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ダンジョンができた世界。
第7話 帰宅
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「本当に司なのか?」
父さんと母さんは、本人を見ても、まだ半信半疑のようだ。
「ただいま」
こっちからすると、少しだけやつれた感じはするけど、両親は両親だ。
親が呼ばれた先は警察。
今までの調書を取ろうとしたのだが、何も覚えていないと嘘をつくからだ。
ああいや、本当のことを言っていないと考えるのは警察官側の主観。
だけど最初に、言えるところだけは、一応の説明をした。
橋から落ちたとき。
気がつけば、どこか知らない遺跡に居た。
そこで、この七年暮らしていたと。
「それはどこで、そこからどうやって帰って来たのかね?」
警察官は調書を書きながら、変な顔をして、顔を上げる。
「えっ。どこかは不明です。帰りは転移ですかね? 最後に…… ダンジョンの核を貰って、実験が終わったとか言われて……」
「実験が終わった? それは誰が言ったんだ?」
警官はずっと怪訝そうな顔。
「本人は神だと言っていましたが」
すると、ものすごく変な顔をされた。
そう。素直な彼。
言える所は言ったのだ。
すると、担当者が変わってカウンセラーが始まる。
うだうだしていたら、親が来て、今ここである。
マト○ックスファッションに、指無しの革手袋。
長い髪は、後ろで無造作に結んでいる。
世紀末ファッション。
そして、脇に座っている、目付きの悪いクロネコ。
いなくなったときは、身長百五十六センチで体重四十五キロ。
懸垂が五回しか出来なかった彼。どちらかと言うと、線が細い男の子だった。
それがだ……
七年経ったとはいえ、身長百八十二センチ。体重七十二キロ。
懸垂など、永遠にいける。
見た目は、痩せ型の細マッチョに育っていた。
だけど、見た目とは違い、握力、背筋その他もろもろはトンクラス。
漫画で見た、左腕に銃をくっ付けた化け物と、普通に殴り合いができるだろう。
今は、ダンジョンの核を受け入れたことにより、完全に人外となり、レベルは一万を超えた。無論気合いを入れたときには、神気まで纏っているのだが、最近は本気を出さないのでシンですら、司が神気を使えることを知らない。
そして、この世界に現出したダンジョンで、核を得た者達は、神格憑依という現象を起こして、無敵モードになることがわかるまで、シンは気がつかなかった。
両親達は、流石に息子だとわかる。
あの日から不足していた、司が成長がする姿が、脳内で補完される。
そして、昔と変わらない優しそうな目。
だが、その目は時に、ぞっとするほど怖くなる。
我が子だと認識。
迎え入れて、抱き合って喜ぶ三人。
実に微笑ましい光景。
両親は気がつかなかったのだが、一部の警官は気がついた。
「あれは、何人か殺しているなぁ」
家族が迎えに来て、手続きも済み、彼等は嬉しそうに警察署を出て行く。
だが、それを見送りながら、ぼそっとそんな物騒な言葉が聞こえる。
「そうなんですか?」
年をとり、なんとか昇級試験をとって、今年から課長補佐としてやって来た、ノンキャリアの元暴対刑事が、ぼそっとつぶやく。
「ああ。目と雰囲気でわかる」
もう、脳内アラームがなくとも、癖になっている気配察知と警戒。
わずかだが、殺気も漏れている。熟練の刑事さんは、それを感じ取ったようだ。
「マークをしますか?」
「そうだな。どこかの国が拉致して、特殊訓練でも受けた危険性がある」
「テロですか?」
「あくまでも危険性だ……」
そう、このおかげで、マークされてしまった。
七年間に培ったモンスターとの戦い。その命を掛けたやり取りは、彼にただならぬ雰囲気を纏わせたようだ。
今の彼には、「俺の背後に立つんじゃねぇ」を素でできる。
刑事さんの見立ては、あながち外れていない。
電車ではなくて、車に乗って家へと帰り着く。
「今はここが家だ。ゆっくりしろ」
「今度は一軒家か」
「皮肉なことに、お前がいなくなってから昇進をしてな」
父さんは照れ笑い。
居なくなったあと、限界まで有休を使い、ビラを配るなど奮闘した両親。
そんな彼等に、会社は温情? なのか、息子の事とかを、色々と考えられないほど忙しい所に、父親を転勤させて押し込んだ。
だが父は、強かった。
会社の思惑を覆し、結果を出してしまったのである。
課長補佐にまで、一気に上がってしまった。
―― 迎えも車だったし、金回りが良くなったのだろうか?
