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第6話 流行
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そんな時に、流れ始めたニュース。
「Aの飲食店では、男がわめき散らした後、踊り始めるという事件が起こりました」
「それは変わった事件ですが、今回、どうしてそれを取り上げたのでしょうか?」
仕込みのセリフに促されて、新しいフリップが掲示される。
「見てください」
出された表。
向かって左から、日時と事件が起こった場所が書かれている。
そして、他の部分はまだ隠されている。
一枚捲られると、事件のあらましが箇条書きにされている。
事故現場で言い合い。
店員の態度が悪いと苦情。
路上で電話中。
店でナメクジが入っていたと暴れた。
車が暴走後、事故。
等々、千差万別。
「これは一例です」
そう言って、もったいぶって捲った所には『踊り』と書かれていた。
「重要テーマは踊りです。この加害者や被害者は突然踊り始めたのです」
大げさな感じで説明をするアナウンサー。
「それは不思議ですね。何か共通点はないのでしょうか?」
「そこなんです。この方達は皆。実は何かに対して、その時怒っていた方達です」
うんうんと頷く。
「怒っていた?」
「ええ、そうです。この路上で踊り出した方は、いわゆるクレーマーでして、幾度もメーカーに電話をするために、通話が録音されていました。番組ではその音声を入手いたしました。少し内容的に刺激的な言葉が含まれています。どうぞ」
そう言うと、言葉が流れ始める。
だがまあ、声にはピッチシフターエフェクトがかかり、よく聞く犯人のような声が流れる。
「だから、最初っからおかしかったのよ。肌は赤くなるし張りはなくなるし」
「ですが、先日もお伝えした通り、空瓶を送ってこられても返金は行えません。中身は使われたのですよね?」
「違うって言っているでしょ、合わないから捨てちゃったんだけど、そちらに言えば返金されると聞いたと言ったでしょ」
いきなりそこで声が途切れる。
アナウンサーが、別のフリップを出してくる。
「この方は、関東に住む四十代の女性。化粧品を購入しては中身を抜き取り返金をしていた様で、一度目は店の方が応じまして、それで二度目からは未開封で無いと駄目と言われたそうです」
そう説明をすると、ゲストから声が掛かる。
「化粧品とか、開封して合わないことがあるでしょう?」
「そうですね。メーカーのほうは製法とかに問題が無いかをチェックするために交換とか返金を行う所が多いです。ですがこの方のように、空瓶だけを返すというのは少しその決まりからも外れています」
「どうして? 別に良いじゃ無い」
平然とゲストはそんな事を言う。
「この方は、中身を別の容器に移して、クレームを言って代金を返してもらうという詐欺行為を行っていました」
「えっ? 駄目なんですか? SNSで紹介。お得な節約術って紹介されていましたよ」
「それは犯罪です。どこで見たのですか?」
「先週、この番組で…… えっと、紹介をしていましたよね」
スタジオの空気が凍る。
「でっ、では犯人が踊り出すところをどうぞ」
流れる声は、サポートセンターの物で、踊っているところは踊りだしてから、周りの人が撮影した物だった。会話が途中で止まったと思ったら、鼻息が聞こえて、それが徐々にリズムを伴ってくる。
でまあ、景気よく、堂々とした姿で踊り始める。
それを見て、パフォーマンスかと思い、幾人かが足を止める。
だがそれは、ひたすら続く。
暇なことに、誰かが警官を呼ぶところまで、撮影をされたのだろう。
途中でカットされると、次は捕縛されてパトカーに押し込まれていくところだった。
「この踊りは、何でしょうね?」
「昔流行ったアイドルの振り付けですね」
ゲストが教えてくれる。
「情報をありがとうございます」
素直に礼を言うと、話は続き始める。
「この色々な場所で発生した事件なのですが、じ・つ・は…… …… コマーシャルです」
軽快な音楽が流れて、場面が変わる。
「あなたの思いを伝える。月影印のバレーシューズ。これを履けば、あなたも精霊になれる」
バレーシューズのコマーシャルだった。
コマーシャルが切り替わる。
「此方を飲んでいただきましょう」
街頭で、いくつかの酒を飲んで貰い、どれが良かったかを聞いているようだ。
「二番です」
「ありがとうございます。此方は弊社の商品。厳選絞りたての梅酒です」
そう言って、ラベルを此方に向けて嬉しそうにカメラに笑顔を見せる。
あたった人は、嬉しそうに小瓶を抱えて車に乗ると出発をする。
「次の方は、どれでしたでしょうか?」
「この一番が良いですね」
「ありがとうございます。これは弊社の特選梅酒でございます」
ああ…… どれを選んでも弊社商品なんだね。
「あれ、そう言えば、一番目の人、酒気帯び運転だな」
ついテレビに突っ込む。
そして、コマーシャルが終わり、番組に戻る。
全員が亡くなったと、随分とじらした割にはあっさりと告げていた。
一応、警察では連続変死事件として扱うと言っていた。
だがそれはすぐに引っくり返り、病気であることが発表された。
日本中が騒然とした。
だが、それはすぐに沈静化をする。
発症のトリガーと言われたのが、過度の怒りだからだ。
