57 / 68
第2章 新たな社会の始まり
第57話 世界の片隅で起こった、ちょっとした騒動 その2
しおりを挟む
「なんとか、逃げ切ったかしら?」
「しかしまあ、用意周到に用意していたんだな」
「向こうは、政府機関だしね。できることはしておかないと」
「こっちは何なんだ?」
そう聞くと、ちょっとキャシーの眉間にしわが寄ったが、
「こっちは、宗教関係ね。規模では勝っているわ」
そう言って、笑う。
「そうだな、地獄の門が開いたなどと言う話が、まことしやかに言われているから教会もあせっているのか?」
「ちょっと、宗教関係とは言ったけど、教会とは言ってないわよ。気を付けてね」
口の前に、指を立てキャシーが焦る表情を見せる。
そう、今いるのはホテルの一室だが、準備されていたもの。と言うことは盗聴器その他、準備万端なのだろう。
「今あなたは、地獄の力を取り込んだ、人類の敵となっている。こちら側ではね」
「あーまあ。そうなるか」
「いえ。冗談ではなく。日本からもたらされた情報があるの。あの球は呪いがかかっていて、取り込んだ人は己の欲望を爆発させて…… 鬼と呼ばれるモンスターになる。そんな情報があるの」
そう言って、顔を曇らせる。
「でも。こちらの情報で、日本ではそうなった者も浄化? できる一族が居るみたいなの。だからあなたは欲望にあらがって、今の状態を保って。きっと治してあげる」
「じゃあ禁欲か?」
「うー、変化に対するトリガーが分かっていないから、でも普通の生活なら大丈夫かしら?」
「普通の生活ね」
「そう普通の生活」
そう言って、顔を寄せてくる。
「エージェント脱出してきました」
『そうか、実験体は?』
「1匹確保したようです」
『しっかりモニターして、変化を見ろ』
「承知しました」
男は薄暗い部屋で、モニターを眺めながらピザをぱくつきコーラをあおる。
「下手なポルノより刺激的だな。上司命令だ。のぞかせてもらおう」
「ええい。どこへ逃げた。仕方ない連絡を上げる」
担当者は、自分の首が物理的にまずいことを理解しながら電話をする。
「サー。申し訳ありません。実験体を逃がしました」
『いつだ?』
「半日前です。対象が穴倉に入っていたため、確認ができず連絡が遅れました。申し訳ありません」
『そうか。まあいい、こっちで何とかする。君は取り込める条件を早く見極めろ』
「はい。承知しました。では失礼いたします」
電話を切り、額の汗をぬぐう。
「いったいどうやって、何処から出たのかを調べろ。同じことが無いよう対処しろ」
ざわつく気持ちを抑えて、対応を行う。
ここでまた、同じことがあれば許されないだろう。
一週間後、ハロルドの会社から金を奪って逃げていた男が、飲みに行った先から忽然と姿を消す。
この男、持っていた金でちゃっかり小さな会社を興して、社長に収まっていた。
体を拘束され、目隠しもされている。
身動きができない状態だが、其処へ声が聞こえてくる。
「ジョンソン。久しぶりだな」
「なっ。その声ハロルドか?」
ガタガタと椅子を揺らしてあがくが、拘束はとけない。
「社長さんに収まって、楽しそうだな。俺が地獄であがいている間に」
そう言った、ハロルドの口から犬歯が伸び始める。
「だめ、ハロルド気持ちを抑えて」
変化を見たキャシーが叫ぶ。
「うん? ああすまない。こいつの事をぶち殺して食いたくなっちまった。やばかったか?」
「牙が出ているわよ」
「うん?」
口元を触って、自身で驚く。
「これが、君の言っていた変化か? これ戻らないのか?」
「まだ何も分かっていないの」
そう言って、首を軽く振る。
「俺はこいつを見ていると、イラつきとか衝動が収まらん。処分してくれ。それだけでいい。今は君との時間の方が重要だ」
そう言われて、ハロルドに抱き着くキャシー。
「任せて、湖にいる魚の餌にしておくから」
そう言って、うれしそうな顔でキャシーは説明する。
そんな、ほのぼのとした怖い会話を聞き、ジョンソン君は暴れる。
泣き叫び暴れるが、拘束された体は制限されて思うように動かせない。
やがて、ハロルドが無造作に出した、こぶしを受け気を失う。
