地球に奇跡を。-地球で魔法のある生活が、始まりました-

久遠 れんり

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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第93話 魔王は語る。奴らは悪魔だ

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「もういい。行け」
 切れたハンターは、構造壁でも穴を開ける。

 そこに躊躇は無かった。
 動く物は殲滅せよ。

 どちらがモンスターか判らなかった。
 きっと一般の目撃者がいたなら、そう言っただろう。

 その中に対峙するグループ。
 モンスターを引き連れたまどか。

 さっき現れた四天王も、名乗りを上げる暇もなく隷属させられた。
「魔王。魔王を倒す」
 ぶつぶつと繰り返す、そいつに案内され竜司達は進んでいく。

 チームの後ろにモンスター。
 その後ろに、他のチーム。

 恐怖の連中がやって来る。

「何だこの集団は?」
 魔王は、おかしな集団に気が付く。

 命令から離れ、ハンターどもを引き連れやって来る。
「おい警戒しろ。なにかおかしい」
 手下のモンスターが、王の間から廊下へと踊り出す。
 その瞬間に、笑顔のまどかと目が合う。

「従いなさい」
 その声は、ひどく甘美な物だった。
 モンスターは体の一部分をそそり立たせ、今でて来た部屋へ戻っていく。

「うがあぁ」
「うん? どうした?」
 そんな声など、聞こえないとでも言うように、彼らは突っ込んでくる。
 魔王は横に手を薙ぐ。

 それだけで、モンスター達は、両断されて転がる。
「あの一瞬で? 出てこい」
 魔王は廊下に向かい声をかける。

 だが、やって来たのは四天王ジグル。

 俊足で近づき、魔王に向けて拳を振るう。
 その拳には、黒い霧状の魔力がまとわりついている。
 そこに躊躇は無い。

「おおう。ジグルお前もか?」
 まるで、カエサルのような台詞を吐くと、切り刻む。

 廊下を見る。
 だが、ハンターではなく。モンスター達が突っ込んでくる。
「うぬ」
 黒い炎が、モンスター達を燃やしていく。
 その炎は、まるで彩が使うような特性で、モンスターのみを燃やす。

「卑怯者達め。隠れていないで出てこい」

 そう問いかけると、やっと出てきた。
 そいつらが足を踏み入れた瞬間に、部屋の中が明るくなったかと思われるほどのエネルギー量。

「お前達なんだ? 本当に人間か?」
 体が恐怖を感じ、勝手に後ずさる。

 魔王は怖かった。

 人間がモンスターを見て怖がるように、魔王は恐怖した。

 そいつらは躊躇することなく、距離を詰めてくる。

 意識を切り替え、前に出る魔王。
 だがシールドを越え、光が体を蝕んでいく。
「ぬお。これは?」

 そして聞こえる精神波動。
「さあ従いなさい。私のかわいい者達よ」
 それはひどく甘美な物だった。
 あがなうのは辛く、精神にプレッシャがーくる。
 従った方が楽。
 なにも考えず。

 まるで、ブラックな企業で、ただ命令に従い。機械的に動くのが楽であるかのように。その声は誘ってくる。
「何も考えないで。あなたは従えば良いの……」

 まるで、悪魔の囁き。
 心弱き物は、盲目的に従うだろう。

「ええい。何だこいつら?」
 微笑み。楽しそうにくる集団。
 だが周囲には凶悪な光を纏い、その光はモンスター達を焼いていく。
 それは、従っている者まで。

 だが焼かれながら、モンスター達は喜びを感じているようだ。
 そう。ご褒美。
 
「くそう」
 空間ごと切るかのような攻撃を放つ。
 だがそれは、見えない壁に阻まれる。
 仕方なく、ニードル状にエネルギーを収束して撃ち始める。

 だが、そんな物も、何それ状態ではじき返す。
 そう竜司達を含めて、ハンター達は強くなった。

 実は彩やまどかでも、充分この魔王を倒せるところまで来た。
 一気にステップアップ。

 言っては悪いが、本当にボーナスステージであった。
 街の人たちが犠牲になり、その上に作られたものではあったが、一薙 ひとなぎ であふれかえるほどのエネルギーが流れ込んできた。
 そのおかげで、ハンター達は酔いしれ殲滅を敢行した。

 モンスターにとっては、恐怖以外の何者でもない。


 ずっと聞こえる精神攻撃。
 身を焼く光。
 こちらの攻撃は通らず、ただ一方的に攻撃される。

 その攻撃に、ついに魔王は諦めた。
 身を守るシールドを解除する。

 少し前に、町中にいた手下。
 モンスター達が消えたのは感じた。

 人としての意識が戻ったがゆえに、魔王は心が折れた。
 その集団。
 悪魔のような攻撃に。

 まどかの声が、精神にしみ込んでくる。
 その中で喜びながら、魔王は消滅をさせられた。

 最近の事件では、尤も悪辣な事をした魔王だが、おのれ自身は快楽の中で消滅をした。

 この町は、復活するのに長い年月が掛かる。
 住民は魔王のせいで随分減り、モンスターの繁殖に使われたことは、地元のハンターによって周囲に広がった。

 これにより、この町の人間と言うだけで差別が起こる。

 だが、その噂は、別の話で上書きされる。

 神の使徒。
 奇跡の町。
 そんな話が流れ始め、各宗派の者達が、浄化だ救済だと町へ入り込み、自身の無力さを悔い改め出てくる。

 各教会により、神の使徒。奇跡の町。その噂が肯定された。

 山間の奇跡の町。
 そこには、すぐに奇跡を求め人々がやって来始める。
 そして、あるスポーツマンが引退するような怪我をして、諦めきれず。噂にすがった。
 数時間後、奇跡を受け体が治った。
 それどころか、鍛えすぎて壊れ掛かっていた関節の痛みすら全快をした。

 その話は拡散され、さらに町へ人が集まり。急速に復旧をしていく。

 そして、その周囲から、モンスターも消える。

 夜。翼を生やした天使が巡回をしているらしい。
「わが主のために」
 そう言いながら。
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