ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

文字の大きさ
5 / 156
繰り返された戦い。

第5話 責任

しおりを挟む
 それは学校へ掛かって来た、一本の電話。
 だがすでに、校内には誰も居ない。

「繋がらない。これはもう、警察だな。行くぞ」
「うん」
 自宅のリビングで、真剣な顔をしているのは、司の両親。

 父親である新世 護あらせ まもる 四十三歳。
 二十七歳で結婚、三年目に司ができた。
 母親は、新世 綾あらせ あや。四十一歳。
 そして、妹。 
 新世 千尋あらせ ちひろ 十一歳。最近は偉そうだが、実はお兄ちゃんが大好きである。
 
 彼等は、近くの交番に行くが、巡回中で誰もおらず。
 いつものことだが、仕方が無い。

 車に乗り所轄の警察署へ向かう。
「子どもさん。中学一年生ですか? 友人のお家とか行っていませんか?」
「まだこの町に引っ越して来たばかりで、息子に友人など居ません」
 護は断言してしまう。

「友人が居ない?」
 担当者の、それを聞いた瞬間に浮かべた顔。わずかな嘲笑にむかつく。

「仕方が無いだろう。それでだ。これが息子の自転車。ええと防犯登録のナンバーです」

 写真なども渡して、行方不明者届を出す。


 そして捜査が始まる頃、震えながら、コミュニケーションアプリで連絡を取りあう連中がいた。

 そう、司を押したクラスメイト達。
 現場にいたのは男三人。中村 正樹なかむら まさき は悪ガキで威圧的。某ジャイアンタイプ。そして、小林 駿こばやし しゅん 。こいつも態度が悪い。 意外と見栄っ張りで、その上お調子者。中村に言われて、司を押したのはこいつ。
 もう一人、五島 尚史ごとう ひさし。彼は、多少頭が良く、便利だから彼等にくっ付いている。目立たないが、ちょこちょこ悪さをするタイプ。
 そして、女子二人。
 神谷 香織かみや かおり。彼女は比較的おとなしめ。
 だが、山野 まりこやまの まりこは気が強くて少し攻撃的であり、こいつが中村と仲が良いために、一緒にいる。

「だから、戻ったときには川にいなかっただろ」
「でもあそこ、噂じゃ底なし沼みたいになっているって聞いたぞ」
 帰り道から散々話し合った内容。

 おもしろがって押したら、自転車にまたがった司は、ガードレールを越えて落ちてしまった。無論、原因は腕立て百回の恨みだ。

「ははっ、ざまあ」
 最初は川なので、落ちても大丈夫だろうと軽く考えていた。
 だが、一度逃げてから、気になって戻って来たのだが、濡れたあいつが上がってきている様子が無い。

 彼等は、川を覗き込む。
 あまり綺麗ではない川。
 だが両側の護岸まで、川幅いっぱいに水が流れている。
 川底が見えているところは無い。

「意外と浅いのか?」
 周りを探して、落ちていたブロックの欠片を拾い、川へ落としてみる。

 ドボンと言う音。そこそこの深さはありそうだ。
 川下に視線を移すが、人が流れている様子もない。

「溺れて流れたとか……」
 誰かが口にする…… そして彼等は、逃げ始める。
「おれ、知ーらね」
「おれも」
「ちょっと待ってよ」
 五島だけが、最後まで川を眺めていたが、結局放置をして逃げ帰った。
 やってしまった事への、罪の重さ。
 それは、発覚すればまずいことを、彼だけは感じていた。


 そして、その一連のことを見ていた女の子が一人。
 司と同じく、この春に余所から来て、学校に入学をした篠原 麻衣しのはら まい 。
 どちらかと言えば引っ込み思案だが、普通に良い子。司と違い、すでに友達がいる。ただまあ、同じ境遇だと知り、司のことが気にはなっていた。
 今日の体育で騒動があった後、彼の元気がなかったことと、クラスメイトからの仕打ちを見ていた。
 何も行動せずに、何も言わずだが……

「あれは、先生の勘違いなのにひどいよね」
「だけど、彼があんな変な感じで聞かなきゃ、先生だって怒らなかったのに」
「あれは…… 多分方言なのよ」
 そう彼女も気を付けないと、方言が出る。
 ただ、転勤になれていて、なるべく標準語を使い、慣れればその土地の方言を使うことにしている。
 いつまでも標準語だと、それはそれで周りは壁があるように感じるらしい。

 それでまあ帰り道。川の土手沿いを帰っていて、ふと見ると、彼が橋の上から落ちて、川に飛び込む寸前に消えたのを目撃をした。
「何あれ?」
 川面には波も立たず、変化はなかった。

 少し呆然としていたが、彼が落ちた原因。
 中村たちが橋の上でうろうろしていたので、彼女は元来た道を戻り、一本川下の橋から家へと帰った。

 そう、彼女は彼が、魔法でも使ったのかと思った。
 荒唐無稽な話しだが、それが一番しっくりする。
 川に落ちて、濡れたくなかったから。きっとそうだわ。

 そう思って、いや、思い込んでいたのだが……
 翌日、彼が行方不明だということで話が変わってくる。
 
「昨日から、新世君が家に帰っていない。皆、何か知っていることがあれば教えて頂戴」
 担任は、板垣 未希いたがき みき二十五歳。
 まだ三年目で、初担任。

 朝一から校長達に呼ばれて、失踪について聞いた所だ。
 事が事だから、話しは当該クラスと関係者以上に広げなかったのだが、情報収集の中で、体育教師、外狩 岳夫とがり たけお 二十八歳の関与があったのではないかと噂が出る。

「体育の授業中、彼に対して体罰を行った様だね。これを見たことがあるかね」
 差し出されたのは、文部科学省監修『体罰・不適切な指導防止ハンドブック』である。

 当然だが、その意味は理解される。

「しかし……」
 外狩の言葉を聞き、校長である建瀬 芳希たつせ ほうき五十四歳が睨み付ける。
 その脇では、教頭仲間 慎二なかま しんじ。五十五歳が申し訳なさそうな表情で立っている。
 教頭はたたき上げで、校長はキャリア組である。
 
「体罰は全面的に禁止されている。組織的にも、対外的にも印象が良くない。幾度か申し伝えたはずだが?」
「はい。お聞きしました」

「昨日の放課後、学校の帰り道。彼は、悲しそうな顔をして川面を眺めていたのが、最後の姿だそうだ。その事は幾人かの生徒から連絡が来ている。そもそも、中学一年生というのは、子どもから大人に変わる多感な時期で、それを指導する我々大人はだな……」
 うんたらかんたらと、よくわからない説教が続く中で、部屋の外からノックがされる。

「はい。どうしました? 今大事な話を……」
「それが…… 校長先生。例の彼ですが、同級生が突き飛ばして川に落としたようです」
 話を持ってきたのは、まだ若い担任。板垣 未希いたがき みきだ。

 その事実に、校長の表情が曇る。
 それが本当なら…… 
 当然頭の中に浮かんだのは、自分に対しての懲罰不可避。そんな事実……
 生徒はどうでも良いのだが、それは困る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

処理中です...