不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第4章 大陸統一に向けて

第41話 崩壊への一歩

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 もう、王太子はいない。
 やめればいいのに、帝国のプライドは暴走する。

 今度は、櫓の表面を土で堅めて突っ込んでいく。
 それを見て、王国側の攻撃。
 火矢ではなく、魔導砲が数発撃ち込まれて、あっさりと燃えてしまう。

 その時丁度、教皇のマリーナが見学に来ていた。
「危険ですから、おやめください」
「大丈夫よ。きゃぁ」
 頬を、敵の矢がかすめる。

「言わんこっちゃない」
 戦闘中の、要塞上面通路へと出てしまった彼女。
 付き添いの司教に引きずられて、建物内へと戻っていく。
 だが頬に、シュパッと切り傷ができた。

 血を見て、マリーナは思い出す。
 いたぶられていたあの頃を。
 背中の傷跡は、ヨシュートに治して貰った。

 それなのに、今度は顔に傷を……

「許しません。帝国を滅せよ」
 いきなり命令をする。

 だがまあ、基本はベルンハルト王国の兵達。
 教会の言うことを聞くことはない。

 しかし、この部隊をとりまとめていた隊長は貴族であり、多少情報に明るかった。
 彼は、自国と教会が治める教国が、ひとまとまりになった事を知っていた。

「ようし、打って出ろ」
 最悪な命令を出す。

 要塞に籠もっていれば被害はないのに、兵が出てしまう。

 そうそれは、敵にとってもまたとないチャンス。
 固く閉じられていた門が開いたのだ。

「うおおおおぉ」
 などと言いながら、打って出る。

 兵など無視をしながら、帝国の盾兵達が門へと雪崩れ込んでいく。

 そう王国側は味方がいるから、攻撃が出来ない。

 最悪。
 そう、最悪の手を、王国は選んでしまった。

 最終的に、仲間ごとすりつぶし、門は閉じた。

 だが今回初めて、まとまった被害が出てしまった。

 その報告は、当然伝わる。
「はぁ? 打って出た? なんで……」
 そう、どう聞いても理解ができない。

「恐れながら、教皇、マリーナ様が見学をしておりまして、怪我をされたと」
「怪我? ひどいのか?」
「頬に矢傷を受けたようでございます」
 それを聞いて、ヨシュートは少し考える。

「ちょっと国境へと行くぞ。準備しろ」
「はっ」
 それを聞いて、旧ヒエロニムス王国王都グレンデスは大騒ぎになる。

 今改修中の所もある。
「改修は図面通りに行え。後は任せた」
 そう言って出て行ってしまう。

 その後、彼らは到る所で困り、ヨシュートのすごさを再認識する。
 ヨシュートが数分で組む事が、一週間経っても出来なかった。

「なんだと、魔物使いか。それは良い」
 メラク王国に、魔物をある程度なら従える人間がいることを皇帝は知る。

「よし雇え。門を開けさせろ」
「御意」


 さてと、名指しされたこの魔物使い。
 黒髪黒目、平たい顔族にしては、多少目鼻がくっきりしている。

「リュート。お仕事に行くの?」
「ああ、遊びすぎて金がないからな」
「言ってくれれば、パパから貰ってくるのに」
「そうもいかないだろ。行ってくる」

 この軽薄な男、真田 悠人さなだ ゆうと三十八歳。
 二十年前のある日、恋人に裏切られて自ら死んだ。

 そう、幼馴染みがいつの間にか、友人に盗られていた。
 試験前、集まって勉強をしていたのだが、こたつの中で、あろうことかいちゃついていやがった。

 当然部屋へ入って問い詰める。
「悠人って身長も高くて格好いいけど、おバカじゃん。周りから残念なイケメンと言われているわよ。私もそう思うし……」
 そう言い残し、彼女達は出ていった。
 目の前にある家だけどね……
 彼女の部屋、窓に映るシルエットは、どう見てもキスからその先へ……
 見せつけるように進んでいく……
 

「ぐれてやる―」
 彼も、家の前でそんな事を大声で叫びながら走り出す。
 彼は、ふと考える。
 自殺未遂でもして、怪我でもすれば、同情を引けるのでは?

 で、崖から飛んでみた。
 せっかくだから、ビデオのライブ配信をしながら……
 『悠人君のチャレンジシリーズ。第一弾、二十メートルの崖から飛んでみた』

 この崖、三メートルほど下に石棚が出っ張っており、飛び降りても、普通なら足を少し怪我するか、運の悪い奴は骨折するくらい。

 上からは見えないが、横に通路もある。
 子供の頃から、やめなさいと言われるのに幾度もやった。
 石棚が見えないように、崖の高さを撮影して、スマホを柵の所に乗せる。
 

 そして、勢いよく飛ぶ振りをして手前で減速。
 ぴょんと飛んだ。

 だが前とは違い、体が育っていた。
 それに皆が飛ぶから、上の生け垣は伸ばされて昔よりも繁っていた。

 その二つの要因は、悲劇をもたらす。

「うん? せまっ」
 なんとか着地。
 だが前に進もうとする体。

「よっ」
 体を回転させて…… 彼は背中から落ちていく……

「えー……」

「よく来たわね。うーん…… 八十五点。あなたに力をあげるから、下の世界を統治して。んちゅ」
 そうして女神は、悠人の口腔をもてあそぶ。
 佳人がされた、投げやりなキスとは感じが違う。

 だが何かを吹き込まれ、頭痛はするし体中は壊れ、再構築するような痛み。

 気がつけば、山の中でゴブリンに囲まれて、ボコられていた。
「やめてくれ」
 彼がそう言うと、ピタリと動きが止まった。

 そう此処から、彼は能力の一部だけを、力のすべてだと信じてやって来た。
 生き物に命令をして、従わせる。

 日本での記憶から、彼は、好みの女の子を従えてハーレムを作る。
 世界の統治など忘れきり、欲望のままこの世界でいきていた。

 女神は彼を覗いていたが、一年ほどで諦め、次を探し始める事になる……
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