不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第4章 大陸統一に向けて

第43話 モンスター軍団

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 自称賢者がぼやいている頃、ヨシュートは惨劇を無表情で見た後、部屋へ戻る。

 教皇、マリーナはまだ、ヒクヒクと泣いていた。
 だが、我が儘で兵を殺した、マリーナを許す気は無い。

 必要な荷物を持つと、部屋を出ていく。
 その時見せた冷たい視線で、ヨシュートの本気に気がつく。

 やばい。本気で怒らせた……

 ヨシュートは経験上、自分だけのことしか考えない奴が大っ嫌い。
 そう、あれだ、前世で自分が死ぬまで追い込んだ親。
 その身勝手さは、異世界に来ても忘れられず、大嫌いだった。

 彼女は立ち上がるが、千回尻叩きは思ったより効いていて、鈍い痛みと突っ張る感じがする。
「あうっ」
 痛みと熱。
 だけど、その感覚は、子宮の奥でも感じ、ゾクッと何かが来る。
 その瞬間、足からは力が失せ、へたり込む。

「あうあうあう……」
 その瞬間ゾクゾクが、お尻から頭へと突き抜ける。
 それはたたき込まれた愛が、今になって吹き上がるような感じ。

 わずかな間に、彼女は幾度も果てることになる。
 何か新しい世界を開いたようだ。


「敵は減らした、これでしばらくは来ないだろう」
 対帝国、防御壁隊長、アドリアン=ナゼール伯爵はヨシュートに敬礼をする。

 外の状態は、先ほど兵から報告を聞いた。
 宮廷魔法師でも扱えないような魔法。
「帝は、魔法を軽く投げられて…… その後は、現実とは思えない光景でした。もう動ける敵兵は存在しません」
 報告に来た兵は、感極まったのか、それとも先日の犠牲者に友人でもいたのか。
 涙を流しながら報告をしていった。

 友人が居たのなら私のせいだ。
 偉いお方の前で、点数稼ぎ。
 だがそれは、最悪だった。

 最後には、味方ごと攻撃をすることになってしまった……

 だが辞表は認められず、しっかりと努めろと言ってくれた。
 そのお言葉に従い、きっちりと務めよう。



 そんなこちら側と違い、逃げ出した自称賢者君。

 怒っていた。
 王からの依頼。
 それは、あの壁を落とすこと。

 それから、一月掛けてモンスターを集めまくった。

 壁の前に、氾濫かと思うくらいモンスターがいて、私は今対応に悩んでいる。
 ヨシュート様はあれから帰ってしまった。
 あの、教皇は襟首を掴まれ強制的に帰還。

「さて、地面を這いずるモンスター達は問題ない。問題は飛んでいる飛龍やワイバーンだ。各員空を警戒するように」
「はっ!!」

 鉄製の盾を、壁の立ち上がり部分に並べ、その影から空を狙う。
 地表への攻撃は、壁の途中にある狭間を使おう。

 この壁は、難攻不落。
 胸を張れ、兵を鼓舞し、この危機を守り抜け。

 アドリアン=ナゼール伯爵は、自身に気合いを入れる。

 地竜などが、背中にオークやオーガを乗せてやって来る。
 そして、狭間からしか見なくて、見落としたが、トカゲ系モンスターや蜘蛛系は、壁を上がってくる。

 小さなモンスター達は、狭間の小さな穴を抜けてきた。
 キラービー達が城内を飛び回る。

「やべえ。同士撃ちに気を付けろぉ」
 兵達は、走り回る。

 モンスター達によっては、剣すら刃が立たない。

 そう難攻不落のこの壁が、モンスターの波状攻撃にやられ、浸食されていった。
「ええい。魔導銃を使え。ここを通すな。居住区に入られたら最後だ」

 俺達は、通路を塞ぎ、防衛用隔壁を下ろし頑張った。

 だが、丈夫だと分かった彼らは、最悪な攻撃手段を使う。

 人よりも大きな岩が、ものすごい勢いで飛んでくる。

 投石機などでも動じなかった壁に、へこみができて、ヒビが入る。
 見ると、人のいけない高空から岩を抱えて飛んできて、こちらに向けて投げている。

「あれは無理だ。防げない。全員退去。崩れるぞ」
 ワイバーン達に襲われながら、王都グレンデスに向けて逃げる。
 途中の城郭都市では、対応ができない。
 まだ、対空砲とやらの整備ができていない。

 二千いた兵達も、もうすでに百を割っている。

 きっと、壁は陥落をした。
 それを伝えねば……
 敵はモンスター軍団だと。
「隊長、ワイバーンが来ます…… 逃げてください。どうか、ご無事で……」
 そう言って部下が三人ほど、誘うように布を大きく振りながら別方向へと走っていく。

「すまぬ」
 どんどんと少なくなる兵達。
 だがなんとか、王都にたどり着く。

 ここまで追ってきたワイバーンが、一瞬で撃墜される。

 壁の上に物見櫓を造っていたのは、ヨシュート様だったようだ。

「あのでかい鳥は、護衛とか、通信用じゃなかったよな?」
 そんな話をしていたらしい。
 変わったお方だ。

 なんとか、報告を行う。
 「国境の壁、おそらくは陥落かんらくにございます」
 そう言うと、汗をかき爽やかそうだった顔が曇る。

「どうやって?」
「高空からの投石でございます」
 聞けば第二次世界大戦で使われた、反跳爆弾はんちょうばくだんの様だった。
 反跳爆弾は角度をつけて飛んできた航空機から投下され、水面を跳ねるように進む爆弾の事。

 今回は、モンスターが、それを使ったようだ。
「絶対野良じゃないよなぁ」

 資料を調べて、昔モンスター使いがいた事を発見。
 ギルドの資料に載っていた。

「リュート=シャナダ? 生きていれば三十八くらい?」
「ええ、そうでございます」
「ふーん。音があれだなぁ。真田? 竜斗か?」
 真田 悠人さなだ ゆうとの存在を認識をした、佳人。

 異世界、使徒同士の戦いが始まる。
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