日本人で、そんなにしょっちゅう怒り狂う人は居ない。
そう、以外と、日本は平和なのだよ。
「Aの飲食店では、男がわめき散らした後、踊り始めるという事件が起こりました」
「それは変わった事件ですが、今回、どうしてそれを取り上げたのでしょうか?」
仕込みのセリフに促されて、新しいフリップが掲示される。
「見てください」
出された表。
向かって左から、日時と事件が起こった場所が書かれている。
そして、他の部分はまだ隠されている。
一枚捲られると、事件のあらましが箇条書きにされている。
事故現場で言い合い。
店員の態度が悪いと苦情。
路上で電話中。
店でナメクジが入っていたと暴れた。
車が暴走後、事故。
等々、千差万別。
「これは一例です」
そう言って、もったいぶって捲った所には『踊り』と書かれていた。
「重要テーマは踊りです。この加害者や被害者は突然踊り始めたのです」
大げさな感じで説明をするアナウンサー。
「それは不思議ですね。何か共通点はないのでしょうか?」
「そこなんです。この方達は皆。実は何かに対して、その時怒っていた方達です」
うんうんと頷く。
「怒っていた?」
「ええ、そうです。この路上で踊り出した方は、いわゆるクレーマーでして、幾度もメーカーに電話をするために、通話が録音されていました。番組ではその音声を入手いたしました。少し内容的に刺激的な言葉が含まれています。どうぞ」
そう言うと、言葉が流れ始める。
だがまあ、声にはピッチシフターエフェクトがかかり、よく聞く犯人のような声が流れる。
「だから、最初っからおかしかったのよ。肌は赤くなるし張りはなくなるし」
「ですが、先日もお伝えした通り、空瓶を送ってこられても返金は行えません。中身は使われたのですよね?」
「違うって言っているでしょ、合わないから捨てちゃったんだけど、そちらに言えば返金されると聞いたと言ったでしょ」
いきなりそこで声が途切れる。
アナウンサーが、別のフリップを出してくる。
「この方は、関東に住む四十代の女性。化粧品を購入しては中身を抜き取り返金をしていた様で、一度目は店の方が応じまして、それで二度目からは未開封で無いと駄目と言われたそうです」
そう説明をすると、ゲストから声が掛かる。
「化粧品とか、開封して合わないことがあるでしょう?」
「そうですね。メーカーのほうは製法とかに問題が無いかをチェックするために交換とか返金を行う所が多いです。ですがこの方のように、空瓶だけを返すというのは少しその決まりからも外れています」
「どうして? 別に良いじゃ無い」
平然とゲストはそんな事を言う。
「この方は、中身を別の容器に移して、クレームを言って代金を返してもらうという詐欺行為を行っていました」
「えっ? 駄目なんですか? SNSで紹介。お得な節約術って紹介されていましたよ」
「それは犯罪です。どこで見たのですか?」
「先週、この番組で…… えっと、紹介をしていましたよね」
スタジオの空気が凍る。
「でっ、では犯人が踊り出すところをどうぞ」
流れる声は、サポートセンターの物で、踊っているところは踊りだしてから、周りの人が撮影した物だった。会話が途中で止まったと思ったら、鼻息が聞こえて、それが徐々にリズムを伴ってくる。
でまあ、景気よく、堂々とした姿で踊り始める。
それを見て、パフォーマンスかと思い、幾人かが足を止める。
だがそれは、ひたすら続く。
暇なことに、誰かが警官を呼ぶところまで、撮影をされたのだろう。
途中でカットされると、次は捕縛されてパトカーに押し込まれていくところだった。
「この踊りは、何でしょうね?」
「昔流行ったアイドルの振り付けですね」
ゲストが教えてくれる。
「情報をありがとうございます」
素直に礼を言うと、話は続き始める。
「この色々な場所で発生した事件なのですが、じ・つ・は…… …… コマーシャルです」
軽快な音楽が流れて、場面が変わる。
「あなたの思いを伝える。月影印のバレーシューズ。これを履けば、あなたも精霊になれる」
バレーシューズのコマーシャルだった。
コマーシャルが切り替わる。
「此方を飲んでいただきましょう」
街頭で、いくつかの酒を飲んで貰い、どれが良かったかを聞いているようだ。
「二番です」
「ありがとうございます。此方は弊社の商品。厳選絞りたての梅酒です」
そう言って、ラベルを此方に向けて嬉しそうにカメラに笑顔を見せる。
あたった人は、嬉しそうに小瓶を抱えて車に乗ると出発をする。
「次の方は、どれでしたでしょうか?」
「この一番が良いですね」
「ありがとうございます。これは弊社の特選梅酒でございます」
ああ…… どれを選んでも弊社商品なんだね。
「あれ、そう言えば、一番目の人、酒気帯び運転だな」
ついテレビに突っ込む。
そして、コマーシャルが終わり、番組に戻る。
全員が亡くなったと、随分とじらした割にはあっさりと告げていた。
一応、警察では連続変死事件として扱うと言っていた。
だがそれはすぐに引っくり返り、病気であることが発表された。
日本中が騒然とした。
だが、それはすぐに沈静化をする。
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そう、以外と、日本は平和なのだよ。
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