不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第4章 大陸統一に向けて

第42話 自称賢者

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 リュートはまず山に入り、モンスターを探す。
 機動力のオオカミ系。
 敵を混乱させる、ゴブリンやコボルト達。

 力のオーク達。

 途中、聖獣であるフェンリルを見つけたが、手強くて術をはじかれる。
「ちっ、やっぱりだめか」

 そう才能はあっても、智はなく努力も嫌い。
 この二十年、怠惰に暮らした結果である。

 まあ、二千ほどの軍団を作り、戦場へと赴く。

 頭上からの矢を、石板で防ぎ、扉を壊し始める。
 だが鉄板が張られ、なかなか燃えないが、蝶番の所から中が木であることを確認をする。

「燃やせ」
 コボルト達が、火を放つ。
 上からの矢が苛烈になってくる。
 もう、周りには矢が突き刺さり、まるで矢畑のように見える。

 扉の周りから水が流れ出す。
 きっと内側で、水を掛けているのだろう。

「ふふふ、焦るがいい。我が名は真田 悠人。この世で唯一の賢者なり」
 なぜか、右手で自身の体を抱きしめ、左手で左目を隠す。

 そんな奇妙な立ち方で、ひたすらくっくくっくと笑っている。

 遠くでそれを見ている兵達は、やはり魔物使いはおかしいと肩をすくめる。


 そんな頃、やっとヨシュートは壁にたどり着く。
「ようこそいらっしゃいました、帝様」
 そうコイツ、兵を外に出して被害を発生させた本人。

「マリーナ、教皇はどこ?」
「こちらでございます」
 そう言って部屋へ案内される。
 士官用の大きな部屋。

 彼女はさすがに外へ出るのが怖くて、部屋に籠もっている。
 帰らなかったのは、ヨシュートがくるのが予想がついていたから。

 来てくれた、そして優しく話を聞きながら、傷を治す。

 そして止められたのに外に出て、怪我を負い、千人近くの被害を出してしまった無謀な攻撃。

 ペラペラと話をして、ふと、ヨシュートの顔を見る……
 それは、笑顔が張り付いた、何か……

 すっくと立ち上がり、小柄な彼女を左の小脇に抱える。
「えっ? へっ? いやああああぁ」
 彼女のお尻に、躊躇のない平手。
 部屋の中に澄んだいい音が響く……

 パシーン、パシーンとどこか余韻を残すような音が、ずっと響く。
 その数は、犠牲になった兵数と同じような千回を数えたという。

「以降、教皇の命令など聞くな」
「はっ」
 ヨシュートが出た部屋から、すすり泣く声が、ずっと流れていたという。


 そんな時に、連絡が来る。
「下で門が焼かれています」
「行こう」
 見ると確かに、門が焼かれていて、兵が魔法で水を掛けている。

 少し考え、門の内側に、五センチはありそうな鉄板で蓋をする。
 さらに、外から破城槌などが来ても良いように、鉄板の周囲を補強する。

「これで良いだろう」


「よし燃えた」
 諦めたのか、水も撒かれなくなっていた。

 向こう側に、兵が待ち構えているだろうから、ゴブリン達を呼び寄せ待機。
 オークが、棍棒で燃えかすの扉を、突き破り、突っ込む。

「はっはっは、賢者である私にかかればこんな物だぁ」
 頭が地面に着くほどのけぞる。

 だが、服が引っ張られる。
「うん? どうした…… なじゃこりゃぁぁ」
 そこには、分厚い鉄板。しかもつなぎ目無し。

 扉ではなくて、封じられた。
 しばらく、丸太でどついてみたが、びくともしない。

「うぬぬ、此処の司令官、思いっきりがよいな」

 そう思っていると、後ろの方で矢によって応戦している兵達の方から、ざわめきが聞こえた。

 見ると、壁の上から白い光の玉がぽいっと投げられたように、ゆっくりと落ちてくる。

 いつか見た、花火のよう。
 『柳』と呼ばれる花火に似ている。
 あれは、花火玉が割れてから、柳の枝が垂れ下がるように光が落ちてくる。
 そう、その一つのような美しさ。


「あっ、はじけた」
 少し、悠人は懐かしさを感じて、嬉しかった。

 だがその光は、兵を蹂躙する。
 壁の上では、兵達に戦場を見るなと伝えられて、壁の裏に隠れていた。
 それでも、世界は白く染まった。

 核ではない。
 それは極限まで凝集された火魔法。

 周囲の魔素を集め、思いっきり圧縮。
 それをぽいっと投げて、敵兵の真ん中で解放。

 簡単だが、極悪。
 閃光と熱線。

 そして衝撃波……
 およそ、ヨシュート以外に使えない魔法。

 色々考えたが、行き着いたのがこの力推しの魔法。

 今の一発は、直径十キロタイプ。
 そう塹壕にでも入っていれば大丈夫だが、大体その範囲で生物は生きられない。
 自称賢者様は、背中に壁があったため、急激な大気圧力上昇により、穴という穴から血が噴き出した。

「がはっ、一体何が……」
 気がつけば、体の正面側全面火傷だ。

 聖魔法を使い、体を治す。
 全く以て、音のない世界。
 一瞬で、すべてが終わってしまった。

 俺は、丁度扉の穴に居た。だから、圧力に押されて死にそうだが、回りに居たオークなどは、吹き飛ばされ随分上から降ってきた。
 コボルト達は、圧力変化に負けて死んでいる。

 そうたまたま、俺は生きている。

 出ていた部分はわずかだから良かったが、この謎服がなければやばかった。
 そっと、門のへこみから出ると、上を眺める。

 弓兵がいない間に、逃げるが、あったはずの森が無くなっていた。
 木々が横倒しになり、燃えている。

「畜生、なんだあれは…… 俺は女神に遣わされた賢者だぞ…… こんな事って……」
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