ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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迫り来る脅威

第127話 止まらない流れ

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 ―― 時は少し戻る。
 
 司は悩んでいた。
 見かけでワクワクしながら出てきたのだが、思ったより遅いし弱い。

 強さ的には、結衣達のトレーニングに丁度良さそうなのだが、中身は人間。
 なるべく彼女達に、人殺しはさせたくないと考えていた。
 ダンジョンのモンスターとは違い、煙となって消えない。
 れっきとした生き物なのだ。

 司本人は、アレッとおもっとたときには殺してしまっていたし、仕方ないや敵だからと割り切った。
 葛藤がなかった訳ではないのだが、シンから気にするなと言われて気にしないことにした。

 そして、こいつらには、明確な攻撃の意思がある。
 だから、武器を破壊して手足を壊した。
 本当なら胸部を叩き潰して、即死もさせることができるのだが、躊躇する。

 少しの良心が顔を出す。
 だが周りの獣人達は違う。
 積もり積もった怒りに身を任せて、たこ殴りをしている。
 木の棒では役に立たないだろうが、シールドを張っているユニットも、その内エネルギー切れになるだろう。
 そうなれば、彼等の攻撃も届くようになるだろう。

 獣人達は獣人達で、どれだけ殴っても壊れないスーツに苛立ちながら、素手でそれを壊していく司が気になっていた。

「おい、あいつ何者だ?」
「見た目は猿人系だな」
「そうなのか?」
「ああ、耳を見ろよ」
「そう言えばそうだな」
 普段気にしないのだが、オランウータンやゴリラなどは、人間と同じ感じの耳をしている。
 チンパンジーなどは、もっと大きく耳が良い。

 獣人達が猿人系だと判断をするのも仕方が無いだろう。

「そう言えば昔、伝承があったな」
「なんだ?」
「猿人系で月を見ると、凶悪になるとかだったともう」
「そんなのが居たのか」
「ああ。嘘か誠か尻尾を切れば弱くなるらしい」
「へぇ」
 そんな話をしながら、倒れたスーツを殴る連中は数が増えていく。
 鍛冶用の、金槌まで出てきた。

 武器となる剣とかは没収されたのだが、武器にできるものは岩でも何でもある。

 彼等は、魔人族達の持っていた武器を鹵獲して、装備を充実していく。
「おっ。撃てたぞ。兵士が手首に巻いている輪っかだ。これをつければ撃てるぞ」
「そうか」
 壊れないスーツ組は後回しにされて、基本装備で転がっている兵達が優先的に狙われるようになる。
 彼等は出血多量で、もうすでに虫の息なのだ。

 獣人達の獲物としても、たやすいものとなっていた。

 プロテクターに銃。
 町民達の装備は充実していく。
 
 少しでも反抗しようとした曹長だろうか? 班長クラスの軍人は首輪を破壊したことで見つかり、殺されて首輪の解除キーまで奪われた。
 
 マリソルの母親や姉弟の分は、司が出会ってすぐに解除したから安心だ。
 近寄って首に手を掛けたとき、妙な雰囲気があったのだが、無視をした。

 いま、装甲車の個室で、マリソルに言われてお風呂に入っているはずだ。
 空間魔法のおかげで、そういう設備は充実している。

 やがて司は、全部のスーツ組を、無力化してしまう。
 その様子に、周りに居た獣人達が歓声を上げる。

 彼等はこの地にいる最高暴力組織が、今この時、潰れた事を理解しているのだ。

『俺達は解放されたぁ』
 それを聞いて、司のほうが悩む。

 念話がやって来て、皆が解放されたと言っていることを、マリソルに伝えられる。
「そうか。それじゃあ帰るか?」
 帰ろうと、装甲車に乗り込もうとしたら止められた。

 口々に何かを叫いている。
「やかましい、ナニを言っているのか判らん。念話で喋れ」
「うわぁ。なんだこれ頭の中に声が?」
「良いから、なんだ?」
「あんた強いな。これで俺達は解放されたが、まだ他の町や鉱山などに仲間が捕まっている助けてくれ」
 そう言ってくるのは、虎か何かのようだが、意外と人なつっこいようでしがみついてくる。

「捕まっている奴らが居るのか? うーん。じゃあ、装備をやろう。ここからあっち。西の方向に十五キロほど行けば黒い船がある。落ち着いたら代表が取りに来てくれ。それと…… マリソル。苗字はなんだった?」
 そう聞くと念話なのに、困った感じが伝わってくる。

「実は苗字がありません。アニタがマルムボリなんていう家名を言うから、つい村の名前を言いました」
「それで村の名前はなんだ?」
「ペーニャ村です。ここからお日様が出る方に、半日ほど行ったところです」
「そうか判った。聞いたか? ペーニャ村の出身者がいたら船まで来るように言っておいてくれ」
「判った伝えるぜ」
 それを聞いた男は、周りにその事を言い触らしているようだ。


 そんな頃、大陸に散らばっていた船達が兵を乗せて、王都のほうへ集まってきていた。

「探査に敵船複数。どうされますか?」
「敵船? 本当に?」
 今この艦で一番偉いのは、航空自衛隊からやって来た丸田まるやま 勇治ゆうじ二尉。海上自衛隊の永野ながの 裕介ゆうすけ二尉と誰がこの部隊において隊長を務めるのかを決めて、艦長は厳正なるじゃんけんの末、丸田がなる事が決まった。当然だが司がいる時にはなんの権限もないのだが、公務で来ている以上何らかの仕事は必要だ。

 初の宇宙軍の船、その運用に対して、一歩を刻むというのは大きいのだ。
 だから各幕僚長の目を見て、統合幕僚長末永すえなが 弦一郎《げんいちろう》陸将は隊長を決めることができず、候補者による勝ち抜き戦が行われた。
 
 つまり一応、立場の違いはあるのだが、現時点で階級差はない。
 なんせ秘密裏に動いている計画、無事に戻ればそれに応じて彼等は昇級を行い、各艦の艦長となることになっている。
 そうなのだ。今は演習中でもある。

「総員。対戦用意」
 司のいない状況であり、皆に緊張が広がる。

「あれもどうせ送り返すんだろ? 落としたらまずくないか?」
 命令を出した後に、忠告をされる。

「えっ? あっそうかな?」
 彼は考えた末、命令を撤回。
 戦闘は避けて船にシールド張り、カムフラージュを行う。
 光学、熱、振動。
 すべてを遮断をして、だんまり状態になる。

 司くん。早く帰ってきてくれぇ。
 そんな事を願いながら。
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