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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ
第82話 幼馴染みの努力
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「後、一ッセンチィ」
気合いを入れて頑張っているのは、彩。幼馴染みとして収集したデータに基づき対策を練る。
「竜司は昔から先生とか他のお母さんとか、大きな胸を目で追っていた。だから間違いは無いはず」
牛乳を飲み、バストアップ体操を日課としてこなす。
そう、危機感から、彩は本気になっていた。
幸せの頂点から、ドンドン立場は下がり、気がつけば後発の悠月にまで負けている。
奴は小柄な体、いや今は少し大きくなったが、それを生かしてまるでねこのようにじゃれついている。
周囲へのアピールがひどい。許せない。
チェストプレスが軋む。
片側百二十キログラム。
大胸筋は引き締まり、鋼のごとく鍛え上がる。
「ふうっ。気のせいか、減っている気がする」
そう言って、自身の胸をもぎゅもぎゅと揉んでみる。
「自分じゃ、わかんないな」
ぼやきながら、バタフライマシンへ移動。
ガッシュガッシュと始めるが、これも荷重は百キロを超えている。
身体改造とレベルアップにより、すでに全員が人間をやめている。
先日、かぐや達が来たときには、セットされた数値を見て腰を抜かした。
バタフライマシンを、かぐやたちは十キログラムで十回、三セットくらいをやっていた。
それがいきなり、非現実な重量がセットされ、びくともしなかった。
「これはきっと、竜司様ね」
とか言っていたが、来たのは彩。
鬼気迫る表情で、淡々とトレーニングをこなす。
一年生の時から見知っていた、彩と同じ人とは思えない。
彼女はもっといい加減で、ずぼらだったはず。
適当で、竜司様に迷惑をおかけして、その事についても、ごめんすら言わないことが多かった。
そう、昔からの幼馴染みという一点に、あぐらをかいていた。
まだあまり興味が無く、竜司様と婚約を発表をしたのも、あまりかぐやたちは気にしなかったが、あれは、合法的に彼へ寄生をするためだったのかもしれない。
だけど、色々な経験の中で、彩は努力をしている。
その方向は間違っているが、それは彼女が彼女であるため仕方ない。
竜司は、胸を追っていたのではないし、そもそも筋トレをして脂肪を燃焼すれば、いや、皆まで言うまい。
男は基本優しさを求める。
そう、その成功例である伶菜がいるのに、意地を張ってみていない。
まどかは、一歩引いて食欲に走ったようだが、隙間を埋め、滑り込んだのが悠月。
妹ポジションというのだろうか、妙な真面目さと二人でいるときの甘えた態度。
ギャップ萌え。
悠月は意外と恐ろしい子だった。
まいりは、副官ポジションだから、立ち位置は決まっている。
そう、中途半端な遠慮を、彩が覚えたために、自分自身で距離を取ってしまった。
竜司にしてみれば、最近来ないなと思うだけ。
騒動が起こるまでは、気がつけばずっとそばに居た。
部屋から蹴り出しても、いつの間にか湧いてくる。そんな存在だった。
「あー、また誰かのことを考えているでしょう?」
実は、伶菜は知っている。
何かの折に、竜司が無意識に彩を探していることを。
雑に扱うし放置もする、でも、なのだ。
「うらやましい」
伶菜が、焼き餅を焼く存在、彩。
マイリは、興味が無いようだが。
「さて、また要請が来ている。橋本さん日本からは特殊な移動方法で行くからと連絡をしてくれない?」
ヨーロッパまでだと、片道十一時間前後のフライト時間。
流石にみんな、うんざりした。
「ほら、俺達、学校もあるし」
「学校からは、成績さえ落ちなければ、出席日数は公欠と補修で補ってくれるそうだ。以外とギルドは力があるらしい」
