ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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迫り来る脅威

第136話 おいー。おいおいおい……

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「とにかく全開だ」
「無理だよ。この車デカいし車高が高い」
「無理でも逃げろぉ」
 司を拉致しようとした思惑が、完全に裏目に出た帝国人。
 この峠道をワンボックスでは辛い。


「ええい。前のデカブツめ。じゃまだ。どけ」
 司教である彼は、落ち着いた様子だが、その背中には汗が滝のように流れていた。
 まさか背後から、別宗派の連中が同じく司を滅しようと来ているとは思わなかった。そして、シンと司が混同されて人物像が読めないのも混乱の始まりだった。
 別グループは、彼のアジトの一つとされている、ラーメン屋に向かっていた。
 彼等の宗派は寄進された富のために装備も豪華である。
 日本では珍しい、装甲車のようなEVに乗っているため、少しは安心をしている。
 通常認可が取れないのだが、何とかしたようだ。



「この地に入った瞬間、怪しい魔物の来襲。やはり神だと語る魔物の類いか」
「言っている場合か、早く前のじゃまな車を抜け」
 後部座席で焦っている男達。
「ランチャーはないのか?」
 助手席から声が掛かる。
「持ち込めるわけが無いだろう。本国とは違うんだ」
 彼等は質素な教会宗派。

 三つの組織が思惑があり、司をマークしていたようだ。

 そして、いち早く脱落をし始めたのは、ワンボックスグループ。
「ぐっ。インにつけねぇ。膨らんでいく……」

「おらぁ、じゃまだ」
 サイバーなトラックは、車の頑丈さとEVならではの加速により、ワンボックスの左後輪付近を軽く押す。

 左コーナーで荷重が抜けていた後輪。
 右後輪の負荷が増えて一気にタイヤはその限界を越える。
 悲鳴にも似た音を発しながら、一気にカーブの外側に膨らんでしまう。
 必死にカウンターを当てると、グリップが急に復活。
该死的ガイ・スー・ダ(ちくしょう)」
 運転手が叫んだ瞬間、そのままコロンと、転がり始めてしまう。

 そう、車高の高い車はインリフトという現象が起こる。
 カーブの内側にある車体が浮いてしまう状況。
 タイヤが滑ればよかったのだが、グリップしたために引っくり返ってしまう。

 哀れ、高級なレンタカーはコロコロと転がり、道路脇にならんでいたタイヤバリヤーに突っ込んでしまう。

「あー、やっちまったかぁ」
 バックミラーで突っ込んだのを確認すると、司は念話で警察に連絡するよう伝える。
 コーナー三つ目でこれだ。

「うん。見ていたけれど、あれ外国人かなぁ。言葉が違うわよ」
「そうなのか? まあ、後二台いるからカメラは追いかけていてくれ。面倒になるからペースカーのポチは写すなよ」
「はーい。杏華。聞いた?」
「判った。しかし、司さん。犬の名前はポチだろうって勝手に呼んでいるけれど、あれ、絶対犬がモデルじゃないよね」
 そう、モンスターに見えるが、基本は番犬として造った魔導具。
 一度見せたら騒ぎになったので秘匿されているのだが、司の感性で強そうな番犬として設計をしたらキメラとなったのだ。

 他にも番犬として、ケルベロス型とか色々とある。
 最近の物騒な世の中。
 小型の物を造り、市販しましょうと職員から提案があった物が、極めて凶悪でかわいくない方向に開発された。

 だが安心してほしい。
 思考回路はラプラスの端末搭載で、決して悪さはしない。
 じゃれるけれど……
 人によっては、一撃で即死状態になるので注意が必要だ。
 

わふおせえ
 目の前に現れた獲物達。
 彼は喜びながら、尻尾を嬉しそうに振る。
 最も振られている尻尾は、怪しく目を赤く光らせる蛇であるのだが。

わうっ?早くも一台離脱か
 すっ飛んでいくミニバン。
 それを横目に駆け抜けて、目の前にいる黒いセダンに肉迫をする。
 レンタル代をケチったのか、日本で台数の多い大衆車だ。

「排気量は一八〇〇ですが、モーターも入っています。キビキビと走りますよ」
 そんな事を営業マンは言っていたのだが、目の前の重そうなEVに追いつけない。
「くそう騙されたか」
 彼等は仕事の特性上、目立たない車を選んだ。
 まさかカーチェイスをすることになるなど、考えていなかったのだ。
 
「ちっ。おせえ。おい、後ろのモンスターをなんとかしろよ。追いついてくるぞ」
「いや、まだ様子見だろう。奴は本気で走っちゃいねえ」
「言っている場合か、撃てよ」
 彼等の教会は世界中にネットワークがあり、ハンドガンは入手していた。
 だがはたして、四五口径の弾が後ろの化け物に効くのだろうか?
 下手に攻撃をして、怒らせた方がまずそうな気がする。
 そんな事を彼は考える。

「いや今は、様子を見ておこう。それより前にいる重そうな車を抜けよ」
 その重そうな車はアメリカ製のため、ヨーロッパ系の彼等はその素性を知らなかったようだ。
 ステンレス製外骨格を持ち、車重は三トンを超えるのだが、その性能はスポーツカー並みなのだ。
 
 窓には防弾ガラスまで入れられている特殊車両。
 全く以て用途の判らない、サイバーなトラックなのだ。

 その様子を、振り返りつつ一瞥をすると、司は無情にもスピードを上げる。
 ここはホームコース。
 あっという間にその姿は消えてしまう。

「げっ。ターゲットが消えたぞ。追いつけよ」
「バイクに車が負けるなど恥だ。掴まっていろよ。少し本気を出す」
 かれは、アクセルを踏み込む。
 驚異的なモーターは、マイクロバス並みの車体を一気に加速する。

 だが……

 テストモデル、X1は普通のバイクではない。
 物理的な物と空力を極めて、その速度限界をたかめている。
 一見すると、カウル内にエンジンが収まっているように見えるのだが、それはケースのみで、中には可動をする重りが入っている。
 重心を低く保ち、そして移動するバラストにより、コーナーでタイヤに掛かる遠心力に対抗をして、コーナリングスピードは常識を越える。

 そして、クリッピングポイントを過ぎた瞬間、タイヤマークを路面にうっすらとつけながら狂ったように加速をして行く。
 このバイク、百キロ程度の車重に二百馬力以上。つまりパワーウエイトレシオは〇・五キログラム・パー・ホースパワーとなり、車を圧倒している。
 数値だけ見るとすごそうだが、近い数字にカワサキのH2Rという市販車がある。

 まあ、普通の人間には振り回せないマシンだが、司だから……
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