ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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始まった新世界

第72話 戦乙女

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「出来るようにになった人?」
 バラバラと手が上がる。

「きみ。罠のあるタイルにマーキング」
「はい」
 秋山あきやま 真優まゆはペンを渡される。

 床に対して次々にマークをして行く。
「正解だ。次は君だ」
 
 それが繰り返されて、本物かどうかを確認。

 できていたのは、おおよそ三分の一。
 わずか六人。

「まだまだだな」
「すみません」
 この中では上位の、伊藤警部や佐々木二尉がわびる。

「探査始め」
 この周辺のゾンビやスケルトンは、司やレッドラスティネイル達が一掃をした。
 その光景は、警官や自衛官の気合いを削るには十分すぎた。

 こうして警官達がしごかれている頃、すっかり影の薄くなった人達がぼやいていた……


「司さんと会えにゃい」
「そうねぇ」
 準備室だったときの家族枠。
 司と仲良くなりなさいと、父親達に言われて参加した女の子達。

 お知り合いになり、父の意向など関係無しに仲良くなりたいと思ったのだが、あのプール以降、忙しくて遊んでくれない。

 コミュニケーションツールでは返事が来るのだが、遊ぼうの返事は冷たいものだった。

「なんか、一緒に行った時に高校生の女の子達がいたでしょう?」
「あー。いたわね」
「あの子達と、ダンジョンデートをしているみたいね」
「えー良いわねぇ」
「私も行きたい」
 土屋つちや 紗奈さなも高校生になり、少しだけ体もパワーアップした。胸囲もささやかだが、アップグレードをした様だ。

 水津みずつ あおいは流石に就職をしたため、この会合にも出席できず仲間はずれ。ライバルは少ないほうが良いなどと言う、闇の意図が働いたのかは定かではない。
 山瀬やませ さくらと紗奈が、ファミレスに集合をして、もっぱら愚痴を言い合っている状態である。

 清水きよみず 華恋かれんも頑張っていたのだが、準備室が室になった後、日本中に出張所が出来たために走り回っている。

 そう、実際に動けるのは、この二人。

 だがしかし、である……

「女子大生かあ。楽しそうね」
 桜も同じ大学生のはずだが、大学が違うために司には会えない。

 彼女達が楽しそうとぼやく、ダンジョンデート。
 一度本当に経験すれば、きっと青い顔をして無理と、一言で終わるだろうが、彼女達は叶うことを夢見ながら、新たなる詠唱を考察する。
 紗奈に毒されて、桜も少しおかしな事になっているようだ。

「地獄の炎を持って我が敵を焼き尽くせ。極爆黒炎エクストリーム・ブラックフレイム
 二人は休日になると、お近くのダンジョンで、ゴブリンをオーバーキルして歩いていく。その姿は、何時しか有名になっていた。

 戦乙女だと……
 訳の分からない事を叫び、凶悪な火魔法を使う。
 そして燃えるゴブリンを見て、極悪な笑顔を見せる。

「あの二人には、触れちゃあなんねい」
 色々な意味で恐れられているようだ。

 浅い階層。だが他の素人さんに迷惑をかけないように、三階で修行を積む。
 レッドラスティネイルからすれば、ヌルすぎて風邪を引きそうな訓練。
 だが彼女達にとっては、休日ごとにダンジョンへ入るほど真剣ではあった。

 きゃっきゃ、うふふと、司と共にダンジョンで掛け回り、モンスターを屠る。
 そんな日を夢見て……

「桜ちゃん強くなったなぁ」
 そう言ってもらえる時を信じて。

「紗奈。素晴らしい詠唱だ」
 まあこれは、スマホでのやり取りの中で、たまに褒めてもらえる。
 同じ魔法に対して、十個くらいは違った詠唱ができた。
 無論威力は、詠唱ではなく魔力のノリで決まる。

