不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第52話 漁師です

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 「ほれ、まだあるぞぉ」
 獣人国、ツッキジの港は活気づいていた。

「やけにでかい船がきたと思ったら、港が浅くて入れねえ」
 だから俺達は、手に槍を持って見に行ったんだよ。

 三代前からの地元の漁師、ネコ屋のティグルーじいさんは語る。
「おいマロン、篭を持って来い」
「にゃ」
 若そうな、ネコの獣人が走っていく。
 名前からすると女の子のようだ。

 全身に毛が生えているタイプ。
 よちよちとしながら、大きな篭を担いできた。
 その篭の中には、冷凍をされた魚たちが、ぎっしりと詰まっている。

「魔法だろうが、カチンコチンで鮮度が良い。そんな魚を安く売ってくれたんだ」

 そう地元の人達は喜んでいるが、外交上の問題。

 まずどう見ても、入れる港がない。
 勝手に造っても良いが、持ち主がいれば騒動になる。
 全面戦争は避けたい。

 まあそれで、途中で底引きをした魚たちを、売ってみた。
 それで通貨の有無や、言葉。
 政治的なものとか、結構情報収集が出来た。

 ここから、川沿いに少し内陸へ入ればチュートーの町があるらしく、さらに奥へ進めば王都があるようだ。

 この大陸には、いくつか国があるが、その上に獣王という絶対不可侵の帝位があり、五年に一度、候補者が戦いその座につくらしい。

 そう誰であれ、その座に着くには戦わねばならない。
「そうなんだ」
「うん」
 子どもっぽい応対だが、この人は二十二歳らしい。

 ネコ人族、ミネットさん。
 来たときは……
「おらぁ、なんだてめえらぁ、誰に断ってこの港で商売をしてやがるぅ」
 そう言って、凍ったかつおが満載された篭を蹴ってしまった。

 その後、ちょっと待てというので、彼女が復活するまで、五分ほど待たされた。
 その後、やっと足の痛みが治ったのか、会話を開始。

「おうおう、てめえら。誰に断ってここで商売をやってやがる」
 うん、そこからだった。

「よく判らないから、判っている人が来るまで、待って居ました。あなたが責任者ですか? ヨシュートです」
 握手があるのか知らないが、手を出す。

「うん? 頭を知らない? 一体どこから、ぴがやぁ…… にゃん」
 いきなり態度が変わり、オレにすりすりし始めた。

 それでまあ、スルメを囓りながら道ばたで話を聞いている。
 ネコにスルメは確か良くないと聞いた気がするが、獣人だからな。
 スルメは水分を吸って、膨らみます。
 なので胃が破裂をしたり、腸が詰まったりして駄目なようですが、獣人は人間よりも大きな個体も居るし、問題ないでしょう。

 この町、管理をしている代官さんは虎の獣人で、ベンガルさんというそうだ。
 本来の虎と違い、三メートルもなく、二足歩行でベンガルさんは二メートルくらいの身長のようだ。

 ネコ人族の彼らは、遺伝的に逆らえないようだ。
 なんかそういう決まりがあるようで、上位種は絶対なのだそうだ。
「へえ、参考になったよ。ありがとうね」
「にゃごなごごろごろ……」
 そう言って目を細める。

 周りを囲む、ミネットの部下達。
 港の自警団らしく、すごく張り切った格好。
 そう戦闘だという事で、鍋をかぶり、槍を持って立っている。

 そんな皆に、姉御と呼ばれるミネットは、今ゴロゴロ言っている。

「さて、ではベンガルさんに会いに行き、港湾整備について話をしよう」
 ミネットに案内をされて、小高い丘の上に建つ屋敷へと登っていく。

 俺達は、副官であるロニー、それにユキ、交渉上手なベルトーネ。
 それに幾人かの文官と武官。

「客人だ通せ」
 門番に対して、少し高圧に言葉をかけるミネット。
 だが相手は、ネコ人ではなく虎人らしく見下した様子。

 俺達の方を見て、フンと笑う。
「毛の無いさるか。病気かぁ。そんなやちゅら……」
 そう言いかけた、虎人の門番。
 いきなり尻尾が三倍くらいに太くなり、十メートルほど空に飛ぶ。

 着地をすると、地面に伏せ。こちらを警戒する。
「済まないな、先ほどミネットさんが言ったとおり、ベンガルさんにお会いしたい」
 そう言って、スルメを見せる。
 風魔法で、屋敷に向かって匂いを広げる。

 警戒中の、門番達はさておき、屋敷のドアが開き、二メートルと言っていたが、それより多分三十センチほど大きな虎人が出てきた。
 よだれをたらしながら、すごい勢いで。


 ぶつかってきそうなので、体を躱し、つい投げに行ったのだが、手は掴ませてくれなかった。
「なかなか早いな」

 立ち会いの感想だったが、それには反応せず、第一声は……
「ニャンだショレは」
 まあなんと言うことでしょう、まるでネコ人。

「スルメです。差し上げてもいいがお話があります」
「何でも良いぞ」
 そうして、スルメ十枚で、港湾整備計画にゴーサインがでた。

 無論正式な書面は交わしたが、到る処によだれが付き、ちと面倒だった。

 その晩、港町ツッキジは超巨大な港湾へと変化をした。
 そう、それは一夜のことだった。

 巨大な市場、魔導具が完備で、ブロックアイスの販売機、生け簀、冷凍庫……
 運搬用のクレーン。
 見たことのない物ができあがった。

「なんじゃこりゃぁ」
 まだ夜も空けない時間に、猟師達の声が響き渡った。
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