m外れると駄目なようで、並び直していた。

 最後に万結が俺の手を引き、一緒に日本へ出る。
 すでに警察が、謎空間から出てきた人たちから、事情を聞いている。

「何とか、帰ってこれたな」
 そう言って、万結と手を繋ぎ。帰ろうとして踵を返した。
 だが。遅かったようだ。

 後ろに立つ警官。
「君達も、出てきたよね」
「あーはい。ゴブリンの巣は潰しました。懸賞金が無いのは承知しています。では、失礼」
「いや。こちらも、そうですかというわけには、いかなくてね。皆さんが仰るには君が助けたと」
「いや元々、彼女がさらわれて、助けに行っただけですから」
「彼女。ああいい響き」
 万結が俺の言った、変なところに反応して、くねくねし始めた。

「とりあえず。二人とも名前と住所を」
「匿名希望です。郵便は私書箱へ」
「私書箱。契約しているの?」
「いえ。言ってみたかっただけです」
「はい。書いて」
 A4の用紙が、差し出される。
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