帰りに、連れているネコの為に、ドンキなディスカウントストアに寄り、俺の着替えや、本当は必要が無いのだが、ネコのトイレなどを買い込んできた。
ネコの姿だが、実はシンだ。
いきなり、行方不明だった俺が、オッサンを連れて現れたら、それこそ怪しい。
ダンジョンを現世に発現させるまでは、ネコの姿だ。本当は、俺が向こうに居る間にこっちにも創る予定だったのだが、俺が家族には会いたいと言って、まあ変更された予定。
ダンジョンができて、世の中に混乱が起きると、会うのが難しくなるかもなという事で、まあ神の? いや友人としての配慮だな。
そんな事を考えて部屋でいると、にわかに廊下が騒がしくなる。
ドアが乱暴に開かれて、人が入ってくる。
気配察知で掴んではいるのだが……
部屋は、四畳半のフローリングの間取りに、あの頃に使っていたベッドや机などが押し込まれていた。かなりくたびれているが、グリーンでかわいい系のキャラデザインがプリントされたカーテンがぶら下がっている。そしてビーズクッション。
そして通学鞄。こいつは帰ってきていたようだ。
部屋にあったのはそれだけ。
そのため、亜空間庫にあった物を少し出した。
ラグ代わりに、シルバーベアの毛皮を敷き、その上に手作りの卓袱台を乗せる。
よっこらせと、いつでも攻撃が出来るように左膝を立てて準備をする。
一応、背中に隠している右手には、短刀を出して握っておく。
神刀カグツチ。
俺が気に入っている、炎属性の凶悪なナイフだ。
やはり、飛び込んできたのは、妹の新世 千尋。昔の記憶に比べて随分色々と育ったようだが本人だろう。彼女も十八歳になって、随分大人っぽく変わった。
まだ高校生で、制服なのだろうか?
かわいらしい感じのジャケットとスカートを着ていた。
ただ、軽い物だったのだが、警戒してしまったせいで、殺気が漏れた様だ。
飛び込んできたのは良いが、俺を見た瞬間から、ガクブル状態。
まるで後半になって、俺に出会ったゴブリンのように、動きが固まってしまった。
警戒を解く。
「久しぶり。元気だったか?」
そう言って、優しく声をかける。
だが……
彼女はまだ、目を見開いたままで、固まっている……
―― 一時間ほど前。
「司が見つかって、今部屋に居いるぞ」
塾にいるときにやってきたメッセージ。
それを授業の後で見たとき、私は、あわてて帰って来た。
ほんわかして、優しかったお兄ちゃん。
いなくなったときには、ほとんど身長も一緒だった。
私が我が儘を言っても、優しく受け止めてくれた。
千尋の記憶ではこうだったのだが、実はもっと我が儘野郎だった。
千尋の方が……
「ゲーム貸して」
「いやだよ。前のタイトルはどうした?」
「ゴメン。仲の良い子が欲しがったからあげちゃった」
「おまえなあ」
まあ、文句を言われないから好き放題、お兄ちゃん大好きは本当だが、成長期に入って身長がほぼ同じになってからは、我が儘娘だった。
それがだ、ドアを開けた瞬間に見たもの。
それは、左足が前で、片膝立ち。
半身に構えて、右手を背後に回し、眼光鋭く見つめる長髪の男。それも、厨二病感があふれた格好で、睨まれた。
その目を見た瞬間、頭からキンキンに冷やした水をぶっかけられた様な感覚と、絶望的な恐怖を感じた。
それはきっと、生物的、絶対的な差。
蛇に睨まれたカエルとは、こういう事だろう。
実際、ちょっとチビってしまった。
体が、重くなった空気に潰される。息のできなくなるような、絶望的な恐怖感はすぐに消えたのだが、見えている光景は異質。
あぐらを組んで、クッションにもたれ掛かりながら座るクロネコと、酒を杯で酌み交わしている途中だったようで、彼等の中央には手作りっぽい卓袱台と、それに乗ったとっくり。そして、大きな葉っぱに乗せられた、炙られたスルメ。
咥えていたスルメが、もぎゅもぎゅとネコの口に消えると、杯に入った酒をあおる。
そんなことなど気にせずに、その男の人はすっくと立ち上がると言った。
「久しぶり。元気だったか?」
前よりも低い声。
でも優しい。
でも異常。
本当は…… 帰って本当にお兄ちゃんがいたら、どこかで見たドラマのように、胸に飛び込むつもりだったのだが、そんな気は完全に消え失せた。
そう、呆然とするしか、無理……
「おう、おまえ、司の妹か。よろしくな。わしはシンだ」
まねきねこのように、ひょいと左手を挙げて、ネコに挨拶をされた。
「はっはひ。よろしくお願いします……」
