ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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迫り来る脅威

第122話 にじみ出るもの

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「上空、第三探査部隊の船から何か小さな物が…… 速い、加速しています。総員…… ええい」
 彼は焦りながらボタンを押す。

 艦内に、突如警報が鳴り響く。

「なんだ。何があった?」
「不明。ですが、上空にいる第三探査部隊の船から、何か小さな物が外れました。当艦に到着します」
「シールドは展開されている。だいじょ……」
 その時、音が消えた……

 この星の管理拠点となっている、第五探査部隊旗艦ハルファスに何かがぶつかる。
 それは小さな鉄の球のようだが、魔法の無効化が付与された危険な物。

 成層圏外から加速されて撃ち出され、さらに重力に引かれて加速。
 外殻は摩擦により赤化。
 その凶悪な砲丸程度の物体は船を突き抜けて、直下の地表上面を破壊。
 そのせいで、震度七を越える地震が観測された。

 ハルファスは第三探査部隊旗艦マルファスと同じく、全長は一キロもある大型艦なのだが、その物体は船のCDCにあたる、戦闘指揮所を完全にぶち抜き破壊をした。艦は中央からへし折れて、燃え始める。


 その衝撃と音、そして地震により、獣王国の王都ウービハビタにまで、その衝撃波はやって来た。

「うぬう。何があった?」
 現獣王の王座に座るのは、第五探査部隊白兵戦部隊隊長、シェムハザ・フェドライ上級大尉である。

 この都市は、十年に一度、獣王戦が行われ、流した血の多さから深紅の都と呼ばれる。

 開催期間中ではなかったのだが、彼は王城に乗り込み、素手で獣王を倒したため、王座を手に入れた。

「不明です」
 獣人の宰相、トラ族イグナーツ・モティチュカは慌てふためく。

 そこに、兵が走って来る。
「どうした? 緊急事態か?」
「隊長。旗艦からの信号が途絶しました」
「なにぃ? 原因は」
「はっ。不明です」
「調査しろ。先ほどの地震…… 何か天災か?」
 この、王都ウービハビタの近くには、湯治用の温泉がある。
 
 火山帯にあるこの近郊なら、どこが噴火をしてもおかしくはないのだ。
「はっ。部隊を向かわせます」

 部隊を向かわせるとは言ったものの、旗艦は直線で二十キロほどの距離にある盆地に停泊をしていたのだ。

 王城の窓から覗くと、遠方で煙が盛大に上がっている。

「完全に終わったな。何かミスってエネルギー解放でもあったのか?」
 旗艦を含めて、艦内には小型のプラズマ融合炉が搭載されている。
 真空の器に強力な磁力線を張り巡らせて、水素原子を炉内に留めて核反応をさせている。
 その制御が異常をきたして発生する事故は、数百年前には結構起こっていた。
 だが今の技術で、それは起こることなどなくなっていた。

「まあ機械は機械。何かがあってもおかしくはないか」
 ぼやきながら、白兵戦部隊副官シェムハザ・マサジーク上級中尉は、部下達の詰め所に向かう。

 城の一角を彼等は占拠していたのだが、訓練以外はすっかり怠惰で淫蕩な生活を送っていた。
 酒と女。
 それが簡単に手に入る。

 最も女性は、同僚ではなく獣人達。

 虎やライオンなどの肉食獣系種族はプライドが高く、決して屈しない。
 だが、無手での戦闘に勝てば、強いオスと認められて、意外と従順になるのが彼等にとっては楽しかったようだ。

 そう、彼女達は、クッコロ属性を持っている。
 口では否定するのだが、負けるとコロッと……

 まあ良い。
 とにかく、控え室は酒や淫靡な匂いが充満をしている。

「野郎ども。仕事だ。旗艦が沈んだ」
 その瞬間に、たるんだ雰囲気が一変する。

「本当ですか? 原因は?」
「馬鹿野郎。それを調査せよと王がご所望だ。酔いを覚ましていくぞ」
「「「「「へぃ」」」」」

 彼等は先ほどの雰囲気とはうって変わり、一気に戦闘モードへと切り替わる。

「行ってくるぜ」
「ご武運を」
 銘々めいめいが、自分の彼女達と別れの挨拶をする。

「ちょっと偵察に行くだけだ。すぐに帰ってくる」
 ここに居るのは准士官達
 一兵卒は、日々市井しせいの人々を管理している。

 笑顔で出ていく彼等。

 ライオン族のフアナ・アトラスは十七歳。
 アトラス家は名門で、獅子に連なる家系である。

 ライオン種族の強者上位は、獅子と呼ばれる。
 彼女の家は、幾度も獣王を排出をした名門である。

 未だに、喜んで彼等にしたがっているわけでは無いのだが、彼等は強くて意外と優しい。
 家に居て、家のために物の様に扱われていたときよりも、気楽ではある。

 貴族の娘に自由はない。
 強きオスに嫁ぎ、子をなすのが至上の命題だったのだ。

「この生活はそこそこ気に入っているの。死なないでね、イジドール・クーベル准尉…… 様」

 彼等が部屋を出ると、彼女達の目は冷たい光りを発する。
 外からのわずかな灯りに反応をして、肉食獣の特徴である赤い光りが、薄暗い部屋に幾つも浮かび上がる……


 ―― その少し前。
「意外と強力だな」
「そうね。射出と星の引力が結構効くみたいね」
 結衣と稲垣いながき 弥生やよい秋山あきやま 真優まゆなどがモニターを見ながら唖然とする。
 外殻に強度があったためか、ベコンとへこみ、弾着点を中心に機体が折れた。

 稲垣と秋山はお忘れだろうが、自衛隊員で初期ダンジョンブートキャンプメンバーだ。
 急遽作られた、宇宙対策部隊に配属されてここに来ている。

 全員が、司が安易に押したボタンの威力に焦っている。
「あのでかい船。何人乗っていたかなぁ」
「話しによると、第三探査部隊旗艦だと、資源獲得のために空荷で百人程度しか乗っていなかったと聞いたぞ」
「だけど、停泊をして本部となっていた可能性は?」
「あるけれど、そんな事は考えるな」
「そうだな」
 彼等自衛隊員と対照的に、下降準備と攻撃拠点を嬉しそうに決める司達との間には、明確な表情の差があった。

 まだ彼等は、命の取り合いに慣れていない。
 そこに至るには、地獄を数回くぐらなければ無理だろう。
 特訓は、所詮訓練である。
 多少甘えが残るようだ。
 
「さあ、着陸するぞ」
 嬉しそうな司の声が聞こえる。

 だがその膝では、うさ耳娘マリソルの泣いている姿があり、司の笑顔には狂気を少し含んでいた。
「泣くな。きっと大丈夫だろ」
 王都には彼女の親兄弟が居る。
 司は彼女を慰める。
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