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迫り来る脅威
第129話 導き
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「船が足りないので、兵をすべて乗せなくてもよいでしょう。まだ各地の村や町に残存兵がいます。これを一掃するのに、この兵を使えば良いのです。生き残れば労働に使えます」
自分で壊しておいて、この言い草だ。
前回、プアネタウ・ビィスピリ・タスビビュント星から、魔人族を一掃するために全員を船に乗せて戻したのを非常に勿体なく思っていたラプラス。
今度は残して、この星の役に立たせようと考えていた。
彼等がやっていた事をまるっとやり返す。
搾取側をする側から、される側へと転落させる。
それは、長期で見れば獣人達の利益となる。
ラプラスは、すべての因果を計算をして、効率の良い方法を計算する。
たとえそれが主人の言葉でも逆らう。
無論、さらっと理詰めで納得させる。
この船に乗っている、第三探査部隊にとってはおもしろくはないだろうが気にしない。
かれ? 彼女は細けえことは良いんだよ、べらんめいと我が道を通す。
炭鉱からの脱出者の仲に、マリソルの父レーヴィや長兄アンット。次兄ルーヌまでは居たようだが、長女アルマだけは見つからなかった。
「姉様はかわいいから。私と同じように向こうへ送られたのでは?」
「可能性はあるな。行くか」
そんな感じで予定にはなかった遠征が決まった。
第五探査部隊をおとりに使い、その間に救出作戦をする。
自衛隊の面々は積み上がるストレスで、胃腸薬の消費量がなにげに増えているようだ。
演習では何度もやった。
だがここに来て、日々実戦が繰り返される。
あまりに辛いときには、司先生によるリラクゼーションを受けることにより大分解消される。
「今日は、どうしました?」
「やはり戦闘。敵とはいえ、殺すのはストレスとなります」
真っ白で無機質な面会室。
香なのか、アロマオイルなのか、怪しい香りが充満をしている室内。
黒いフードを目深にかぶり、怪しい雰囲気を纏った司。その脇には亜矢達も同じくゆったりとした修道士の服ハビットを着て笑顔で立っている。
「あなたが辛いのはなぁぜぇ?」
「やはり、殺すのは悪い事だと思いまして、それで……」
隊員の顔は苦痛に歪んで、目は辛さを訴えている。
「そう…… それは、日本の教育が悪いのでぇす。やぁらなければ、あーなた自身。いいえっ、大事な家族までが殺されることになる。戦うのは正義。悪い事ではなあぁいのでーす。自分が自分の身を守る。日本の過剰防衛などというのは、脳みそまで平和に浸かっているぼんくらどもの言い分。それを守っていると、警察が来るまでにはあなたは殺されて、強盗は、シャワーを浴びて、飯食ってお気楽に逃げる事が出来ます。抵抗しなければ殺されないなんて誰が決めたのでしょう? 極めて無責任で適当な言葉」
ふざけていた司の言葉が真面目になる。
「特に、戦時にそんな無責任な言葉に従うことはないんだよ。良いかい。自分を殺しに来ている敵を殺すのは、自分だけでは無く、周りにとっても、ものすごく良いことなんだ。敵対する者はすべて殺せ。ためらえば己自身だけではなく、大事な者が奪われるだけなんだよ」
そこまでは、ゆったりとした口調で語っていた司。
いきなり、雰囲気が変わる。
迷える子羊の肩を、ガシッと掴む。
「良いかい。ためらいは悪。ためらえば大事な者が奪われる。敵はためらわず殺せ!!殺せ!!!殺せぇっ!!!!」
司は言い聞かせるように、力強く彼に言う。
「はい。敵は殺せ!!! 自分の大事な者を守るためにぃ!!!」
彼は右腕を突き上げる。
そこにはすでに辛そうな目は無く、闘志に燃えたモノへと変わっていた。
「そうだ。良い子だ」
司は、彼の頭を撫でながら褒める。
その姿はあふれんばかりの慈愛を持った、聖職者のような微笑みで……
気のせいか、周囲には聖なる光が粒子となって舞い落ちてきていた。
彼は、自身の頭の上にのせられた手が、妖しい光を放っていることを知らない。
「おい、どうだった?」
「うん。あまり覚えていないのだが、師匠の言葉で随分楽になったぞ。やはり愚痴でも良い。辛さを口に出すのは重要だとおっしゃっていた」
「普通の軍隊なら、甘えたことを言うなと言われそうだが、やはり人間、辛さを口に出して共有するのは有効なんだろうなぁ。俺もカウンセリング受けてこようかな」
「おう。行け。下手に我慢をするよりずっと良いぞ」
このせんの…… 司のカウンセリングは意外と好評で、今日もえもの…… 迷える者達がカウンセリング室をノックする。
そして彼等は、何かから解き放たれて、嬉々として任務に励む。
極めてアットホームな部隊は、今日も明るく任務に励む。
そして……
「よし、大体解放も出来たな。それでは王都に住まう諸君。この後は、宰相であるイグナーツ・モティチュカ殿に引き継ぐ。次の獣王の選定と、復興を頑張れ。俺達はちょっと、魔人族の星に行ってくる。獣人達がいるようなら連れて帰ってくるから待っていろ。だそうです。皆さん頑張りましょう」
そんな宣言を、司の代わりにマリソルが読み上げる。
だがその宣言に対して、民衆は拳を突き上げてシュプレヒコールを行う。
「ツーカサ。万歳ぃ!! 救世主。ツーカサぁ!!」
それは、地面が揺れるほどの感情の爆発だった。