「はああぁっ。ダンジョンへ行きたーい。私をダンジョンに連れて行って」
 などと、大昔バブルの頃に流行ったような言葉を吐く二人。
 無論ダンジョンの中で、ダンジョンへ連れて行けとはこれいかにという感じだが、司さんが抜けている。
 実際に行けば、言葉ではなく、魂が口から吐かれるだろう。



「うげえぇ」
「とろくさい」
 隊員の一人が、リッチからの攻撃をもろに喰らい吹き飛んでいく。

 十三階にある例の城で、彼等はリッチと戦っていた。
 この城では、リッチの代替わりが行われておらず、強敵である。
 彼等にとっては……

「ここのリッチ、ちょっとだけ強い?」
「気のせいでしょ」
「うーん。ちょっと、いつものダンジョンとは違う気がするわね」
 彼女達も周りで見ているだけ。

 一応隊長を決めて、彼等の自主性に任せている。
 わらわらと攻撃を行い、リッチ一匹に翻弄されて、コロコロと転がる隊員達。

 現在、銃は使わずに拾った剣のみで攻撃。
 魔法は使用可ではあるのだが、練度が低い。

「これは駄目だな」
 身体強化は特訓後、彼等も日常的に自主練を行っている。
 だがしかし、攻撃魔法の練度が呆れるほど低い。
 シールドは任務に使うため、物理型は使えているようだ。

 仕事上、体術や銃の使用に特化している彼等。
 警官のほうも、犯人捕縛に通常では魔法を使えない。

 今現在、法による取り決めで、ダンジョンの外において、魔法の使用は厳罰となっている。

 初期にあった、悪さをする強盗達。
 シンたちにより駆除されたのだが、悪しき例という事で、法律は決まってしまった。

 実際問題として、銃刀法で取り締まれないのに、個人が持つには強力な武器である魔法。
 野放しに出来るはずもない。

 その為、最低限の講習は、警官全員が受けているはずなのだが、一般常識範囲で行っているので司に言わせれば、ぬるぬるにヌルい?

 後日、司からその事が上に報告をされて、各所轄など下部へ通達される事になる。
 警官も自衛官も、それにより一歩地獄へと足を踏み入れることになる。


 はてさて、見るに見かねて司がリッチを止める。

 威圧と、魔法の停止。

 かわいそうに、リッチ君は驚いている。
 魔法使いとしての上位者。そんなプライドを司は意図せずにへし折ってしまう。
 うりゃうりゃと、素振りのように杖を前に出す。
 だが魔力が、体から出た途端に霧散をする。
 リッチ人生において、ビックリ仰天な出来事である。

「さて注目。君達は何度同じ事を繰り返すんだ?」

 攻撃が止まったことに、当然皆が驚く。
 指向性を持たせた威圧。

 総計二十人が必死で攻撃をしていた対象が、手をかざすだけでマテをしている。
 実際は、首をひねりながら杖をブンブンしているのだが、どうでも良いことだ。
 
 彼等は五人一組で自衛隊と警官隊が、左右からリッチに対して攻撃をしていた。

 疲労が出れば交代。
 よく言えば、安全に対するマージンを取った波状攻撃。
 だがいつまで経っても火力は足りず、リッチの張った物理シールドを破れない。
 そのため、永遠とも言える時間、攻撃が続いていた。
 実際は三十分くらいだが、一瞬で屠れる相手に、それは長いのだ。
 あくまでも、基準は司単位。

 リッチは、無限に近い命を持っているから、ずっと相手をしていても良いのだが、彼等は違う。疲れもすれば飯だって欲しい。

 攻撃力が足りなければ、少しの間だけでも全員攻撃でもすれば良いのに、それすら行わない。
 そう、司は見ていて飽きた。

「どうやれば、シールドの防御力をこえた攻撃を行える? 言ってみろ」
「はっ。はい。力一杯攻撃をすることです」
 疲れた顔だが、ビシッと発言。
 だがその答えに、司はカチンときた。

「ほう、それでは貴様。手を抜いていたのか?」
 その瞬間、部屋の温度が十度は下がった……
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