不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第3章 貴族兼教祖時代

第28話 得をするもの

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「申し訳ありませぬ」
 王が頭を下げた。
 ただ、顔は悔しそう。

 だけど教団は、他の各国にも根を張っており、経済的な影響も大きい。
 今回その教団が、俺を神だと発表をした。
 それはありがたいことだが、彼が男爵位? 王は見る目が無いとか、意図的な冷遇ではとまで言われ始めた。

 この噂を広めたのは、横に立っている奴のような気がしないでもない。
 こいついつの間にか、教団を顎で使っているんだよな。

 多分そっちから、突き上げをしたんだろう。

「王国では、公爵相当のルーク光をもたらすものと言う役職を作りました。ヨシュート=ヒトーノ様一代限りですが、お子に力が引き継がれるのであれば、王国では祀り保護を行います。ですので、このまま我が国で生活をしていただきたいと望みます」

 意外とこの世界、信仰心が強い。
 王が即位したときも、神の名を以て王冠をかぶせるらしい。
 今までは、各国に教会があり、大司教が一人存在をする。

 ただまあ、真の神教国の教皇が、現人神はベルンハルト王国にあり、などと宣伝したから、ひょっとすると代理ではなく、本人に戴冠を行ってもらいに来るかもしれない。するとまあ、国として、その影響はかなり大きくなる。

 王だって、頭くらい下げるだろう。

 ただし……
「ふざけるなあぁ、このエセ神がぁ」
 そう、こんな奴が出るのだよ。

 王に付いていた、近衛の一人が、隠し持っていたナイフを持って斬りかかってくる。
 椅子を飛び越えるとき、王を踏んだけど良いのか?

 光の物理干渉シールドを展開をする。
 厚みは一センチくらいだが、この内側空間では時間が止まっている。
 つまり、どんな物理攻撃も抜けてこられない。
「ぬっ、面妖な?」

 その兄ちゃん、小脇から今度は吹き矢。
 王は相変わらず踏まれている。

 ただまあ、吹き矢も止まる。
 シールドで捕まえているから、引っ張る。
 ナイフを放せば良いのに、くっ付いてこちらに飛んでくる。

 彼にそっと手を当て、久々の魔導回路封じ。
「カハッ…… なんだこれは……」

「誰の命令かな?」
「言うものかぁ」
 頑張るから、皮膚の感覚を刺激する。

 これは意外と気持ちが良いらしいけれど、少し変えると、皮下を虫でも這いずる感覚に変えられる。

 ヴァレリーはお肌すりすりモードが好きで、ベルトーネは軽く爪を当て擦り上げる感覚が好きなようだ。

 無論今ここにいる彼は、全身を虫が這いずるモード。

「うわあぁぁ」
 叫びながら転がり回る。
 自己暗示なのか、皮膚の表面にみみずばれができていく。

「教えてくれないか?」
「言うものかぁ」
「意外と強情だな……」

 少しかれを見ながら考える。
 こんなに必死なのは、なぜなんだろう?

「ええい、言わぬか痴れ者め」
 ロニーが蹴ろうとするので止める。

「彼は本物の近衛ですよね」
 踏まれたのが結構痛かったようだ。
 王に癒やしの光を当てる。

「ああ。そうです。まだ若いが実力もあり買っていたのだが」
「理由に心当たりはありませんか?」
「いや、思い当たらない」
 もう本当に…… 申し訳なさそうに、王はうなだれる。

「あっ、ひょっとすると」
 今まで驚きで固まってしまい、動けなかった近衛の一人が口を開く。

「妹さんが、病気とかで、少し前に走り回っていました」
「妹さんが、病気?」
 そういうとまあ、何かあると自ら宣言をするように、彼が呻く。

「妹に、何かあってみろ、貴様を殺す。うがっ」
 とうとう、彼はロニーに顔を踏まれた。

「妹さんと、私にどういう繋がりが?」
 素朴な疑問だが聞いてみる。

「おっおまえが、妹に呪いを……」
 苦しいだろうに、睨み付けてくる。

「はっ? 君が誰かも知らないのに?」
 そんなに睨んでも、本当だよ。君など、さっきまで知らなかった。

「嘘をつくな。妹がおかしくなったのは、今回の任務を受けたときだ」
 ガハッと血まで吐いた。暗示ってすごいな。

「それでどうして、オレが君の妹さんを害すんだ?」
「そんな事は知らん」
 だろうなぁ。

「私も知らん。どこからどう考えてもおかしいだろう」
 まあどう考えても、理由や繋がり、そんなものは何も分からない。

 周りがザワつく。
「そうだよな。呪いってどんな感じなんだ?」
「ハッキリとは言ってくれぬ。だが、下腹に違和感があり、できものが出ていたようだが、とうとう湿疹が体中に広がったのだ」

 うん、その症状、聞いたことがあるでござる。
 有名な『先生、ペニシリンでございます』が効く奴だな。
 日本でも、観光客が増えるにつれ、この十年で九倍近くに広がって居た奴だ。

「妹さん、結婚は?」
「しておらん」
「複数の男と関係は?」
 そう聞くと、気丈に睨み付けてくる。
 驚くほどの精神力。
 流石に近衛兵。

「そんなもの、するわけないだろうが……」
 ちょっと話がしやすいように、症状を弱めたら、元気だこと。

「妹さん、名前は?」
「ジュリアだ」
「そう俺は妹さんの名前さえ知らないんだ。無論顔も。そんなので呪いってかけられるのか?」
「知らん」
 だめだこいつ……

 そこに爆弾が、投げ込まれる。
「ジュリア? 十七歳くらいの?」
「うん? あんた知り合いか?」
 一緒に来ていた、近衛の一人。

「知り合いというか、有名人だからなぁ」
「「「有名人?」」」
「言われてみれば、礼儀正しいから。そうかお前の妹だったのか」
 そう言ってニヤニヤし始める。

 そして彼は説明を始める。
 「わたくしは、ウォーレス=ライルズと申すもの。お見知りおきをよろしくお願いいたします。でだ、アラン。お前の妹は、よくかかる病、双方共にな」
「なんだそれは?」
 アラン君。起き上がろうとしたから、ロニーに背中を踏まれた。

「おそらくだが、夜中に家を抜け出し、結婚をする前に自由な時間を満喫。そう貴族のお嬢さん方がハマるあれだよ。お前だって、学園の時に幾人か相手にしただろう」
「そのようなこと……」
 思い当たるようだ…… 目が壮絶に泳ぐ。

 ちょっと割り込む。
「もし。俺が思っている病気なら、早く治さないと大変なことになるぞ」
 少し譲歩と脅し。どうなるのか……

「しかし、あの病気は診れば分かる。誰が呪いなどと……」
 ウォーレス君は知っているようだ。
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