上 下
44 / 109
第三章 国との関わり

第45話 謎の最強ハンター

しおりを挟む
「でっ、何がどうなったの?」

「はっ?」
 まどかと彩。翌朝、学校へ行くときの会話。
 当然だが、彩にとって、昨日から最も気になる話題だ。
 まどかの方はそんな事、気にもならなくなっていた。

「伶菜の力」
 むうという感じで、彩がふくれっ面になる。

 完全に聞くのを忘れていたが、感じた光を思い出す。
「モンスターを倒して、その特典みたいね」
 適当だが、その言葉は本質を捕らえていた。たまたまだが。

「倒した数は、圧倒的に私の方が多いのに」
「人間的な徳の差?」
 軽く言った言葉だが、なにげにひどい。

 だが、彩には理解できない。
「そうなんだぁ。徳ってどうやれば上がるの?」
「良いことをする? かなあ」
 これまた、適当に返す。

「そうかあ。それじゃあ。頑張ろう」
 そう納得をして、何かに闘志を燃やし始める彩。

 竜司の幼馴染みとして、絶好のヒロインポジションにいたはずが、気がつけば最下位。考えれば、不幸ともいえる。

 そんな平和な日本と違い、ヨーロッパのあるところ。
 古城の跡地。
 そこに存在をする、ひっそりとした地下室で、ある男が目を覚ます。
 ディアヌ=ベルト=アンジェリク=マリユス伯爵。俗に言われる吸血鬼である。

 いま、数百年の眠りから目覚める。

「おおう。畜生め。教会の手の者達、無茶苦茶に杭を打ちこみおって」
 棺桶の蓋をずらし、這い出してくる。

「さて、時が来て目が覚めたようだが、地上はどのようになっておるのか、楽しみだ。あの舞踏会とかは、食事には持って来いだったからなあ。ふふっはっはっは」

 そう言って這い出し、地上への階段を上る。

 地上に向けて、爪を伸ばす。
 フェンシングの剣のように鋭く伸びた爪は、石に穴を開ける。
 わずかに、隙間を空けて外をうかがう。
 流石に、日の光をもろに喰らうとダメージが大きい。

「うん? 大丈夫そうだな。外へ出た瞬間、焼け狂うのは避けたい」

 そうして、数百キロはありそうな、石のブロックを押し上げる。
「よっ」
 外へ出て吸う空気は、お世辞にも美味くかなかった。
 それに、何処までも続いていた森は姿を消し、周辺にわずかに残るだけ。

「なんだこれは?」

 そして町を見れば、嫌な周波数を含む光が広がっている。
「焼けるほどではないが、なんだこれは? 私は一体どのくらい眠っていたと言うんだ?」

 煌々と輝く明かり、嫌な空気。
 そして、周りから近付く変な気配。

 そうゴブリン達が、やって来た。

「なんだおまえら、いにしえに居たが復活をしたのか?」
 そう、昔実験的に散布をされ、世界中で各種のモンスターが生まれた。
 吸血鬼は、それの生き残り。

 明るくなった世界と、古代の生物。
 伯爵は、困惑をするばかり。

 とりあえず倒してみる。
 その騒動に、ウルフたちも参加。
 そして、オークまで。

 前菜から、メインまで倒して、伯爵はぶっ倒れる。
 そう、その時代には撒かれなかった薬剤。

 命を吸収して、進化をする。

 その洗礼を受ける。

 伯爵は目を覚ました。
 日はすっかりと昇り、時間は正午くらいだろう。
 いつ以来か、伯爵は日の当たる世界を見る。
 うん?

 一瞬焦るが、身体に異常はない。
 偽装外殻である服も、異常はないようだ。

 周りでは、またもやモンスター達がたむろしているが、無意識に張ったシールドが守っている。

「ほう。これは便利だ」
 何か力を得たらしい。

 腕を横に一閃すると、周りに居たモンスター達が半分になり倒れていく。
 そこには鋭く伸びた爪。
 意識をすると、元の長さに戻る。

 従来の、力はそのまま。

 人間離れした力と速度。
 日の光も問題ない。
 喉の渇きまでなくなっている。
 さっきモンスターを狩ることで、少し潤された気もするが、良いだろう。

 そうして町中へと歩き始める。

 そうして、決まり事のように、大体イベントに遭遇をする。
 襲われている女の子を見つけて、助けに入る。
「大丈夫かい?」
 そう言って、伯爵から逃げようとして躓き、転がりそうになった彼女を、左手で彼女を支える。奇妙な服を着ているし、多少痩せ過ぎだがいいだろう。

「あっ。ありがとうございます。――ですが、離してもらえます?」
 そう言うと、彼女は、礼は言ったぜ、みたいな感じで離れていった。

 伯爵の格好は、襟やそでにジャボと呼ばれるフリルの付いた格好。
 そして、セミロングに伸びた髪の毛で、小太り。それと、匂い。

 よく見れば、道行く人も自分を避けていく。

 すぐにパトカーが駆けつけて、逮捕される。

「名前は?」
「ディアヌ=ベルト=アンジェリク=マリユス伯爵」
「伯爵だぁ?」
「領地は、アキテーヌ公領の一部に荘園を持っていた」
「歴史で習ったな。一四世紀だったか?」
「貴族相互支援協会に聞いてみるか?」
「やめとけ。くせえし。こんなおかしな奴紹介しても、仕方が無い。ホームレスの支援団体に放り込め」
 そうして適当な処置で、ホームレスの救済会へ放り込まれた。

 だがそこで、能力があることが解り、ハンターとして登録される。
 名前は長すぎると言って、名前は、ディアヌ=マリユスとされた。

 当然だが、すぐに頭角を現す。
 なんせ、死に対して、恐怖心が無い。
 変異した後も、不死かどうかは解っていないのに。

 陽光の下で、はっちゃける。

 日本では、彩が徳を積むためにはっちゃけ。
 まどかは、先の先を読む動きと、細かにコントロールできるようになった、モンスターを操り無双する。

 そして。
「竜司。ここじゃ、ゆっくりできないから」
 そう言って、マイリに宇宙船へ連れ込まれ、賢者からの指令を受け取る。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

秘密~箱庭で濡れる~改訂版

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:132

ヒト・カタ・ヒト・ヒラ

SF / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:21

フェロ紋なんてクソくらえ

BL / 完結 24h.ポイント:660pt お気に入り:389

公爵様と行き遅れ~婚期を逃した令嬢が幸せになるまで~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,116pt お気に入り:26

【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

BL / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:268

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,845pt お気に入り:1,659

処理中です...