「ねえ、変化が色々な所に出ているわね」
ハロルドの手をなでる。
爪は鋭く伸びて、ネイルクリッパーと呼ばれる爪切りでは切れず、普通のカッティングプライヤーズ(電線をカットする日本語ではニッパー)を持ってきたが刃の方が潰れてしまった。
すでに、3週間。
「何とか話をつけて、日本へ行きましょう。このままではあなた、モンスターになっちゃう」
これはアメリカでの話だが、世界中の研究機関で同じような実験がされ、鬼となった軍人や傭兵。被験者が暴れはじめる。
そんな、悲劇が表に出始めるまで時間はかからなかった。
彼らは、強く既存の武器や薬など意に介さず暴れまくる。
アンデッドに、鬼。
世界は、自らの手で終末へと向かい始める。
教会をはじめ複数の宗教関係が、声高に終末を語り始める。
「これは神が人類に与えた試練である。手を取り合い、困難を乗り越えよう」
ある国は、宇宙コロニー計画を一気に加速させ、ある国は探査船を全方位へ飛ばし始め、混とんとなっていく。
その頃、日本では
「変化の時に、横でお茶会は、ハラスメントではないでしょうか?」
「だって、見てないと何かあったときに対応できないし。横に居ても退屈じゃないか。君だって変化の時に、横でじっくり見られたいのか?」
「きっと、奈央ちゃんは見られたいMか、お茶請けにようかんがなかったのが、気に入らなかったんだと思います」
さくら3曹がきっぱりと言いきる。
「じゃあ日本茶とようかんも用意しよう。それでいいな」
「ありがとうございます。いや、ちがうしぃ」
「君たちは、今回であの状態になるのは終わりだし、次からは男性の隊員だからな」
「あれ、毎回じゃないんですか?」
「違うよ。最初だけ」
「じゃあいいです。そうか、男の苦しむ姿」
そう言って、ひらめいたみたいな顔をする。
「連れて行かないよ」
「ええっ」
「それこそハラスメントだろ」
そう言うと、愕然とした表情をする市川奈央3曹。
「みたいぃ。隊長ぉ」
そう言ってくねくねしてくるが、「だめ」と一言言って話を終わらせる。
「しかしまあ、用意周到に用意していたんだな」
「向こうは、政府機関だしね。できることはしておかないと」
「こっちは何なんだ?」
そう聞くと、ちょっとキャシーの眉間にしわが寄ったが、
「こっちは、宗教関係ね。規模では勝っているわ」
そう言って、笑う。
「そうだな、地獄の門が開いたなどと言う話が、まことしやかに言われているから教会もあせっているのか?」
「ちょっと、宗教関係とは言ったけど、教会とは言ってないわよ。気を付けてね」
口の前に、指を立てキャシーが焦る表情を見せる。
そう、今いるのはホテルの一室だが、準備されていたもの。と言うことは盗聴器その他、準備万端なのだろう。
「今あなたは、地獄の力を取り込んだ、人類の敵となっている。こちら側ではね」
「あーまあ。そうなるか」
「いえ。冗談ではなく。日本からもたらされた情報があるの。あの球は呪いがかかっていて、取り込んだ人は己の欲望を爆発させて…… 鬼と呼ばれるモンスターになる。そんな情報があるの」
そう言って、顔を曇らせる。
「でも。こちらの情報で、日本ではそうなった者も浄化? できる一族が居るみたいなの。だからあなたは欲望にあらがって、今の状態を保って。きっと治してあげる」
「じゃあ禁欲か?」
「うー、変化に対するトリガーが分かっていないから、でも普通の生活なら大丈夫かしら?」
「普通の生活ね」
「そう普通の生活」
そう言って、顔を寄せてくる。
「エージェント脱出してきました」
『そうか、実験体は?』
「1匹確保したようです」
『しっかりモニターして、変化を見ろ』
「承知しました」
男は薄暗い部屋で、モニターを眺めながらピザをぱくつきコーラをあおる。
「下手なポルノより刺激的だな。上司命令だ。のぞかせてもらおう」
「ええい。どこへ逃げた。仕方ない連絡を上げる」
担当者は、自分の首が物理的にまずいことを理解しながら電話をする。
「サー。申し訳ありません。実験体を逃がしました」
『いつだ?』
「半日前です。対象が穴倉に入っていたため、確認ができず連絡が遅れました。申し訳ありません」
