不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

文字の大きさ
39 / 135
第4章 大陸統一に向けて

第39話 水は低きに流れる

しおりを挟む
「こっちだ」
「ちっ、王太子こちらへ」
「父上は?」
「もう捕まりました。急いで」

 そう、夜中に突然始まった騒ぎ。
 王族に対して、臣下がいきなり牙をむいた。

 今まで従順だった者達が、剣を抜き追いかけてくる。

 あっという間に、父上も母上も捕まったようだ。
 ええい不甲斐ない。

 家庭教師だった卿に連れられ、城の抜け穴をひた走る。
 入り口は潰したから、すぐには来ないだろう。

 城の外へ出ると、用意されていた馬に乗り、暗い森の中へ入っていく。

 いくつか存在するセーフハウス。
 一見すると、猟師小屋。
 だがその地下には、王族が潜む為の施設がある。

「状態は知らせよ」
「はっ」
 幾人かの兵が、城へと戻る。


「おい閉じたか?」
「はい、出られないはずです」
「それで良い。後はベルンハルト王国の方が来られたときに沙汰をしていただこう」
 そう彼らは、最初王太子など殺してしまえと考えていた。

 だが、責任を取るものは、多い方が良いのではないかと考え直した。
 死体を並べておいても良かったのだが、まあ、生きていればそれを吊るすことで、多少は怒りを静めてくれるだろうと考えた。
 そうあくまでも、彼らは、この世界の常識で物事を考える。


 ヨシュート達は、労することなく王都へとやって来る。

 そこでは、迎える準備が出来上がり、国の重要な役職に就く者達が出迎えていた。

 ベルンハルト王国軍を見ると、一斉に頭を下げ迎える。

「どういう事かな?」
「見ての通り、戦わずにして、あなた様に従うことを選択をしたのでしょう」
 ロニーはそう言って嬉しそう。

 実際、一人我らの元にやって来る。

「遠路、お疲れ様です。我が国において好き勝手を行い、滅亡への道を進めてきた王達を捕らえてあります。ぜひ、さばきをお願いいたします」
 そう言われて、俺達は王都へと足を踏み入れる。

 中央の大通りには、住民が並び俺達を歓迎する。

 その感嘆の声が、うねりとなって聞こえる。

「ベルンハルト王国、ばんざーい」
 そんな声ばかり。

 どう考えてもおかしな雰囲気。
 敵国を歓迎。

「噂が、流れておるそうです。交易で、ヨシュートオピディウムを訪れ、その商人が自国で吹聴し噂が広がる。その結果がこれです」
 そう言って、ロニーは手を振る。

 確かに、大きな町だが、建物は妙に煤け、細い通りはゴミ捨て場状態。
 いやな匂いも立ちこめている。

 そのままゆっくりと、城へと入る。

 ずっと兵達は両側で並んで、俺達を迎え入れる。
 泣いている者までいる。

 上階へ上がっていくと、王妃様がお迎え。
 礼を取ろうとして、ロニー達に止められる。

「こっちが上です、向こうに礼を取らせてください」
 そう言ってそのまま、謁見の間でひな壇に上がっていく。

 椅子にすわり見下ろす。
 手を上げると、部屋内が静かになる。
 そう、慣れないオレはおっかなびっくりだが、無理を通す。
 ストレスで禿げそうだ……

 だが、挨拶をしようとして、困る。
 帝となったが、まだ国名を定めていない。
「真の神教国並びにベルンハルト王国連合共和国、帝のヨシュートだ。皆ご苦労だった」
 適当に国名を名乗る。
 あっ、一国忘れた。まあいい。

 先ほどの、王妃様が出てくる。
 俺に一礼した後、報告をしてくる。

「帝様自ら、玉体をお運びいただきまして、ありがとうございます。我が国を私物化して、他国にまでご迷惑をおかけした者達。まことに勝手ながら、こちらで捕らえております」

 そう言った後、宰相ではなく近衛だろうか、頭を下げると捕まえている人名を読み上げる。

 王から始まり、宰相とか軍務卿その他色々主立った者達の名前が読み上げられる。

 こうして聞くと、王の忠臣達が根こそぎのようだ。
 まあ内部の人間が調べて、捕まえたんだ。抜かりはないだろう。

 まあそんな、式典のようなものが終わる。
「ご苦労だった、その者どもの処遇はおって考える」

 そう言って、話しは済んだのだが、その頃俺達の後を万の兵達が追いかけていたことを知らなかった。

 そう、心配をした、国王アレクサンデル=エーヴァストがあわてて兵を出したようである。

 だがその兵達が、追いかける中で戦闘の跡がないことに驚く。

 そんな様子を見つめていた者達がいた。
 この大陸、カルデロン山脈を回り込んだ南側にあるもう一つの帝国、ヴァルデマル帝国である。
 物見の連中が走っていく。

 その後、ロニー達の意見や、王妃様の意見そのあたりをを総合的に加味して、王達を吊るす事に決める。


 そんな中で、忘れていた王太子達。
 捕まえに行くと、どこかに逃げ延びていた。

 祭の中で見世物のように、王達が吊るされていく。
 印象的なのは、王妃が喜んでいたこと。
 心の中でずっと思っていた事がなされたようだ。

 立場はあるが、権力とのバランス、従うしかなかった自分がやっと解放された瞬間だったのであろう。

 そんな頃、やっと遅れていた王国軍が到着をする。
 無理をしていたのか、疲労困憊で隊列は千切れ、本当に戦闘をするならすぐ負けそうな状態。

「ヨシュート様、今回の遠征軍大将のハリー=バイアット公爵であります。ここから貴下に入ります」
 とまあ、こんな感じになってしまう。

 その頃、逃げた王太子は……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...