彼等に見上げられながら、真っ黒な船、シンハスターはゆっくりと上昇をして、いきなり消えた。
上昇をしていたのだが、速度を上げただけ。
だがその急激な加速で、祝砲のように衝撃波が鳴り響いた。
自分で壊しておいて、この言い草だ。
前回、プアネタウ・ビィスピリ・タスビビュント星から、魔人族を一掃するために全員を船に乗せて戻したのを非常に勿体なく思っていたラプラス。
今度は残して、この星の役に立たせようと考えていた。
彼等がやっていた事をまるっとやり返す。
搾取側をする側から、される側へと転落させる。
それは、長期で見れば獣人達の利益となる。
ラプラスは、すべての因果を計算をして、効率の良い方法を計算する。
たとえそれが主人の言葉でも逆らう。
無論、さらっと理詰めで納得させる。
この船に乗っている、第三探査部隊にとってはおもしろくはないだろうが気にしない。
かれ? 彼女は細けえことは良いんだよ、べらんめいと我が道を通す。
炭鉱からの脱出者の仲に、マリソルの父レーヴィや長兄アンット。次兄ルーヌまでは居たようだが、長女アルマだけは見つからなかった。
「姉様はかわいいから。私と同じように向こうへ送られたのでは?」
「可能性はあるな。行くか」
そんな感じで予定にはなかった遠征が決まった。
第五探査部隊をおとりに使い、その間に救出作戦をする。
自衛隊の面々は積み上がるストレスで、胃腸薬の消費量がなにげに増えているようだ。
演習では何度もやった。
だがここに来て、日々実戦が繰り返される。
あまりに辛いときには、司先生によるリラクゼーションを受けることにより大分解消される。
「今日は、どうしました?」
「やはり戦闘。敵とはいえ、殺すのはストレスとなります」
真っ白で無機質な面会室。
香なのか、アロマオイルなのか、怪しい香りが充満をしている室内。
黒いフードを目深にかぶり、怪しい雰囲気を纏った司。その脇には亜矢達も同じくゆったりとした修道士の服ハビットを着て笑顔で立っている。
「あなたが辛いのはなぁぜぇ?」
「やはり、殺すのは悪い事だと思いまして、それで……」
隊員の顔は苦痛に歪んで、目は辛さを訴えている。
「そう…… それは、日本の教育が悪いのでぇす。やぁらなければ、あーなた自身。いいえっ、大事な家族までが殺されることになる。戦うのは正義。悪い事ではなあぁいのでーす。自分が自分の身を守る。日本の過剰防衛などというのは、脳みそまで平和に浸かっているぼんくらどもの言い分。それを守っていると、警察が来るまでにはあなたは殺されて、強盗は、シャワーを浴びて、飯食ってお気楽に逃げる事が出来ます。抵抗しなければ殺されないなんて誰が決めたのでしょう? 極めて無責任で適当な言葉」
ふざけていた司の言葉が真面目になる。
「特に、戦時にそんな無責任な言葉に従うことはないんだよ。良いかい。自分を殺しに来ている敵を殺すのは、自分だけでは無く、周りにとっても、ものすごく良いことなんだ。敵対する者はすべて殺せ。ためらえば己自身だけではなく、大事な者が奪われるだけなんだよ」
そこまでは、ゆったりとした口調で語っていた司。
いきなり、雰囲気が変わる。
迷える子羊の肩を、ガシッと掴む。
「良いかい。ためらいは悪。ためらえば大事な者が奪われる。敵はためらわず殺せ!!殺せ!!!殺せぇっ!!!!」
司は言い聞かせるように、力強く彼に言う。
「はい。敵は殺せ!!! 自分の大事な者を守るためにぃ!!!」
彼は右腕を突き上げる。
そこにはすでに辛そうな目は無く、闘志に燃えたモノへと変わっていた。
「そうだ。良い子だ」
司は、彼の頭を撫でながら褒める。
その姿はあふれんばかりの慈愛を持った、聖職者のような微笑みで……
気のせいか、周囲には聖なる光が粒子となって舞い落ちてきていた。
彼は、自身の頭の上にのせられた手が、妖しい光を放っていることを知らない。
「おい、どうだった?」
「うん。あまり覚えていないのだが、師匠の言葉で随分楽になったぞ。やはり愚痴でも良い。辛さを口に出すのは重要だとおっしゃっていた」
「普通の軍隊なら、甘えたことを言うなと言われそうだが、やはり人間、辛さを口に出して共有するのは有効なんだろうなぁ。俺もカウンセリング受けてこようかな」
「おう。行け。下手に我慢をするよりずっと良いぞ」
このせんの…… 司のカウンセリングは意外と好評で、今日もえもの…… 迷える者達がカウンセリング室をノックする。
そして彼等は、何かから解き放たれて、嬉々として任務に励む。
極めてアットホームな部隊は、今日も明るく任務に励む。
そして……
「よし、大体解放も出来たな。それでは王都に住まう諸君。この後は、宰相であるイグナーツ・モティチュカ殿に引き継ぐ。次の獣王の選定と、復興を頑張れ。俺達はちょっと、魔人族の星に行ってくる。獣人達がいるようなら連れて帰ってくるから待っていろ。だそうです。皆さん頑張りましょう」
そんな宣言を、司の代わりにマリソルが読み上げる。
だがその宣言に対して、民衆は拳を突き上げてシュプレヒコールを行う。
「ツーカサ。万歳ぃ!! 救世主。ツーカサぁ!!」
それは、地面が揺れるほどの感情の爆発だった。
彼等に見上げられながら、真っ黒な船、シンハスターはゆっくりと上昇をして、いきなり消えた。
上昇をしていたのだが、速度を上げただけ。
だがその急激な加速で、祝砲のように衝撃波が鳴り響いた。
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