橋本さんが、ペラペラと何かの書類を確認しながら説明してくれる。
「いえ、途中の手続きも面倒だし、ソーセージやピクルスを全部取られたのよ」
まどかさん憤慨。
お土産として買った物を、没収されたようだ。
今度からはすべて、宇宙船に預けるとぼやいていた。
「だけど、入国の実績無しというわけにもいかんだろう」
橋本さんは、腕を組み唸り始める。
国の関係者として、脱法は容認できないらしい。
たとえ俺達が持ち込んだ、ソーセージやワインを、うまいと言って喜んだとしても。
「その辺りを、ギルドと話をしてみようかな? まどか一緒に行くか」
この時点で、何かをする気満々だが。
「そうね。お話をしてきましょう」
その時、まどかの気迫は素晴らしい物だった。
ギルド、日本事務所、中央本部。
ここも、他のギルドと同じく、お役所に間借りしている。
必要書類の発行が必要だし、その方が便利だから。
つまり中央本部は、都庁に間借り中。
いつもの担当ギルドでは判断が付かないと言われたので、担当者を連れて、実証がてら飛んできた。
もう竜司としては、隠す気ゼロである。
「個人トップチームからの依頼とあっては、会わないわけにはいかないだろう」
そう言って偉そうに出てきたのは、どこかのやり手ビジネスマンという感じのおっさん。
日本本部長。ファビオ=メラーティ。イタリア系の人らしい。
まどかの目が光る。
「はい。まどか様のおっしゃる通り、入国審査員を当日ギルドに手配しておきます」
「よろしくね」
何か障壁を張っていたようだが、まどかには効かなかった。
「派遣されるのは良いけれど、道中の手続きとか面倒なの。何とかならない?」
「空港で別ゲートを」
「却下」
「どうやって入国を?」
「秘密」
「入国の位置を指定することは?」
「できるわ」
「では最初、ギルドへ来ていただいて、そこで審査を行います」
結局、救助申請を出したのはそちらだと、ごり押しで認めさせたらしい。
入国方法が転移であるため、存在自体を他の人間に知られたらまずいだろうと説得。さらにドラゴンズアイは重要な立場になっていく。
危険なチームとして。
気合いを入れて頑張っているのは、彩。幼馴染みとして収集したデータに基づき対策を練る。
「竜司は昔から先生とか他のお母さんとか、大きな胸を目で追っていた。だから間違いは無いはず」
牛乳を飲み、バストアップ体操を日課としてこなす。
そう、危機感から、彩は本気になっていた。
幸せの頂点から、ドンドン立場は下がり、気がつけば後発の悠月にまで負けている。
奴は小柄な体、いや今は少し大きくなったが、それを生かしてまるでねこのようにじゃれついている。
周囲へのアピールがひどい。許せない。
チェストプレスが軋む。
片側百二十キログラム。
大胸筋は引き締まり、鋼のごとく鍛え上がる。
「ふうっ。気のせいか、減っている気がする」
そう言って、自身の胸をもぎゅもぎゅと揉んでみる。
「自分じゃ、わかんないな」
ぼやきながら、バタフライマシンへ移動。
ガッシュガッシュと始めるが、これも荷重は百キロを超えている。
身体改造とレベルアップにより、すでに全員が人間をやめている。
先日、かぐや達が来たときには、セットされた数値を見て腰を抜かした。
バタフライマシンを、かぐやたちは十キログラムで十回、三セットくらいをやっていた。
それがいきなり、非現実な重量がセットされ、びくともしなかった。
「これはきっと、竜司様ね」
とか言っていたが、来たのは彩。
鬼気迫る表情で、淡々とトレーニングをこなす。
一年生の時から見知っていた、彩と同じ人とは思えない。
彼女はもっといい加減で、ずぼらだったはず。
適当で、竜司様に迷惑をおかけして、その事についても、ごめんすら言わないことが多かった。
そう、昔からの幼馴染みという一点に、あぐらをかいていた。
まだあまり興味が無く、竜司様と婚約を発表をしたのも、あまりかぐやたちは気にしなかったが、あれは、合法的に彼へ寄生をするためだったのかもしれない。
