不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第4章 大陸統一に向けて

第38話 進軍

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 とりあえず、あったことを説明するため、王に連絡。

 状態の説明と最後の文言。
「我思うところあり。ヒエロニムス王国、王族を殲滅す」
 当然それを受けて、国王アレクサンデル=エーヴァストはパニック。

 教会側に行くと、もうヨシュートは居なかった。
「ええい。本人が出撃とは。立場を考えてくれ」
 ぼやきながら、王は走り回ることになる。

「やっぱり外がいいな」
 もう、馬車に入れなくなったユキ。
 併走しながら嬉しそうだ。

 今は一日に二回散歩に出ているが、一日に牛一頭くらい餌がいる。

 まあ外に出て、行って来いと言うだけで、口元を血だらけにして帰ってくる。
 冒険者のじゃまはするなと、言いくるめてあるので大丈夫だろう。

 犬だと思っていたが、フェンリルとか言う種類だとか。
 こちらの世界、色々が俺の知っている常識から外れているようだ。

 皆が勝手に呼び出したヨシュートオピディウム、その名前が定着をしてしまった、まあ国境の町へ到着をすると、もう準備はできていた。

 この世界の戦争だと少ないが、三千程度の兵。
 うちの武装だし、まあ大丈夫だろう。
 魔導砲もある。

 全面戦争ではなく、王族の捕縛。
 または殲滅。
 周りにちょっかいを出さなければそれで良い。

「さあ、それでは行くか」
 そう言って、軽いのりで侵攻が始まった。


「大変です。ベルンハルト王国が進軍をしてきました」
「なに? 勝って増長をしたか。腰抜けの王め。防戦準備、侵攻経路で陣を張れ」
 そう王は、命令を出した。

 だがその裏で、暗躍が始まる。
「ベルンハルト王国は、王達、侵略推進派を討伐をしに来るらしい」
「なに? では王と王太子の一派さえ差し出せば止まるのか」
「ええそうです」
 幾度かベルンハルト王国と戦った者達は、その恐ろしさを知っている。

 あそことは、戦ってはいけない。
 一部では常識となっていた。

 出撃準備のどさくさの中、王を捕まえその後の治世と賠償、その話し合いと計画が進み、神輿として、第二王子インテリジーノが決められる。
 まだ、十一歳だが人の良さと聡明さは定評がある。
 王妃に似たのであろう。

 王妃は、その美しさと聡明さを持っていたが為に、王による権限と謀略で結婚させられた。

 そうその悲しき運命は、吟遊詩人達がそれと分からない様に歌っている。

 その美しき姫は、幼きよりの婚約者と引き裂かれ、暴漢の手ヘと落ちた。
 その愛しき男を奪ったその手に……

 歌の通り、婚約者の家は、濡れ衣で潰され処刑された。
 悲しみの中、強引に進む婚儀、そして……

 子どもは愛おしく、かわいかった。
 だが、第一王子は幼いときに引き離され、王となるために教育された。

 そう、歪んだ帝王学。

 情など必要ない、女など卑下する存在。
 同様に、我が国以外の国は蛮族。
 政略をして道具として、有能であればよい。
 そんな教育を子供の頃から受けて、すっかり歪んでしまった。

 その代わりと言ってはなんだが、第二王子は死守した。
 手元でやさしく健やかに育てた。

 その甲斐があって、周囲からの評判も良い。

 王太子は、感情のない傀儡。
 いつしか、そんな事を囁かれることになっていた。

 そして、歪んだせいか、残虐性をもつ。
 それは父親である王も知らなかった。


「なんかさあ、抵抗が少ないね」
「楽で良いですな」
 副官ロニーはご機嫌だ。

 町の近くで、敵軍にあう。
「やあやあ我こそは……」
 そう言って向かい合うが、説明をすると、道が開く。

「お通りください、応援をします。バンザーイバンザーイ」
 とまあそんな感じ。

 王なのに、どれだけ嫌われているんだ?
 たぶん、こちらの兵皆が思っていただろう。

 場所によっては、なけなしとも思える食料まで出そうとしたところがあった。

 そう国内、度重なる出兵。
 そのたびに、人も食料も徴収される。

 労働力もなく、荒れた畑。
 当然収量も少なくなる。
 この国は、周りにも迷惑をかけたが、自国の民すら殺しにかかっていた。

 欲望を満たすためだけに突き進む暴君。

「俺も気を付けないといかんなぁ……」
 思わず口をつく。
「何を仰います。あなたは素晴らしい。たとえ一兵になっても喜んで命を捧げます」
 キラキラした目で、ロニーが言ってくる。
 なんだろう。最近こいつが怖い。

 ただ思い返すと、他の皆もそんな時がある。
 与えられた力やばすぎだろ。

 段々自分で怖くなる。
 前世と違う生活。充実もしているし、皆が頼ってくれる。
 当然嬉しい。

 でも…… その中に狂気が見え隠れをする。
 戦争だというのに、当然のようにそばにいる女の子達。
 まあ強いけどね。

 そう、ヨシュートの寵愛を受けると、能力を得られ、体のリミッターが外れる。
 それは、バーサーカーというかアマゾネスの様に力を発揮できる。

 うふふとか微笑みながら、その手を血に染めることができるだろう。

 つい見つめると、こてんと頭をひねるベルトーネ。
 かわいい彼女だが、俺に対して敵対するものや、じゃまをするものに対しては容赦ない。

 彼女のパンチを受けると、銀河の果てまで相手は飛んで行く。
 そう、ただのコークスクリューパンチなのに。

 むかし、コマーシャルで見たボクシング漫画の主人公のようだ。
 神の力…… そうだな、あまり変わらんか。


 その頃、急遽力を集めて、第二王子の勢力が動き始めた。
「王を捕まえる、もしくは、倒し、王印を手に入れろ」
「王太子はどうなさいます?」
「ふむ。後々が面倒だ殺せ」
「御意に」
 闇夜のなか、町中に兵達が散らばっていく。
 騒乱は始まってしまった……
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