不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第62話 目撃者

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「なんと、あの者達屋台の主であったか」
 たまたま控え室で、虎系獣人コアク達の悪巧みを聞いた、獅子系獣人レオン。

 彼は、ヨシュート達を見つけて追いかけ始めた。
 自身の試合はネコだましからの、奥義獅子奮迅パンチで圧勝だった。
 獅子奮迅パンチはその名のように、ししが荒れ狂うように、すばらしい勢いで両手を振り回す。
 回転を力に変える強力な技。

 その回転方向は、左右の手で自在に変わる。
 無論その角度も。
 ただノーガードには違いがなく、上体を沈め込んでやってく敵もいる。
 その場合は、秘技、獅子王キックが炸裂する。
 まあ低位の試合で負けることはない。

 彼もまた、村からの期待を背負いこの地へと来た一人、上位へ残り良いところへ就職をしなければ、村の貧困を救えない。

 そう彼もまた、村の使命を背負いこの地へとやって来た。

 悪巧みを聞いたとき、本当なら気を付けるように言えば良い。
 だが彼は、主人公達が危機の時、颯爽と現れるヒーロー。
 そう三文芝居の英雄を選択をした。


 カサコソと、付けていくが当然それはバレていた。
 そうヨシュート達の中では、後ろを付けてくる、何者か。
 そんな奴らは、五割が悪人。
 最近はファン達も多く、家凸いえとつされそうなこともしばしば。

 そのため、周囲には町人に紛れて兵達も歩いている。
 まあ姿が、毛のない猿のため、潜んでいても目立って仕方がないが。

 
 そして、背後に蠢く者達が、ある程度多くなってきた頃、最近気に入っている路地へと入り込む。
 この先は、旗竿地となっており、周りから隔離されている。

 雑草が生い茂り視界も悪い。
 そう町中にある、忘れられてしまった土地。
 元々大きな屋敷だったのだが潰れた。
 その後買った者は、その土地にこぢんまりした家を道側に建てた。

 裏に抜ける道は、細道のみ。
 皆が住むところを探していたときに、商人ギルドから紹介された土地。
「お安いですよ」
 そう言って笑う笑顔の担当者。
 裸の猿には、こんな所がお似合いさという感情が見えていた。

 だから、一番高い所を買った。
 演習用にグランドもあるし、最高だ。
 無論担当者は、チェンジした。

 まあ結果、便利な土地も見つけたので、旗竿地は利用させて貰っている。

「ちっ、あんな細道へ、気が付きやがったか」
 コアク達は、細道へ入っていく。
 人が、並んで歩くにも少しキツい道。

 都合一〇人ほどが連なり、導かれる。

「こんな所がありやがったのか、都合が良い」
 相手は三人、男は一人で女が二人。

 こちらは、純血種が一〇人。

 男をふん縛り、目の前で女を犯す。
 相当悪趣味な性格のようで、それを眺めながら酒を飲むのが趣味だというイバリー。
 過去にも幾度も被害者が出ているようだ。
 ヨシュートには獣人の表情について判断が出来ないが、男の悔しそうな顔がたまらないらしい。
 

 後にその話を聞いて、ヨシュートはヴァレリーとベルトーネの絡み合い、意外と良いかもと試すことになる。
 だが見ていられなくて、すぐに参戦をした様だ。

 まあそんな事はさておき、変態で悪趣味なイバリー達が、出口の道を塞ぐように展開して、数人が背後に回り込む。

 そう陣形としては、完全に囲まれた状態。

 その脱出路、細道の途中でレオンは悩んでいた。
 そう背後から突っ込むか、見なかったことにして逃げるか。
 虎系獣人を含めた一〇人。

 幾ら最強無敵を自負する獅子系獣人であっても、一〇人はなあぁ……
 彼は、悩みつつ脳内シミュレーションに逃げる。

 そう判断が出来なかっただけ。
 幸いここなら、幅が狭く囲まれることはない。
 一人ずつで、三人ほど倒せば、道がふさがる。
 その間に逃げることが出来る。

 そんな事をすれば、ヨシュート達の逃げ道を塞ぐ事になるのだが、思いつかなかったようだ。

 さてその奥では、今まさに惨劇の火蓋が切られようとしていた。

「さあてと、痛めつけても良いが男も殺すなよ。やれっ」
 ああなんと言うことでしょう、今ならまだ、通りすがりに見初めたファンで追いかけてきただけですと言い訳が出来たのに。
 彼は自身で、強盗ですと言ってしまった。

 その瞬間、周りの雑草が立ち上がる。

 ギリースーツを着て控えていた兵達。
 その数一小隊三〇人。

「お前達、ナニをするつもりだ?」
 そう聞きながら、剣が抜かれる。
 魔導銃は知られていないため、脅しには意味がない。

「くっなんだおまえら?」
「うちの帝を囲んで、おまえらこそナニをしている。痛めつけるとか言っていたなぁ」
 徐々に、包囲の輪が小さくなる。

 中央には、ヨシュート達。
 考えそうなことだが、コアクは人質を取ろうと、ベルトーネに近寄った。

 だがその瞬間、間合いに踏み込んでしまった。
 彼の顔が、一瞬消えたような勢いではじけて、首がねじれる。
 そう、ベルトーネの武器である拳、それは夜に開催される特訓のおかげで、ボディだけではなくなっていた。

 うっすらと、ヨシュートも知っているが、ヴァレリーとの順番決めは結構苛烈だった。
 お互い、極限まで神経を張り詰め、絨毯に落ちる針の音でさえ、反応をする。
 二人に言わせると、愛を得るための前戯なのと言う事なので放置しているが、その中に常人が混ざれば、瞬殺されるレベルの修羅の世界が開かれていた。

 ―― その前には、常識すらひれ伏す。
 数日で、千年も修行をした様な練度を習得していた。
 ああ恐るべきは、大いなる愛。
 そして……
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