不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第53話 交流

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「いやまあ、平和的に統治をしたいから、戦闘をせずとも、あれだろう、獣王決定戦に出れば良いんだろ」
「むう、そう仰るなら止めませんが、一年かかりますよ。戦闘すればきっと一瞬です」
 
 ロニーは、どういう根拠かそんな事を言い始める。
 兵と言ったって、六百人程度。
 非戦闘員を混ぜてもその位だ。

 ツッキジの町で、鰹節を使った料理を教えながら、ロニーと今後について話をしている。
「この板みたいに固いのは昆布を干したもの。水から入れて沸騰する前に取り出して。火は中火」
「はい」
 この娘は、ケイティ十七歳。

 料理屋マタタビ亭女将で、先代が亡くなって、継いだばかり。
 ミネットの知り合いだが、女将自らが客のために、嵐の来る晩、沖へ出て亡くなったそうだ。

「皆が船を出せず、三日も魚がなかったんだ。だから女将は……」
「そうですよ。ミネットさんたちが騒ぐから。私は許しません」
 どうやら原因は、ミネット達だったようだ。

 それでまあ、店は娘が継いだが、基本的なものしか知らず、客足が芳しくない。
 そこで、和食を広めてみようと教えることにした。
 そうは言っても、男料理の簡単なレシピと、漫画で得た知識くらい。

 オールバックの変な主人公が、実は有名な美食家の息子で食に拘り、料理を作りながら物事を解決していく。
 まあそれに、出汁の取り方とかを書いてあったから、ためしたことがある。

 ちなみに鰹節の作り方とかも、そこからの知識。
 鰹を捌いて、背側を二つ、腹側も二つにする。
 そいつを一時間ほど煮てから、骨とかを抜き、乾燥させる。

 それでまあ、本当ならカビを付けてさらに水分を抜く。
 俺は放っておいたら、適度にかびて良い感じになった。
 きっと、女神補正だろう。


 その辺りを使い、すまし汁を作る。
 後は、岩場に居たカメノテを使ったスープ。
 ワタリカニを見つけたので、焼き物とスープ。

 気がつけばスープばかり。
 見たこのとのある魚の塩焼きとか……
 味噌が欲しい。

 味噌は確か、大豆がメインで、麦と米?
 塩水で…… どうするのだったか?

 昔は自家製ばかりだったと、バッチャが言っていた。
 そういえば、じいちゃんとばあちゃんて、どうなっていたんだ?
 小学校の時にはよく遊びに行っていたが、ぱったり行かなくなった。
 葬式をした覚えはない。
 もしかして、金の無心をして、縁でも切られていたのか?

 ありえそうだな。

 よく判らないから、とりあえず水につけて戻して、柔らかくなるまで煮てみる。
 味噌だから、潰して…… 塩?
 最近のは減塩だから、カビが生えるとか言っていた。
 適当に良い感じまで塩を入れる。

 さっきの煮汁とか、豆腐になるんじゃとか思ったが、まあいい。
 苦汁は、確か海水から採れるはず。

 結局、豆腐が欲しくなって別でつくる。
 まあ、発酵食品だから空気に余り触れない様にして、念じる。
「みーそーにーなあれ。ほいっ」
 踊りながら桶の周りを回ってみる。

 すると、桶が光を発する。

 開けてみると味噌になっていた。
「さすが異世界」
 上澄みは、醤油。

 醤油は、もっとたぷたぷの、水気の多い大豆だったのをテレビか何かで見たな。
 ついでだから造ってみる。

 気がつけば、調味料を造るだけで一週間ほど掛かってしまった。
 まあ半年とか、一年くらい掛かる発酵調味料を、一週間で造ったんだ、我慢して貰おう。

 まあこれで、味噌と醤油が出来た。

 基本の付け合わせにたくあん。
 たくあんは確か、干しだいこんのぬか漬けだ。
 この際他のものも漬けてみる。

 この世界の野菜、改良されていなくて、妙なえぐみとか、苦みがあったりする。
 漬けてしまえば、すべてOK。

 酒によるにおい消しとか、生姜、一手間を教えていく。

 そうは言っても、洗練された料亭などのプロの技ではない。
 疲れた男が、何かのご褒美とかで作っていた料理だ。

 そんなに、たいしたものじゃないのだが……
 俺が作り、食した連中はおかしな事になる。
 顔がとろけて放心状態。

 ヴァレリーとベルトーネには最初から、手伝ってもらっていたが、未だに慣れないようだ。

「口の中に入れた瞬間からはじける味と、感動。そしてこの幸福感。死んでも良い」
「あああっ、幸せ。口の中が幸せで、これのが本当の口福やぁ」
 最初のが、ヴァレリーの感想。
 後の少し壊れた感想がベルトーネ。

 あの受付をしていたときの、凜とした姿はもうどこにもない。
 甘えんぼ…… 
 そう、ひたすら、何か子どもに返ったかのように甘えてくる。
 かわいいから良いけれど。

 そしてだ、もう一人甘えんぼ。
 よく判らないが、獣人だが人間とそういう事が出来るらしく、もうゴロゴロ。
 俺はしていないが、兵達は幾人か彼女を作った様だ。
 そして、体毛の少ない種類も居るらしい。

 他種族のハーフだと、そう言う子が生まれたりする。

 だけどなあ、ケイティちゃんて、どう見てもおおきなぬいぐるみの感じなんだよな。
 このまえ、迫られたが駄目だった。

 その時に、ヴァレリーが安心した顔をしていたのが、妙にじんわりする。
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