そう返すのが精一杯だった。
妙にかっこよく、変になってしまったお兄ちゃんは、怖くて目を合わせられなかった……
父さんと母さんは、本人を見ても、まだ半信半疑のようだ。
「ただいま」
こっちからすると、少しだけやつれた感じはするけど、両親は両親だ。
親が呼ばれた先は警察。
今までの調書を取ろうとしたのだが、何も覚えていないと嘘をつくからだ。
ああいや、本当のことを言っていないと考えるのは警察官側の主観。
だけど最初に、言えるところだけは、一応の説明をした。
橋から落ちたとき。
気がつけば、どこか知らない遺跡に居た。
そこで、この七年暮らしていたと。
「それはどこで、そこからどうやって帰って来たのかね?」
警察官は調書を書きながら、変な顔をして、顔を上げる。
「えっ。どこかは不明です。帰りは転移ですかね? 最後に…… ダンジョンの核を貰って、実験が終わったとか言われて……」
「実験が終わった? それは誰が言ったんだ?」
警官はずっと怪訝そうな顔。
「本人は神だと言っていましたが」
すると、ものすごく変な顔をされた。
そう。素直な彼。
言える所は言ったのだ。
すると、担当者が変わってカウンセラーが始まる。
うだうだしていたら、親が来て、今ここである。
マト○ックスファッションに、指無しの革手袋。
長い髪は、後ろで無造作に結んでいる。
世紀末ファッション。
そして、脇に座っている、目付きの悪いクロネコ。
いなくなったときは、身長百五十六センチで体重四十五キロ。
懸垂が五回しか出来なかった彼。どちらかと言うと、線が細い男の子だった。
それがだ……
七年経ったとはいえ、身長百八十二センチ。体重七十二キロ。
懸垂など、永遠にいける。
見た目は、痩せ型の細マッチョに育っていた。
だけど、見た目とは違い、握力、背筋その他もろもろはトンクラス。
漫画で見た、左腕に銃をくっ付けた化け物と、普通に殴り合いができるだろう。
今は、ダンジョンの核を受け入れたことにより、完全に人外となり、レベルは一万を超えた。無論気合いを入れたときには、神気まで纏っているのだが、最近は本気を出さないのでシンですら、司が神気を使えることを知らない。
そして、この世界に現出したダンジョンで、核を得た者達は、神格憑依という現象を起こして、無敵モードになることがわかるまで、シンは気がつかなかった。
両親達は、流石に息子だとわかる。
あの日から不足していた、司が成長がする姿が、脳内で補完される。
そして、昔と変わらない優しそうな目。
だが、その目は時に、ぞっとするほど怖くなる。
我が子だと認識。
迎え入れて、抱き合って喜ぶ三人。
実に微笑ましい光景。
両親は気がつかなかったのだが、一部の警官は気がついた。
「あれは、何人か殺しているなぁ」
家族が迎えに来て、手続きも済み、彼等は嬉しそうに警察署を出て行く。
だが、それを見送りながら、ぼそっとそんな物騒な言葉が聞こえる。
「そうなんですか?」
年をとり、なんとか昇級試験をとって、今年から課長補佐としてやって来た、ノンキャリアの元暴対刑事が、ぼそっとつぶやく。
「ああ。目と雰囲気でわかる」
もう、脳内アラームがなくとも、癖になっている気配察知と警戒。
わずかだが、殺気も漏れている。熟練の刑事さんは、それを感じ取ったようだ。
「マークをしますか?」
「そうだな。どこかの国が拉致して、特殊訓練でも受けた危険性がある」
「テロですか?」
「あくまでも危険性だ……」
そう、このおかげで、マークされてしまった。
七年間に培ったモンスターとの戦い。その命を掛けたやり取りは、彼にただならぬ雰囲気を纏わせたようだ。
今の彼には、「俺の背後に立つんじゃねぇ」を素でできる。
刑事さんの見立ては、あながち外れていない。
電車ではなくて、車に乗って家へと帰り着く。
「今はここが家だ。ゆっくりしろ」
「今度は一軒家か」
「皮肉なことに、お前がいなくなってから昇進をしてな」
父さんは照れ笑い。
居なくなったあと、限界まで有休を使い、ビラを配るなど奮闘した両親。
そんな彼等に、会社は温情? なのか、息子の事とかを、色々と考えられないほど忙しい所に、父親を転勤させて押し込んだ。
だが父は、強かった。
会社の思惑を覆し、結果を出してしまったのである。
課長補佐にまで、一気に上がってしまった。
―― 迎えも車だったし、金回りが良くなったのだろうか?
