ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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迫り来る脅威

第125話 始まり

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 マリソルの実家は、いわゆるスラムに近いところにあった。

 表通りから奥へ入り込み、さらにその奥は壁に沿ってモンスターなどの襲撃に備えて戦闘用の緩衝地帯がある。
 その空間に掘っ立て小屋が建てられて、勝手に住んでいた。

 無論有事の時には、有無を言わさず壊される場所だ。

 その一歩手前。
 だが、作りは粗末で、適当な板が打ちつけられて隙間だらけ。

 だが、適度な採光と、空気循環は良さそうな家。

 彼女によりドアが開けられて、日の光が入り込むと、その奥に固まったものから、向けられる視線。
「まさか、マリソルなのかい?」
「うん。皆は?」
 彼女は家の中を見回す。

 奥に固まっていたのは、母親と小さな妹と弟。
 本来なら、この家の中には、父レーヴィ、母ピリッタ。
 そして、長兄アンット、次兄ルーヌ、長女アルマ、三女妹リーナ、三男弟ニクラス、四女カティ、四男ノルディが居たはずなのだ。その八人姉弟の中で、次女であるマリソル。

 そう、兎人系の子だくさん……
 生活は苦しいが、楽しい家だった。

「皆、連れて行かれちゃったのよ」
 話しを聞けば、マリソルが攫われた頃、悲劇は起こった。
 マリソルだけではなく、目に付く者達は攫われたのだ。

「じゃあ皆は?」
「判らないの……」
 お母さんは、首をゆっくりと振る。

「マリソル。土産をやれ」
 司から声が掛かる。

「あっそうだ」
 ガサゴソと、ものが取り出される。
 地球産の食い物。
 レトルトを中心に、野菜などは、真空パックをしてある。
 常温で日持ちをする様にしたもの。

 生のニンジンは囓らないらしい。
 マリソルにより食べ物はチェックした。
 最初に兎ならこれを食うかと言う感じで渡した。
 だが、喜んだのだがそれだけだった。
「食わないのか?」
 そう聞いたら怒られた。
「野生の兎じゃああるまいし」
 そんな事を言われた記憶。
 兎系だが兎ではないらしい。
 司は、マヨネーズをつけて食っていたのだが……
 
 この世界は自然農法。
 生で囓ると色々と病気になるようだ。
 
「これは全部、お湯を沸かして、暖めれば食べられるから」
「それは、食べ物なのかい? ならこの子達に。もう三日も……」
「どうし……」
 そう言いかけて、現状をなんとなく察する。
 家長である父は居なくて、母は小さな二人を抱えて、何ができようか。

「うん。ちょっと待って」
 マリソルは台所を見るのだが、薪も炭もない。
「司さん。魔導コンロをください」
「いや、それより」
 家の中を見回して提案をする。

「他の家族にはメモを残して行こう。船に戻るか」
「わっ。良いんですか?」
「ああ。ここで暮らすより良いだろう」
 彼女は、母親に説明をする。

「この人は、私をあいつらから救ってくれたご主人様なの。一緒に行こう」
「そんな事…… はっ? 私まで、手込めに?」
「「「「「だめえぇ」」」」」
 勘違いは大音量に封じられる。

「私もまだお情けを貰ってないのに」
「おや、そうなのかい。変わっているねえ」
 獣人にはどうやら色々な種族がいるから、司達を見ても禁忌感はないようだ。

 とりあえず、兵糧として配給のサンドイッチを配り、食べて貰う。
「これは美味しいね。それに、この甘い飲み物」
「まだあるから、ゆっくり食え」
「あんた。いい男だね」
 どうやら、食い物で簡単に釣られたようだ。

 装甲車に乗り帰ろうとするが、どうやら囲まれてしまっていた。
「一斉射。そうだな。とりあえず住民の開放するぞ」
 無線で連絡が通達される。

 装甲車が動き出して、いきなり発砲。
 周りを囲んでいた兵達は、散らばり逃げて行く。
「撃て撃て撃て」
 第三探査部隊の連中は司に認めて貰うためか異様に張り切り、自衛隊はかなり躊躇しながら撃つ。

 すべて税金というイメージがあるのか、弾を節約しているようだ。
 無論相手が生身という躊躇もあるのだろう。

 そうして蹴散らしていると、ロボットもどきがやって来た。
 白兵用パワードスーツ。

「あいつらだな」
 隊長である、シェムハザ・フェドライ上級大尉は、敵の姿をその目に捕らえて、気合いを入れる。

 装甲をぶち抜ける戦斧に、魔力を通す。
 これにより、人間など豆腐のように切り裂ける。
 この地に来て、どれだけの相手を獲物にしたのか。
 泣き叫ぶ相手を追いかけ回し、切り刻んできた。

 今の相手は箱の中にいるが、数発で装甲は削れるだろう。
 彼はそう思っていた。

「撃て」
 その様子を見ていたのだが、司は容赦などしない。

 だが、矢の直撃でも効かないらしい。
「どうするか……」
 主砲の方を使おうとするのだが、司は出て行ってしまう。
「撃ち方やめ。ちょっと出てくる」
「司さん」
「多分。大丈夫だ」
 目の前にいるロボットもどき。
 腕章が付いているのが、多分隊長なのだろう。

「うりゃ」
 司はしずかに動き始める。
 それはひどくゆっくりとした動きだったのだが、その直後には肉薄をして、身体強化と魔力を纏わして拳を振るう。

「ゴンッ」
 そんな音がして、装甲の腹部に大きなへこみができる。
 後方にいた兵達も巻き込み、吹っ飛んでいく。

 殴られたシェムハザ・フェドライ上級大尉には何が起こったのか判らなかった。

 確かに十数メートル先に立っていた男。
 それが一瞬の間に距離を詰めて、次の瞬間には衝撃が来ていた。
 彼は知らなかった。
 パワードスーツの性能。
 目の前にいる男は、生身でその性能を持つことを。

 富士の演習場で、戦車三台を相手に遊んだ男。

 おかしな様子に、出てきた獣人達の目の前で、その非常識な光景が繰り広げられた。

 歓声が沸き上がる。

「ええいナニをしている。あいつをなんとかしろ」
 隊長があげたその声が、自分たちが蹂躙される合図となった。
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