ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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迫り来る脅威

第106話 想定外

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 司を探り始めたのは、日本国保守新党だけでは無い。

 日本保革推進党は以前、司にからんで久仁瓜くにうり すすむ議員が拘束されて逮捕。
 その時から、急速に立場をなくしていた。

「一体どうなっている? あの総理の強引さは……」
 脳裏に浮かぶ毅然とした態度。
 あんな無謀な逮捕など、リスクでしか無いというのに。
 西里にしざと隆盛りゅうせいたちは顔を突き合わせて相談を始める。
 大久保おおくぼ利通としみち木戸きど 孝允たかよしたちも参加しているが、国の方向転換に首をひねる。

 まるで、中華帝国のあの方のようだ。

 いま、中華帝国とロシア帝国は、旧領土を取り戻すと言い訳して、それを大義名分として、躍起になって軍拡を進めている。

 シンが知り、人類の行く先を憂いだ原因の一つ。
 そんな場合では無いのに……

 よし共通の敵を作り、ついでに強くしちゃおう。
 ダンジョンを創って人類を進化させよう。
 楽しそうだし。

 そんなことを、シンが考えても仕方が無いだろう。

「それで、金の流れは?」
「防衛関係費や有償資金協力の年度経常収益。利息収入分の中から、かなりの巨額が動いています」
「そうだろう。それで?」
 彼等はうんうんと頷く。

「細目は色々ですが、一度国庫に戻ったり、一般的な購入。無論よくやる三万円以下の架空納品です。その数が異常でして、追い切れません。逆に緊急支出の中には、政治活動費や政務調査費のお代わりという項目までありますので…… 追いますか?」
「いや、それはまずい」
 自分たちも浮かした経費を、利害関係者に鼻薬としてばら撒いているのだ。

 鼻薬というのは、政治的世界では少額の賄賂わいろや、手土産。そして、贈り物を意味する隠語である。
 表の金を、ごにょごにょして、自由に使える物へ。
 よくあることである。

 予算の申請から支出。
 年度単位でそれは執行されるのだが、ここに来て防衛関係物品の購入などが急遽中止となって浮いた金がどこかに向かった。
 余った分は国庫に戻る。
 それは良いのだが、その金額が突然動き、異常に多いから目を付けられた。

 同盟国であるアメリカからの武器輸入は、貿易不均衡を埋めるためとかにも有効なはずだが、それを急に取りやめたのが怪しい。

 いきなりの大きな金の動きがあれば、勘ぐった思いが噂となり、それを聞きつけた者達も何かがあると思い始める。

 まあ向かった先は、魔導具開発庁。
 庁と言っても人数は少なく室に近い。
 庁にしたのは、余所からの介入があると面倒だという、極めて政治的な理由である。

 出来た当初は、そんな訳の分からないところ、皆は閉職だと思っていた。

 ところが、外務省などからちらほらと噂が流れてくる。
「評判が良い」
「だけど、海外のインフラを整備しているところだろ。閉職には違いあるまい」
「そう言えば、半公半民だったか?」
「いや一応、行政職二のようだぞ」
「外れじゃ無いか」
 行政職二は、地域採用とか用務枠。
 運転手とか清掃員かが多い。
 当然だが、出世は無い。

 当然、国としても、最初から巨大な予算など付けられない。
 実績が出来て、少し、また少しと行くところだが、今回はいきなり宇宙船建造話だ。
 何とかしないといけない。
 アメリカの大統領に金を出してくれと言ったら、逆に出してくれと言われた。
 だから、やはり自国開発をするしかない。

 だがこれが上手く行けば、美味しいことになる。
 日本は世界に恩を売れるのだ。

 適度に被害が出たところで、日本がその困難を打開をする。
 それが一番。

 上手く行けばだが……

 こうして、様々な予定が狂い、日本は日本で船を建造しますと宣言をしたから、一気に予算確保が必要となった……
 そう現場を知らない上部で、極めて常識的な金額を算定をした。
 有人宇宙船の開発、運用には、一機で数千億円から兆円規模の金が必要となる。
 
 だが現場では……

「急に予算が振ってきたけど、必要かこれ?」
「ノートパソコンを各自に配るか?」
「そうだな。それと休憩室に、ソファーとコーヒーメーカーが欲しい」
 そんな小市民的な会話が聞こえる。

 司に聞けば、安価な鉄をベースに魔力で変性をして、丈夫なものを造れますという回答。
「側が出来れば、中身には魔道具を使うし、幾ら必要ですかね? 一千万円くらい?」
 高級車でさえ一千万円など軽く超えるご時世。
 当然これは、何も知らない司だから言った数字。
 普通の大型フェリーでも数十億から百億円規模だし、大型クルーズ船になると一千億円を超える。
 だが今回来た予算は、絶対に多すぎるという事は判った。

 すでに、シールド発生装置と、警報装置は三日ほどで司が造りばら撒いてきたそうだ。
「宇宙は息ができませんでした。それに寒かった」
 そんな報告と共に……
 宇宙線とかは見えなくても、非情に危険な物が飛び交っているため、皆はシールド無しで泳ごうとかしないでください。健康に悪く、窒息や火傷。脱水や凍結。時により即死する可能性があります。ご注意ください。

 その頃司は、シンと共に長野県の山中にいた。
 貰った山。
 まともな道も無く、一山で五百万円だったとか?

「いやあ、便利ですね」
 担当者達は転移でやって来た。

「地図で見えるこの赤線の中が、全部今回の建設予定されている土地です。なるべく目立たなければ大丈夫ですから」
 そう言って担当者は、空を指さす。
 上空から見えないように、山の下に基地を造る。

 無論生活基盤も整えて、シェルターとしての利用も考えている。

「じゃあ、山の麓までとりあえず道と、それとこの場所に門を造ってください」
 司は、地図の一部を指し示す。

「門というのは?」
「ええとですね。例の白い船が全長約二百六十二メートル。全幅が約二百二・五メートル。全高が約九十三メートルですから、それが出入りするくらいのサイズで…… いや浮かび上がるから、全高は三十メートルくらい大きめにお願いします」
 資料として持って来のは、プラモデルに付いていた船の諸元表。

 今話しをしている相手は、魔導具開発庁の工事部門。
 設置なども行う技術者集団。
 土木用の魔導具を用いて、道などあっという間に造ってしまう。
 今のご時世、造るよりも、用地買収の方が面倒だし金が掛かる。
 そのため、造ると言った道は、大部分がトンネルとなる事になっている。
 トンネルならば、土魔法で堀ながら、周囲を石化する。
 魔道式シールド工法。

 速度は驚異の時速三十キロ……
 冗談みたいだろ。でも本当なんだぜ……
 出来るんだよ、魔法ならね。


 日本から金の無心があったとき、アメリカ大統領トーマス・J・ホイットモアは逆に金を出せといつもの様に言った。
 宇宙においては、アメリカにはアポロ計画なども含めて、圧倒的な優位性がある。
 だが、ふと思い出す。

 他国がマネを出来ない技術。
 日本初の魔導具という新技術。
 リバースエンジニアリングはことごとく失敗。
 マネが得意な某帝国ですら、コピーが出来なかった。

「まさか…… ステージは宇宙だ。我が国が主導をしないで、どこの国がそれを成せるというのだ……」
 彼はそう言いながら、その言葉はまるで自分に言い聞かせるようだった。
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