『そうか。まあいい、こっちで何とかする。君は取り込める条件を早く見極めろ』
「はい。承知しました。では失礼いたします」
電話を切り、額の汗をぬぐう。
「いったいどうやって、何処から出たのかを調べろ。同じことが無いよう対処しろ」
ざわつく気持ちを抑えて、対応を行う。
ここでまた、同じことがあれば許されないだろう。
一週間後、ハロルドの会社から金を奪って逃げていた男が、飲みに行った先から忽然と姿を消す。
この男、持っていた金でちゃっかり小さな会社を興して、社長に収まっていた。
体を拘束され、目隠しもされている。
身動きができない状態だが、其処へ声が聞こえてくる。
「ジョンソン。久しぶりだな」
「なっ。その声ハロルドか?」
ガタガタと椅子を揺らしてあがくが、拘束はとけない。
「社長さんに収まって、楽しそうだな。俺が地獄であがいている間に」
そう言った、ハロルドの口から犬歯が伸び始める。
「だめ、ハロルド気持ちを抑えて」
変化を見たキャシーが叫ぶ。
「うん? ああすまない。こいつの事をぶち殺して食いたくなっちまった。やばかったか?」
「牙が出ているわよ」
「うん?」
口元を触って、自身で驚く。
「これが、君の言っていた変化か? これ戻らないのか?」
「まだ何も分かっていないの」
そう言って、首を軽く振る。
「俺はこいつを見ていると、イラつきとか衝動が収まらん。処分してくれ。それだけでいい。今は君との時間の方が重要だ」
そう言われて、ハロルドに抱き着くキャシー。
「任せて、湖にいる魚の餌にしておくから」
そう言って、うれしそうな顔でキャシーは説明する。
そんな、ほのぼのとした怖い会話を聞き、ジョンソン君は暴れる。
泣き叫び暴れるが、拘束された体は制限されて思うように動かせない。
やがて、ハロルドが無造作に出した、こぶしを受け気を失う。
「ねえ、変化が色々な所に出ているわね」
ハロルドの手をなでる。
爪は鋭く伸びて、ネイルクリッパーと呼ばれる爪切りでは切れず、普通のカッティングプライヤーズ(電線をカットする日本語ではニッパー)を持ってきたが刃の方が潰れてしまった。
すでに、3週間。
「何とか話をつけて、日本へ行きましょう。このままではあなた、モンスターになっちゃう」
これはアメリカでの話だが、世界中の研究機関で同じような実験がされ、鬼となった軍人や傭兵。被験者が暴れはじめる。
そんな、悲劇が表に出始めるまで時間はかからなかった。
彼らは、強く既存の武器や薬など意に介さず暴れまくる。
アンデッドに、鬼。
世界は、自らの手で終末へと向かい始める。
教会をはじめ複数の宗教関係が、声高に終末を語り始める。
「これは神が人類に与えた試練である。手を取り合い、困難を乗り越えよう」
ある国は、宇宙コロニー計画を一気に加速させ、ある国は探査船を全方位へ飛ばし始め、混とんとなっていく。
その頃、日本では
「変化の時に、横でお茶会は、ハラスメントではないでしょうか?」
「だって、見てないと何かあったときに対応できないし。横に居ても退屈じゃないか。君だって変化の時に、横でじっくり見られたいのか?」
「きっと、奈央ちゃんは見られたいMか、お茶請けにようかんがなかったのが、気に入らなかったんだと思います」
さくら3曹がきっぱりと言いきる。
「じゃあ日本茶とようかんも用意しよう。それでいいな」
「ありがとうございます。いや、ちがうしぃ」
「君たちは、今回であの状態になるのは終わりだし、次からは男性の隊員だからな」
「あれ、毎回じゃないんですか?」
「違うよ。最初だけ」
「じゃあいいです。そうか、男の苦しむ姿」
そう言って、ひらめいたみたいな顔をする。
「連れて行かないよ」
「ええっ」
「それこそハラスメントだろ」
そう言うと、愕然とした表情をする市川奈央3曹。
「みたいぃ。隊長ぉ」
そう言ってくねくねしてくるが、「だめ」と一言言って話を終わらせる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
19
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる