不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第2章 冒険者時代

第18話 戦争

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 戦争、それは愚かで残酷。

 調子に乗ったヒエロニムス王国は、少しだけそれを知ることになった。
 ちょっと図に乗って攻めてみた。
 それを実行をした結果、彼らは辺境伯領を失ったから。

「ほう、農民だろうが、武器を支給したのか」
 眼前に展開をするヒエロニムス王国軍。

 ずらりと並ぶ盾兵、その後ろに弓兵。
 だが配布用の長槍が準備されている。
 この世界で一般的な配置。

 魔法使いもいるようだし、準備を整えて来たようだ。

「ここは我らの領地、何を持って武を従え踏み込む」
「我が王の意。この土地を明け渡していただこう」
「ふっ、戯れ言を、後悔すればよい」

 そう言って双方が離れる。
 自軍に戻り、定番の矢の打ち合いが始まった。

「魔法を使えるもの、開始してくれ」
 伝令が伝えてくる。

「やってみるか」
 と言っても、周りの連中は小さな火の玉を撃ち出すのみ。
 矢の方が強そうだ。

 川で試した魔法。
 あれ以来まともに使っていないが、まあいい。
 少し前に出て……
「おいい、そこの奴、盾より前に出るなぁ」
 周囲がやかましいが、矢を模して炎で形を作り敵軍へと放つ……

 そう、一発放っただけ。
 そう聞くと卑猥だが、本当にそれだけだったんだ。
 全滅させようとか、オレはそんな事など思っていなかったんだよ。

 矢の形だったそれは、放った瞬間、扇状に広がり、敵の先頭に居た中央三分の一を射貫いた。

 そう入り口は小さいがその中は、消滅をした。

 『うおー』だの『殺れぇ』だの、やかましかった戦場が静かになる。

 飛び交う矢は無くなり、開始五分で戦争は戦争じゃ無くなった。

 そう、敵の状態を確認すると先頭の三分の二はなんとか形が残っている、だが三〇メートルほど奥から誰も居なくなっていた。

 途中に生えていた木々、隠れるのに良さそうだった岩。
 傾斜もあったが、まっすぐに削られ地形が変わっていた。

 そう自軍が有利になるよう、奴らは丘に陣取っていた。

 その丘が無くなった……

 撃った本人も驚く。
「えっいつの間に、俺こんな……」
 本人すら、その非常識さに引いていた。

 確かに、モンスターを倒す度、ヴァレリー達を抱く度に変化することには気が付いていた。

 でもこれは……

「はっ、みんな、いけー…… 敵をのがすなぁ」
 隊長からの命令がかかり、ゆっくりと皆が非常識から覚醒。

 鬨の声を上げながら、皆が走り出す。
 生き残った敵も、状態に気が付き逃げ始める。

 戦場だけでは、褒美となる物が一切鹵獲ろかくできなかったので追いかける。

 逃げて逃げて、追いかけて追いかけて、気が付けば随分、敵国の内まで来た。

 領境なのか、砦の見える丘まで来た。

 そう、緩衝地帯である辺境伯の領地、それをすべて切り取ってしまった。
 その広さは、琵琶湖くらいはあるかもしれない。

 多数の村と、いくつかの町。
 城郭の町だったが、大門が一瞬で消滅をするものだから、相手も防衛のしようが無い。

 結果、ヒエロニムス王国、魔の一週間がここで終了をした。

「なあ、ヨシュート殿、まさか、あの砦消せるとか無いよなぁ」
「いや、いけると思うがまだ行くのか? そのなんだっけ? ヒエロニムス王国を落とすつもりか?」

 レンセンブルク侯爵は、連れてきたわずか三千ほどの兵を見る。

 そう国境で、奴らを追い返すだけのつもりだった。

 連絡は送っているので、背後から、味方は来ているかもしれない。だが、この国境の守備も必要。

「部隊を分けて、残りは引け。すまないが、ヨシュート殿は此処で守備部隊の隊長をたのむ」
「はっ? 俺は平民で貴族でも何でも無いぜ」

「我にも、任命権はある。とりあえず男爵位をそなたに与える」
 そう言って皆の前で、見世物のように叙爵じょしゃくの儀式を行う。

「この、ヨシュート=ヒトーノ男爵が、これから此処の指揮を執る」
 ほら、挨拶をしろと急かされる。

「あー。ヨシュート=ヒトーノ男爵だ。此処で見張りをする。何かがあれば俺を呼べ。まあ、なんだ。気楽にやろう」
「「「「「おおおおおおっ」」」」」
 なんかすごい返事が来た。

「そなたは…… まあ良い。言ったように貴殿が此処の責任者となる。よろしく頼む。私も報告と準備が整えば砦建設を行うからすぐに戻ってくる」
「えーと、承知いたしました」
 うむ。という感じで頷くと侯爵は千人ほど連れて帰っていった。

 主に冒険者達。
 彼らは防衛戦が主契約。
 今はすでに、侵略戦となっている。
 仕切り直すらしい。

 当然のように、ヴァレリーは残った。
「うふっ、あたいが貴族夫人。ぢゅふふふふっ」
 少し壊れたが。

 テントを張り、宿泊。
 敵を見張る。

 昼夜関係なく、五人ほどにチームを分け二〇メートル間隔くらいでジグザグに配置をする。

 さすがに、見張りを一所に固めるほどバカじゃ無い。

 敵襲は、右手を挙げる。
 それだけ決めた。その連絡は俺にくる。

 だけど俺は、昼間寝て、夜はヴァレリーと楽しみながら、探査を使い続ける事になる。

 幾度か敵襲の報により、兵に行為を見られて、おれは呪術使いと恐れられることになる。

 そうあれは、深夜のこと、北側に回り込み後背を突こうとした動きを察知。

「誰か居るか」
「はっ。失礼いたします」
 ヴァレリーと繋がったままだが、俺はあぐらをかきその上に乗せていた。

 いい加減見られたので慣れたため、そのまま命令をする。
「敵だ、北側を回り込み、三〇人ほどが後背を突くつもりらしい。対処しろ」
 だが珍しく、固まっていた兵。

「何をしている早く対処しろ」
「はっ、失礼しました」

「なんだよアイツ、今更」
 そう俺付きになった、副官ロニー=ウィル、騎士爵だ。
 最初もろに見られたので、今は入り口に向かいヴァレリーの背中しか見えないようにしている。

「おそろしい。俺はきっと見てはいけない物を見てしまった」
 そう、ろうそくの明かりの中、ヴァレリー様は、ヨシュート様に抱えられ、白目をむき、仰け反っていた。
 万歳をして、髪は重力により立ち上がり、口からは、白い液体を吹きだして全身が痙攣をしていた。
「かはっ。ああああ」
 そう、それは、地の底から響くような、声ともいえない声。

「テントの中にいるのに、敵の位置を知るとは。恐ろしい……」
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