だけど、色々な経験の中で、彩は努力をしている。
その方向は間違っているが、それは彼女が彼女であるため仕方ない。
竜司は、胸を追っていたのではないし、そもそも筋トレをして脂肪を燃焼すれば、いや、皆まで言うまい。
男は基本優しさを求める。
そう、その成功例である伶菜がいるのに、意地を張ってみていない。
まどかは、一歩引いて食欲に走ったようだが、隙間を埋め、滑り込んだのが悠月。
妹ポジションというのだろうか、妙な真面目さと二人でいるときの甘えた態度。
ギャップ萌え。
悠月は意外と恐ろしい子だった。
まいりは、副官ポジションだから、立ち位置は決まっている。
そう、中途半端な遠慮を、彩が覚えたために、自分自身で距離を取ってしまった。
竜司にしてみれば、最近来ないなと思うだけ。
騒動が起こるまでは、気がつけばずっとそばに居た。
部屋から蹴り出しても、いつの間にか湧いてくる。そんな存在だった。
「あー、また誰かのことを考えているでしょう?」
実は、伶菜は知っている。
何かの折に、竜司が無意識に彩を探していることを。
雑に扱うし放置もする、でも、なのだ。
「うらやましい」
伶菜が、焼き餅を焼く存在、彩。
マイリは、興味が無いようだが。
「さて、また要請が来ている。橋本さん日本からは特殊な移動方法で行くからと連絡をしてくれない?」
ヨーロッパまでだと、片道十一時間前後のフライト時間。
流石にみんな、うんざりした。
「ほら、俺達、学校もあるし」
「学校からは、成績さえ落ちなければ、出席日数は公欠と補修で補ってくれるそうだ。以外とギルドは力があるらしい」
橋本さんが、ペラペラと何かの書類を確認しながら説明してくれる。
「いえ、途中の手続きも面倒だし、ソーセージやピクルスを全部取られたのよ」
まどかさん憤慨。
お土産として買った物を、没収されたようだ。
今度からはすべて、宇宙船に預けるとぼやいていた。
「だけど、入国の実績無しというわけにもいかんだろう」
橋本さんは、腕を組み唸り始める。
国の関係者として、脱法は容認できないらしい。
たとえ俺達が持ち込んだ、ソーセージやワインを、うまいと言って喜んだとしても。
「その辺りを、ギルドと話をしてみようかな? まどか一緒に行くか」
この時点で、何かをする気満々だが。
「そうね。お話をしてきましょう」
その時、まどかの気迫は素晴らしい物だった。
ギルド、日本事務所、中央本部。
ここも、他のギルドと同じく、お役所に間借りしている。
必要書類の発行が必要だし、その方が便利だから。
つまり中央本部は、都庁に間借り中。
いつもの担当ギルドでは判断が付かないと言われたので、担当者を連れて、実証がてら飛んできた。
もう竜司としては、隠す気ゼロである。
「個人トップチームからの依頼とあっては、会わないわけにはいかないだろう」
そう言って偉そうに出てきたのは、どこかのやり手ビジネスマンという感じのおっさん。
日本本部長。ファビオ=メラーティ。イタリア系の人らしい。
まどかの目が光る。
「はい。まどか様のおっしゃる通り、入国審査員を当日ギルドに手配しておきます」
「よろしくね」
何か障壁を張っていたようだが、まどかには効かなかった。
「派遣されるのは良いけれど、道中の手続きとか面倒なの。何とかならない?」
「空港で別ゲートを」
「却下」
「どうやって入国を?」
「秘密」
「入国の位置を指定することは?」
「できるわ」
「では最初、ギルドへ来ていただいて、そこで審査を行います」
結局、救助申請を出したのはそちらだと、ごり押しで認めさせたらしい。
入国方法が転移であるため、存在自体を他の人間に知られたらまずいだろうと説得。さらにドラゴンズアイは重要な立場になっていく。
危険なチームとして。
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