静に広がった彼の願いは、世界を平和へと誘(いざな)う。

久遠 れんり

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第7話 推論

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 この病気は、アンガーキラーと名前を付けられた。

 これまでに分かったことは、同じ怒りでも、単純な怒りと他者攻撃の怒り。
 そして、大事な人に何かをされて、加害者に対する怒り。

 そう、色々とあるのだ。
 その原因も特徴も千差万別。

 それが、脳内のホルモンバランスに関係をするのだろう。
 様々な動きを見せる。

 まず、よくいる事例。
 物事が、自分の思うようにならないからといって腹を立てる、癇癪タイプ。
 小さな子などに多い。

 それをすると、踊らずにまず熱が出る。
 その状態でも、さらに続くようだと踊り始める。
 小さな子どもだと、すぐに忘れてけろっとするから、熱が出た時点で踊るのが回避される。

 さらに重傷タイプは、熱が出たところで怒りは静まらず、それすらも人のせいにしようとする。

 そして、憂さを晴らすようにまた他人を攻撃をする。
 すると発症だ……
 発症すれば止まらないし完治をしない。

 そして欲望を押しつけるために、周囲に敵意をまき散らすタイプ。
 そのタイプには理屈など無い。
 熱無しで即発症。
 踊るしか無い。

 そして、現象がおもしろいと言って、コメンテーターがひんしゅくを買ったタイプが、自分もしくは家族が攻撃された場合である。
 怒りとしてはもっとも強そうだが、その怒りにより、周囲への拡散が促進される。
 
 その感染力はすごく、周りに感染者がいた場合、さらに同調をして周囲への感染が強くなる。

 そう誰かが書き込んでいた、お天道様が見ていた状態。

 その神が創りたもうたような特性は、海外に広がったときに、その力を一気に開放を行った。

 日本はどちらかと言えば全体主義。
 個は個だが、集団に迷惑をかけない事を優先をする。

 だが海外は、かなり行きすぎた利己主義だ。
 そう勘違いをしている人が多いが、個人主義と利己主義は違う。

 個人主義は、他人の人格なども含めて、それを認めていくのが個人主義。
 利己主義は、わしさえ良ければ良いんじゃぁ。ひゃっはーな主義。
 個人の権利をまもれぇと高らかにいう人は、大体利己主義を押しつけようとしている。

 まあ、自分の主義主張が、絶対的な物だと確信を得るのは良いが、ピーマンが嫌いだから食わせるなと言うのはおかしい。
 相手は大好きかもしれないのだ。
 
 ピーマン抜きの酢豚。
 ピーマン抜きの青椒肉絲チンジャオロース
 ピーマン抜きの肉詰め。

 何かが違う。

 だが、それが当然だと彼等は言うのだ。
 まあいい。そんな人が沢山いる国は多い。
 そもそもきちんと人の事を考えて行動する人が多ければ、諍いは少なく平和になる。

 だから、海外に渡ったときに、それは起こった。
 極左主義者の絶滅。
 そして極右主義者も同じ道を辿る。

 ある集会場で、数千人が一気に踊り始めた。
 
 そして、街頭で声高に何かを言っていた人が、いきなり踊り出した。
 そんな事があり、金持ちは無菌室にこもる。

 残念なことに、その罹患率は大きく違ったのである。

 そんな状況を見ながら、研究者はワクチンを作り始める。
 だが、その心には本当に必要なのかと考え始める。

 押しつけの主義主張が無ければ、そこに諍いは起きない。
 それは、純然たる世の真理だ。

 彼は数年前に、日本へと行った。
 アジアの小国。
 どうせ、カラードの作った国、たいした物じゃ無いと思っていた。
 だがそこには、自国よりも圧倒的に長い歴史が残されていて、いまでもそれは大事にされていた。

 それを壊し、落書きをするのは、同胞達だ。

 煌びやかで先進的な都市。
 先進的な交通システム。

 どこを見ても、太平洋に浮かぶ小国だとは思えなかった。

 長い時間をかけて、自国内での戦争が終わり、その後周辺諸国からの植民地化をはねのけた国。

「そうだよな。単一民族で意見の統一ができているというのは、ある程度理想的では無いだろうか?」
 そんなことを考えて手が止まる。

「どうした?」
「やあ、アルバート」
「やあ、ガリレイ」
「どうした変な顔をして」
 彼は、クリーンベンチの前で、難しそうな顔をしているガリレイが気になったのだ。

「このウィルス。本当にワクチンは必要なのかな?」
「オイオイ、どうした」

 彼の様子に、アルバートは困惑をする。

「考えてみろよ。あれだけ悲惨だった町中が、今は静かになっている」
「それは、みんなが自宅待機をしているせいじゃないのか?」
「それもあるのかもしれないが、少し前に、ガラの悪そうなマフィアが全滅をしただろう」
「ああ、それはそうだが、まさか、このウィルスが神の試練だともいうのか?」
「いや、試練では無いだろう」
 そう言って彼は首を振る。

 だが、すぐに彼は驚きの単語を口にする。
「神による、浄化じゃ無いか?」
「はっ?」
「だからさ、協調性のない悪しき因子を排除するためにさ」
「彼等が悪魔だったと?」
「ああ。その昔、ノアに天啓を授けて、正しき者を救った」
「それと同じだと?」
「ああ、このアンガーキラーが出たのは日本だ。あそこに行ったことがあるかい?」
「ああ、ある。ラーメンが美味かったぞ」
 それを聞いて、たしかにと言う感じでガリレイも頷く。

「あそこはある程度、理想的な国なんだ」
「まあ、そうだな。ほぼ、単一民族。農耕系で、未だに武器を持たずに平和に暮らせる」
「そうだ。そんな国でこいつが始まった」
「そうだな」
「日本には八百万の神がいて、疫病すらも神だという」
 そう言って笑う。
 彼が言いたいことが分かった。

「日本の自浄作用なのか?」
「さあ、どうかな? でもありえそうだろ」
「そうだな……」
 彼等は答えは出せなかった。

 だがなぜか、ワクチン開発は妙に遅れる事になる……
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