ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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始まった新世界

第50話 基準

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「ぐっ。数が多い面倒だ」

 十数匹も来たゾンビ達を、なんとか倒す。
 胸の魔石を壊すか、えぐり出さないと、首をはねても動き回る。

「そいつらな。さっき治療に使った聖魔法が効くぞ」
 シンは、苦労をしている司に向かい、そう言って、ニヤニヤ。

 もう幾度も戦闘をして、こいつらも三回目か四回目の集団だ。
「だからぁ、そんな事は早く言えよ。急所が胸の魔石だって教えてくれれば、もう少し早く倒せたのに」
「聞かれなかったからな」
 そう言って、さもありなん当然という態度。

「さっき、どうやったら倒せるって聞いたら、戦えって言っただろ」
「そうだ。戦って勝て」
 いや間違っちゃいないけれど…… 
 もう少しこう……

「だぁかぁらぁ。もうぅ……」
 司は、地団駄じだんだを踏む。

「おっ、牛か?」
 シンの揶揄いが入る。
 この頃は苛ついたなぁ。

 今もまあ同じか。
 此方が気がつき、聞かなければシンは答えない。
 特に、大事な事になればなるほど。

 逆に、くだらないことは教えてくれる。
 この前、プールの後だった。

 上条さんは、身長が小さいのに、胸は大きいんだなと少し考えた。
 本当に少しだけだ。

 なのに、シンは語る。
上条かみじょう 結心ゆい。身長は百五十六センチ。胸のサイズはFとなっておるな。Fと言うのは胸部、低いところの胴回りと、高い所の胴回り。その長さの差だそうだ。女子おなごは出っ張っておる差に、こだわるようだぞ」
 そう言って、わっはっはっと高笑い。
 そんな情報を聞いて、俺にどうしろと?

「それに、あやつもお前とつがいになりたいようだ。どれにするんだ? あまり無節操に子をなすと面倒になるぞ」
 そう言って、にまにま。
 ソーマをグビグビ。

「ほっとけ」
 とまあこんな感じで、他にも、あいつは他の男に抱かれた経験があるから、やめとけとか、そんな話しまで……

「他の男と一度でも情を交わせば、要らぬ病気なども貰っておることがある。気を付けろ。それに、貞操に関する気の持ちようが変わるしな。一途さが多少不足するぞ」
 などと教えてくれる。

 こいつ実は、下世話な話しが大好きなんじゃ無いかと思ってしまう。
 すると、当然のように心の中を読み補足が入る。

「人の営み。特に男と女の関係は、いさかいの種となる。それもだ…… 実に人間のエゴを表すのにふさわしく、深くてドロドロした心の闇だ。そのぶつけ合いとなる。だから、人においては、大事な事なのだよ」
 だそうだ。


 それで…… そうそう。
 あの頃は、まだ魔法も強くなかったし、撃ち出すよりは剣に纏わせた方が省エネだった。
 今、彼女にやらせているのはその為だ。

 なんとなく昔を思い出しながら、だけども、大事な事は一度は伝える。
 二度目は言わないのだが、それは十分優しい対応だと司は考えている。
 シンよりましだと。


 ―― 体全体、魔力の流れが良くなっている?
 それに、なぜかコントロールがしやすい。
 思い当たるのは、あの桃を食べたからだ。

 杏華はすぐに気がついた。

 だけど、聖魔法はどうするんだろう?
 そんな事を思っていると、床のスイッチを踏んでしまった。
「あっ」
 杏華と横並びにいた、結衣の鼻先を矢がかすめる。

「うぴゃっ。なに今の?」
 亜矢は、少しでも司のそばにいようと、一歩遅れているから助かった。

 杏華は、矢に気がつき掴みに行った。
 だが思っていたよりも手の動きが速く、鏃を掴む。
「うきゃあ。しまったあ」
 そう、躱せば良かった。

 つい、フッとか言いながら、格好を付けて、目視もせずに掴んでしまった。
 だが桃の効果なのか、自分が思うよりも手が早く、丁度手の平を撃ち抜かれてしまった。

「てっ、手え。刺さってるぅ」
 彼女は周りに見せびらかす。

「うわぁ。痛そう」
「毒は無さそう?」
「分からない。何とかしてよぉ」
 こう見ると年相応だな。

「矢を折って、鏃の方へと抜くんだ。そこまで抜けていると、あまり痛さはかわらんだろ」

 そう言われて、彼女達はナイフを使いながら矢を折る。
「やるわよ」
 鏃を掴み、一気に引く向く。

「ああっ、体の中を何かが動いている感じがする」
「えっ? きもちいぃ?」
 いつもとは違い、亜矢が杏華に突っ込む。
 まあお年頃だから、興味は有る。

「痛いわよ。それに、気持ちいいとかより違和感がすごい」
「そうなの?」
 矢が抜けた手から血が滴る。

「血を流すと、ゾンビ達を引き寄せるぞ」
「ええっ? あっ治療」
「聖魔法ってどうするの?」
 そこで司が口を出す。

「魔力を出しながら、元のように治れと願う」
 それを聞いて、杏華は頷く。

「元のように、治れ。んんんー」
 左の手の平に、光りが出始める。

「治れえぇ」
 力が入り、右手から滴る血が増える。

「どれ、手首を持つぞ」
「えっはい」
 杏華は背後から司に抱かれる形で、両手首を掴まれる。

「行くぞ」
 耳元で司の声がする。
「はい」
 手首で魔力のコントロールを行う。

 彼女の心臓近くから、流れ出る魔力。
 それが途中で変化をして、腕とか手の平が少し熱くなる。

「あっこれ?」
 右の手の平が、逆再生のように治り始める。
 少しのかゆみを伴いながら。

「わあすごい」
 そう言いながら、彼女達の視線は、杏華を抱きかかえる司に向かう。
 治して貰いながら、杏華は喜んでやがる。
 デレデレの顔と、広がった鼻の穴。
 不細工顔が、司さんに見えないのが腹が立つ。

 つい罠に掛かってやろうかと思うが、司は二度目だと馬鹿にするし、同じ事を繰り返せば、きっと…… あんた誰攻撃が始まる。
「あんたがた、だれさ♪」
 ふと脳内に曲が浮かぶが、それは『どこさ』だろ。そんな事を言っている場合じゃ無いと、自分でボケ突っ込みを行う亜矢だった。

 そう、彼は同じ間違えには厳しい。
 三回、四回と繰り返せば、その目は自分の姿を見えないものとして扱い始める。

 あの絶望感……
 あれだけは避けねば。

 そんな中で、杏華は聖魔法の感じを掴む。
「ああっ、そうか」
 なぜだろう。理解ができる。
 今使った魔法。それの仕組みが分かる。

 てってれぇー。
 杏華は聖魔法を取得した!!
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