不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第2章 冒険者時代

第17話 敵国と対応

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 今居るベルンハルト王国は、南をカルデロン山脈に蓋をされて、北は海。
 西にヒエロニムス王国があり、そこの若い王は、即位したばかりで強国になろうと考える。

 当然不可侵の約定やくじょうは結んでいたが、先王時代。

 国境の村、第四開発区画の村を、偽装をした兵に襲わせる。
 その惨劇は、なるべくむごくしろとの命令に従い行われた。

 ある日、ベルンハルト王国とヒエロニムス王国の国境に兵が現れる。
 無論、ヒエロニムス王国側だ。

「話がある。なぜ我が国へと侵略を仕掛けた。不可侵の約定破られたものだと考えそちらに対して、宣戦を布告する」
「ちょっと待て、いきなりそれはおかしい」
「問答無用」
 そうして国境で、戦闘が始まった。

 その突然すぎる戦闘は、ベルンハルト王国の防衛線を超え、ヒエロニムス王国が雪崩れ込んできた。

 そう、こうなれば、モンスター退治の論功行賞ろんこうこうしょうなどと言っていられない。

「おおい、人数を募集する。戦争だ、もう敵は来ている」
 ギルドマスターが吠える。まただよ……

「おらぁ。やるぜ皆」
 到る所で、気合いが入った声が聞こえる。
 聞けば、戦争で手柄を立てれば、農民でも騎士爵になれるとか。

 立身出世、それは誰しも憧れるものなのだそうだ。

「まあ給料が増えれば嬉しいか、その分仕事は面倒になるのが世の常。どうしよう?」
「えっ行かないの?」
 ヴァレリーが不服そうに見つめてくる。
 お前もか…… とまあ気合いを入れること無く、近くに来たから軽くキスでもしてみる。

 ふおおお、異世界リア充。
 向こうでは、ケッとか言って馬鹿にしていたが、集まる目線。
 癖になるかも。

「何いちゃついているのぉ」
 そうカンターを飛び越え、兵士の持っていた大事そうな紙を振りまきながらベルトーネさんが、走ってきた。

 勢いはそのまま、抱きつかれてキスをされる。
 椅子の脚がミシッといって軋む。
 ヴァレリーよりも長く、それしか考えていない彼女だったが??
 あら、様子からすると、大衆の面前でベルトーネさんいっちゃいました。

 少し抱っこをする。
 この人、いくと立てなくなるんだよね。

「おい、あれ……」
 絶望と、羨望、そして驚愕。
 色々な感情が流れ込んでくる。
 また何か、能力が開いたようだ。

 ざっくりしたものだが、周囲の感情がわかる。
「ベルトーネ大丈夫? 仕事に戻って、頑張って」
「ふわぃ」
 彼女は立ち上がり、ふらふらとカンターへ戻る。
 怒っている兵士は、当然ひとにらみで黙らせる。

 悪いのは、明らかに自分なのに、悪い子だ。

「仕方が無い、やるか」
「うん」
 ヴァレリーが抱きついてくる。

 カウンターの向こうからまた、視線が刺さる。
 そうこの数日、彼女は忙しくて、まともに相手ができていない。
 だって、本気ですると朝起きないんだもの。
「ベルトーネね、今日やしゅむ」
 そんな事を言い始めた。

「ヴァレリーばっかり、ずるーい」
 とかまあ、出会ったときの彼女とは、かなり態度が変わった。
 俺限定のようだが。

 ギルドマスターは、ニヤニヤするだけだし。
 冒険者達は、相変わらず俺に近寄ってこない。

 アルーの一件と、モンスターの氾濫。
 それ以降は、距離がどんどん開いていった。
 淋しい限りだ。
 ヴァレリーを見習って、此処で『皆が距離を取るから、ヨシュート淋しい』とでも言って見たくなる。

 まあさらに、距離を取られる気がするが。

 そこまで馬鹿じゃ無い。
 そして、オッサン達は別だが、さっきのベルトーネを見て、興味を抱いた目が、五つほどこちらに向いてる。

 冒険者の女の子。
 自身を守るため、つよい奴らに身を差しだして守って貰う。
 この世界で生きる知恵。

 多少強くとも、男の筋力そして、人数にはかなわない。
 目をつけられれば、攫われてやられるのみ。
 反抗すれば殺られる。

 ああ、やだやだ。

 そんなことを考えていたら、殺気が漏れ、皆がまた離れる。
 ああやだやだ。

「戦闘に参加するものは、集まれ、名簿を作る」
 兵の横で、ギルドマスターが宣言をする。

 そう、ベルトーネはこれから、代筆業務お疲れ様だ。
 俺は立ち上がり、申告をする。

 それを聞いて、一瞬泣きそうになる、ベルトーネ。
「大丈夫だよ」
 そう言って頭をなでる。

 顔を上げてこちらを見る、ベルトーネの表情で、周囲がザワつく。
 素が出たときの顔。
 ギルドで出すことはまず無いのだが、見せてしまった。

 ザワザワと、周りがし始める。
 幾人か野郎どもが股間を押さえている。
 手を出すことは無いだろうが、一応睨んでおく。

 それだけで、泡を吹きぶったれてしまう。

 どんどん制御ができなくなってきた、その内睨むだけで相手を殺せそうだ。

「おいカウンターを空けろ」
 マスターが、呆れたように言ってくる。
「わるい」
 軽く手を振りカウンターから離れると、ベルトーネがまた立ち上がろうとする。
 それを見て、マスターが睨むと、にらみ返され、両手を顔の横まで上げて後ずさる。

 一瞬の顔の変化。
 少しとろけた女の顔から、一瞬で般若へと変貌。
 般若のままで仕事をするようだ。


 さて、今度は人間か。
「ねえ一度お家に帰ろ」
「ああ、そうだな」
 集合は、明日の夜明け。
 門の前。

 そしてその夜半に帰ってきた、ベルトーネ。
 雪崩れ込むように、ベッドイン。
「行かせたくにゃいの、でも頑張って」
 そう言って、ベッドから見送ろうとする。
「行かなくて良いのか?」
「行きたくにゃい」
 浄化と、治療を行う。
 多分まだ腰が立たないのだろう。

「ほら早く」
 自家製のパンを咥えて、三人は家を飛び出す羽目になった。
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