帰りに、連れているネコの為に、ドンキなディスカウントストアに寄り、俺の着替えや、本当は必要が無いのだが、ネコのトイレなどを買い込んできた。
ネコの姿だが、実はシンだ。
いきなり、行方不明だった俺が、オッサンを連れて現れたら、それこそ怪しい。
ダンジョンを現世に発現させるまでは、ネコの姿だ。本当は、俺が向こうに居る間にこっちにも創る予定だったのだが、俺が家族には会いたいと言って、まあ変更された予定。
ダンジョンができて、世の中に混乱が起きると、会うのが難しくなるかもなという事で、まあ神の? いや友人としての配慮だな。
そんな事を考えて部屋でいると、にわかに廊下が騒がしくなる。
ドアが乱暴に開かれて、人が入ってくる。
気配察知で掴んではいるのだが……
部屋は、四畳半のフローリングの間取りに、あの頃に使っていたベッドや机などが押し込まれていた。かなりくたびれているが、グリーンでかわいい系のキャラデザインがプリントされたカーテンがぶら下がっている。そしてビーズクッション。
そして通学鞄。こいつは帰ってきていたようだ。
部屋にあったのはそれだけ。
そのため、亜空間庫にあった物を少し出した。
ラグ代わりに、シルバーベアの毛皮を敷き、その上に手作りの卓袱台を乗せる。
よっこらせと、いつでも攻撃が出来るように左膝を立てて準備をする。
一応、背中に隠している右手には、短刀を出して握っておく。
神刀カグツチ。
俺が気に入っている、炎属性の凶悪なナイフだ。
やはり、飛び込んできたのは、妹の新世 千尋。昔の記憶に比べて随分色々と育ったようだが本人だろう。彼女も十八歳になって、随分大人っぽく変わった。
まだ高校生で、制服なのだろうか?
かわいらしい感じのジャケットとスカートを着ていた。
ただ、軽い物だったのだが、警戒してしまったせいで、殺気が漏れた様だ。
飛び込んできたのは良いが、俺を見た瞬間から、ガクブル状態。
まるで後半になって、俺に出会ったゴブリンのように、動きが固まってしまった。
警戒を解く。
「久しぶり。元気だったか?」
そう言って、優しく声をかける。
だが……
彼女はまだ、目を見開いたままで、固まっている……
―― 一時間ほど前。
「司が見つかって、今部屋に居いるぞ」
塾にいるときにやってきたメッセージ。
それを授業の後で見たとき、私は、あわてて帰って来た。
ほんわかして、優しかったお兄ちゃん。
いなくなったときには、ほとんど身長も一緒だった。
私が我が儘を言っても、優しく受け止めてくれた。
千尋の記憶ではこうだったのだが、実はもっと我が儘野郎だった。
千尋の方が……
「ゲーム貸して」
「いやだよ。前のタイトルはどうした?」
「ゴメン。仲の良い子が欲しがったからあげちゃった」
「おまえなあ」
まあ、文句を言われないから好き放題、お兄ちゃん大好きは本当だが、成長期に入って身長がほぼ同じになってからは、我が儘娘だった。
それがだ、ドアを開けた瞬間に見たもの。
それは、左足が前で、片膝立ち。
半身に構えて、右手を背後に回し、眼光鋭く見つめる長髪の男。それも、厨二病感があふれた格好で、睨まれた。
その目を見た瞬間、頭からキンキンに冷やした水をぶっかけられた様な感覚と、絶望的な恐怖を感じた。
それはきっと、生物的、絶対的な差。
蛇に睨まれたカエルとは、こういう事だろう。
実際、ちょっとチビってしまった。
体が、重くなった空気に潰される。息のできなくなるような、絶望的な恐怖感はすぐに消えたのだが、見えている光景は異質。
あぐらを組んで、クッションにもたれ掛かりながら座るクロネコと、酒を杯で酌み交わしている途中だったようで、彼等の中央には手作りっぽい卓袱台と、それに乗ったとっくり。そして、大きな葉っぱに乗せられた、炙られたスルメ。
咥えていたスルメが、もぎゅもぎゅとネコの口に消えると、杯に入った酒をあおる。
そんなことなど気にせずに、その男の人はすっくと立ち上がると言った。
「久しぶり。元気だったか?」
前よりも低い声。
でも優しい。
でも異常。
本当は…… 帰って本当にお兄ちゃんがいたら、どこかで見たドラマのように、胸に飛び込むつもりだったのだが、そんな気は完全に消え失せた。
そう、呆然とするしか、無理……
「おう、おまえ、司の妹か。よろしくな。わしはシンだ」
まねきねこのように、ひょいと左手を挙げて、ネコに挨拶をされた。
「はっはひ。よろしくお願いします……」
そう返すのが精一杯だった。
妙にかっこよく、変になってしまったお兄ちゃんは、怖くて目を合わせられなかった……
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