不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第65話 黙示録

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 その時を境に、我々の世界は一変をした。
 
 そのお方が、姿を現された。
 その瞬間、この地は光に包まれ、我らは多幸感を感じた。
 そのお姿は、ただ立っているだけで荘厳であり、美しかった。
 残念ながら、我らはあふれ出る涙で、そのお姿が見えなくなる。
 我らの体は、お二人のお姿の前に、自然に地に伏せ、頭をたらした。

 我らが主、そのお方は、ヨシュート様に寄り添い、彼につかえて力をお貸しすると宣言を成された。
 そうヨシュート様こそ、至高のお方なり。
 彼のお方のために、我らは変わらねばならない。
 この世界に平和と安寧、そして愛を……

「なんだ、この報告書は?」
 報告を受けた教会は騒然とする。

「我らは、この地に現れた神と面会を行ったのです。教会とは違い癒やしの魔法を使えるだけのまがい物ではありません」
 そう、ひとときの邂逅で、彼らは信者となっていた。


 時間は遡る。
 宿舎の周囲は異様な緊迫感に包まれていた。
 兵達と、突入してきた侵入者達。
「此処にヨシュートとやらが居るだろう、要件がある。出てきたまえ」
 当然それを聞いた兵達は、殺気立つ。

 教会の使い、イスカリオテ。
 彼は教会につかえ、真摯に修行に励んできた。

 場がザワつく。
 そう、ヨシュートが現れる。
 そしてその横には、ユキが立っていた。

 そうその姿を見た瞬間、白狼族は涙をこぼし膝をつく。
 それは、本能に刻まれたもの、抗することなど出来ない。

 ユキは、こちらに受肉する際、フェンリルの形を取っていた。
 つまり人型を取っていても、その波動は生きている。

 他の種族は意味が分からなかったようだが、白狼族の様子を見て膝をつく。

「そなた達、我が系統の種族のようね」
 そう、白狼族はフェンリルの眷属、ユキは絶対的上位者である。その事を、体が理解してしまう。

「はっ、その通りでございます」
 イスカリオテは、さっきまでの尊大な態度とは違い、頭を垂れ、流れ出す涙を止めることが出来なかった。

 まれにフェンリルに会うことはある。
 だがこの波動は、おそらくは最上位。
 魂の震えが涙をにじませる。

「今は人の姿ですが、わたくしが使えるのはこの方、ヨシュート様です。この世界を司る女神から…… あのくそ女からの命令でもありますが、わたくしはこの世界の行く末を見たい。この方に付き従い、力となりなさい。判りましたね」

 眷属を司る力、それは絶対。
 同系統なら逆らえない。
 そして、天啓ともいえるお言葉を、そして命令を頂いた。

「はっ。我ら白狼族、お言葉に従いこの命尽きるまで従います」
 それを聞いて、ユキはにっこり。
 用事は済んだと戻ってしまった。

 当然ヨシュートも意味が分からない。
 だがその場に居る者達は、キラキラおめめの白狼族と訳の分かっていないその他の種族。

「私が、女神により、この地に遣わされたヨシュートだ」
 よく判らないから、ばらす。

「女神直々に、この世界を治めよと言われている。諸君らの力も借りたいと思う。よろしく頼む」
 願いが波動となり降り注ぐ、そう無駄に与えられた力、それは一種洗脳であり強制的な意識の書き換えを行った。

 すべてはヨシュートの統治のために。
 天命を実行せよ、付き従え。
 そんな言葉が、波動となって押し寄せた。

「ありがたきお言葉」
 それは、この場に居たすべての種族に届いた。

 全員がひれ伏す。

 よく判らないが、納得したようだ。
「それでは解散」
「「「「「はっ」」」」」
 彼らは、すくっと立ち上がり、隊列を成して勢いよく歩き始める。その姿は、颯爽として実に晴れ晴れとしていたという。

 その勢いのまま、教会へと雪崩れ込んでいく。

 そして、イスカリオテは勢いよく報告書を書き上げた。
 その満足そうな表情のまま長老へと提出。

 当然だが、その場は混乱……

 その後納得しない長老を拉致、宿舎へと連行をして面会を求めた。

 出てきたときには、長老は颯爽として教会の改革を推し進めると誓った。
「老い先短い命、ヨシュート様のためにこの身命を捧げよう」

 教会の混乱は、今始まった。


「おらあ、つかまえろ。その男が司祭だ」
 夜の闇に紛れて、その日から壮絶な戦いが行われたようだ。

 一方……
「お好み焼きに、この実を入れるんですかい?」
「ああ材料は、粉砕してあるけれど、厳重に保管をしてね」
 ヨシュートは、余ったマタタビを処分に困っていた。
 仕方が無いので、お好み焼きのたねに混ぜ込む。

 当然、中毒者が続出。
「お好み焼き…… 」
「こっちもだぁ、有るだけくれぇ」
 ネコ系獣人は、少しの量で意外とハイになるみたいだ。

 無論馬鹿売れ、間に焼きそばを入れて、半分に切り、さらに銅貨一枚値上げ。
 どこかのコンビニのように、見た目を変えつつ値上げをしていく。
 だがその勢いは止まらない。

 魚介系の料理は狼系やその他全般。
 栗などを使った物は猪系などに好評。

「馬と鹿?」
「ええ、彼らは来ませんね」
「普段ナニを食うんだ?」
 ガサゴソと、何かを探す。

「野菜のようです、生で」
「ふうむ」
 思い出す。草食動物はカリウムを含む植物を食べるためナトリウム不足になる。
 昔ドキュメンタリーで象が洞窟に入り、土を食べるというのを見た。
「塩味の保存食野菜を練り込んだクッキーを、食べやすいようにスティックにして売ってみよう」
 見た目は、大手製薬会社が作っている、棒状の栄養調整食品とそっくりになった。

 それを、人種ごとに作り、旅のお供として売り出してみた。
 この世界、旅は徒歩や馬車、干し肉なども長くは持たない。
 そのため、あえて水分量を減らして長持ちするようにしたこの食料は、会場に来ていた冒険者達の目にとまり、一気に売れ始める。ついでに、湯で戻すスープの元や、麺類まで。
 インスタントラーメンの作り方は、大手のドラマで有名になったから見知っている。

 もうその様子は、誰も止めることが出来ず、屋台の組合はその出店数をドンドンと減らす羽目になる。

「ふん、神の御業に、人がかなうわけが無いであろう」
 裸の猿だと馬鹿にしていた姿は、一部の獣人から完全に消え失せた。

 神の黙示録に、またいちぺいじ。
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