ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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迫り来る脅威

第107話 扱い

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「おら、サボらず働け」
 捕らえられた者達への扱いは、ひどい物だった。

 広い倉庫の中に押し込めらられて、移動も出来ない。
 トイレなども利用が出来ず、一日二回ほど床を洗浄用なのか水が押し流していく。
 食事は一回投げ込まれるのみ。
 扱いは、完全に家畜に対するものと同等である。

 捕まってからは、当然の様に、首輪の番号が名前となる。
 本星に到着後、エリアごとに振り分けられて、農作業と言う名の開墾へと従事させられる。

 ヒステリシス星においては、賢者システムの管理のもとで、気温コントロールが行われていた。
 星という物は、大気中に漂うガス成分により、気温が大まかに決められる。

 無論、噴火による塵が起こす寒冷化や、星が暑くなりすぎると藻類が大量繁殖をして寒冷化が起きたことなども知られている。
 地球は現在間氷期と呼ばれる状態。
 最も氷は高所と両極にしか無いが、氷河期の最中である。

 産業革命から始まった膨大な温暖化ガスにより、急激にその気温はがって来ているのだが、原因を作った国々は、経済を理由にして自分たちが作った条約は殆ど守られていない。
 真面目なのは日本くらいだろう。

 その気温調整用の森林が、無策に伐採され始めた。
 大量の労働力によって。

 彼等の本国である星も、奴隷狩りと資源の採取が始まっていた。
 鉱物などは、小惑星などで採取すれば良いのだが、有人惑星には有人ならではの資源がある。
 動植物や、石油。
 それは、必要な成分へと分解されて利用される。
 無論採取は奴隷へと落とされた彼等達。

 その扱いは無慈悲。

「ああ、なんだその目は?」
 管理をするヒステリシス人。
 低位の職業に就く者達は、革命前でも市民として扱われず、最下層で働いていた者達。彼等自身に教養は無く、本能のままに暮らす猿のような者たち。

 立場を得て、仕事が斡旋されるようになっても、マニュアルに沿った現場管理とかが多い。

 彼等は、日々上級市民達のゴミの中から食い物を漁っていた生活から、給料を得て暮らす立場へと、言わば昇格をした。

 だがその浅慮さと粗暴さは急には無くならない。
 希望しないと、教育は受けられないのだから……

「勉強だと? そんな物受けてどうすんだ? 依頼が来ている管理者の仕事で十分暮らせるじゃねえか」
 そう、その場がよければそれで良い。
 愚者は、未来を見ようとはしない。

 そして、必要なら奪い暮らしてきた者の中には、他者への暴力が自己の承認欲求と快楽を満たすものだと思っている人間が多かったりする。

 自分の力に恐れて、相手が泣き媚びへつらう。
 暴力というの物が、何も持たない者が唯一示せる力。
 己の矜恃。

 だから、気に入らなければ、いや、何も無くとも暇つぶしに暴力を振るう。

 生物の進化というのは不思議だが、異なる星系で誕生して進化をしてきた種。
 だが、生物としての進化は、異常に似かよっていた。

 例外は、水の惑星アクアプラ・ネータムで爬虫類が進化をしたドラゴニュート達。
 彼等は、卵生だった。
 だがその他の種族は哺乳類であり、生殖の方法も同様だった。

 当然、その事に興味を持った管理者に知られて、ヒステリシス人、つまり魔族によって辱めを受ける。
 彼女達に拒否権は無い。


「ひどい事だ? 何がだ。俺らは与えるばかりじゃ無いか。それをちょっと働いただけでただ受け取っているんだ。良い境遇だろ。まあそれが嫌なら解放をしてやる」
 そう言って、コントローラーのボタンが押される。

 それは、ボタンしかないシンプルな装置。
 向けた方向、その直線上にある首輪がシグナルを受信すれば発動。
 首が落ちることになる。

「なんてひどい」
 念話が飛び交う。
「これ以上苦痛を受けたくないとか言うからだろう? 死ねば我慢をする必要は無いぞ。いやいや作業や奉仕をしなくても良いし、食い物の心配もしなくて良い。俺様からの慈悲だ。お前達が望む通りの結果だろ。お前達に折角生きるための慈悲として作業を与えているのに。社会にとって何の役にも立たない者は生きている意味など無いだろう」
 そう言って、ニヤニヤと彼等は笑う。
 これは、数年前まで散々彼等が言われ続けてきた言葉。
 
「君らは、社会のダニだ。ただ生きているだけで、何も生み出さず、社会への貢献も無い。死ねよ」
 そう言って、虫けらのように暴行を受けた。
 実際に殺されることは無かったのだが、それ以外は何でもありだった。

 相手は、上級市民達の子供。手出しは出来ない。
 そう、思春期の大人になりきれない者達が抱く、抑圧された何かは、時に残虐性を見せる。
「苦痛無く死なせてやる。これは慈悲だ」
 彼等から、散々聞いた言葉。
 時にそれは甘美に聞こえた。

 死ねば、もうこんな苦労から解放される。
 それが正しいと思った者達は、自死を選んだ。
 ここに居るのは、それでも生き残った者達。
 ただそれは、強い意思ではなく、死ぬ勇気がなかっただけの者達が大半だが……


 そして……

「最近、全然司さんと会えません。この所連絡も取れませんし、おかしくないですか?」
 紗奈の眉間に皺が寄る。

「千尋さんも会っていないとのこと。家にも帰らずに一体どこに?」
 桜たちの会合。
 最近は、司さんはどこに? 問題が発生。

 宇宙船用のドッグ建設に関わり、山の中で地下に籠もっていた司。
 地上に出てくるのは、レッドラスティネイル達に報告と指示を出すときのみ。
 短い時間でも、彼女達は愛を囁く。
 一応、ありがとうと言う言葉を貰い、でへへとなる。
 会えないストレスは、トワイライトウォーリア達の犠牲により解消されていた。

 その他の人物とは、明確に差が付けられていた。
 千尋はかわいい妹だが、守秘義務が優先される。

 当然だが、家族にだってそんな感じなのに、ただの友人である桜たちに情報は降りてこない。

 現世に帰って来て、横並びだった知り合いに、明確なる差が出始めた。
 それは、司しかわかり得ないものだが……

「きっと何か知っているわよね。お父さんの首でも絞めようかしら?」
 最近の父親からの言葉は、司から引き離すことばかり……
 桜の中で、奇妙な殺意が浮かび始める。

 山瀬の背後から、殺気を纏う娘がやって来る。
 久々に見せた、娘の笑顔は狂気によるもの。
 喜んでいる場合じゃ無い。逃げろ。
 彼女の握力は、すでに百五十キロを超えているんだぁ……

 その数秒後、彼は熱い抱擁だと言ったのだが、娘からのベアハッグで肋骨に数本ヒビを入れて発見された。
 かれは、その熱い抱擁にも、秘密は喋らなかった様だ。
 発見をした妻によると、奇妙で気持ち悪く、最悪な笑みを浮かべて倒れていたとか……
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