不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第67話 思惑

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「何? 商売をなさると、それはいかん。我らの出来ることなど、ささやかだが、手をお貸しせねば。すぐに実行を。してあちらは?」
「手は放っております。ですが、我らの同族であれば、簡単でございますが、上位は本物の竜族。簡単にはまいりますまい」
 そう言って、渋い顔で告げられる。

「だが今の教会は、エンシェントドラゴンの竜人族一派が基礎を作ったもの、なんとかして、我らが力を付けねば」
 そう、この世には、神獣と呼ばれるものが存在をする。

 その種族を祖に持つ者達に、現れやすい聖なる力。
 人数的には、白狼族とかが多いが、個人としての武、そして魔法の力は、竜人族の方が強い。

 彼らは、とりあえず中央を後回しにして、地方教会を掌握して、勢力を広げていく。
 光の導きのために。

 中央には、化け物達が君臨している。

 その化け物の一人が、スタローン家。
 開会前に、目があった竜人族。かれは、運営に招かれ教会の代表としてきていた。
 選手の治療等のため、教会の協力は必須だ。

 彼は考えた、あの時目が会った男、ヨシュート。
 やはり彼は強い。

 血だろうか、彼の戦いを見ると血が騒ぐが……
「とんでもありません。出場をさせるのは簡単ですが、お怪我でもされると、御父様からこちらが叱られます」
「いやその辺りは、手紙を出すし、問題は無いだろう」
 彼はそう言ったが、もし仮に出場させて負けでもしたら、教会、そして竜人族の恥となる。

 怒ったときの竜人族には伝説が多々ある。
 素手で競技場を壊して死傷者が多数出たとか、相手は王族なのに態度が悪いと言って…… 首を一回転させたら壊れちゃった…… とか。
 その後の報復を、彼の王国は行えなかった。

 教会の治癒、それがないと国が困るからだ。

「じゃあ仕方が無い、優勝者とエキシビジョン的に戦うというのはどうだい? 本気じゃ無く、竜人族の強さを教える感じで?」
「ぐっ…… 駄目です」
 大会委員長であるジャワートラは、ヨシュートの強さを多方面から聞いた。

 あいつは猿だが、ただの猿じゃねえ、目の前に出て対峙をすると判る。
 恐怖で体が動かなくなるんだ。
 トラ族が…… そう…… 怒った竜人族と同程度かもしれん。
 万が一、それが本当なら、竜人族の希望を背負ったこのお方が、もし負ければ、怒りがこの領へ向かうかもしれない。
 そんな事になったら、いい加減貧しいこの領が、滅んでしまう。

 彼はそう考えたが、ヨシュートのおかげで、税収が爆発的に増えて驚くことになる。
 そしてこの地の教会は、本部を離れて独立。
 そうこの時考えていた、最悪は、ヨシュートのおかげで何の問題も無くなることになる。

 後に、あんなに望んでいたのだからやらせて、コテンパンに負けちまえば良かったのにと後悔をする。
 そうそうれは、王国での代表戦を、ヨシュートが楽勝で決めた後の話し。

 王都では、様々な妨害が彼を襲った様だが、すべてが無残に返り討ちになったとか。

 そうこの地での伝説は今始まったばかり、この後数千年の統治が始まる序章だった。

 その頃、住民達は動いていた。
「あの屋台を、町に店を出してくれ」
「ああ、あのお好み焼き、あれが無いと生きられない」
 ネコ系獣人達は、ドーピングお好み焼きにずっぽしハマったようだ。

「店か……」
 机の上に積まれた嘆願書。

「どこがよろしいですか?」
 ロニーが、紙束を持ってくる。

「こちらは、大通り沿い。併設で防具屋や、武器や、それと職人のお店を造る予定でしたが、飲食スペースを作り、全部まとめてしまいましょう」
 そうこの時、この世界でのショッピングセンター構想が初めて出てきた。

「ああ、そんな形態の店を知っている。ショッピングセンターと言うんだ。ちなみにショッピングモールは長い通路がある。うちの店だけじゃ無くて、入りたい店があるなら入れるようにしよう。それなら周辺の店から苦情も来ないだろう」

 それを聞いて、ロニーは感動する。
「我々だけでは無く、影響を受ける周囲の店のことまでお考えに…… 流石でございます。わたくしロニー、そこまで考えが及びませんでした…… それなら周囲のボロい建物を壊して、かなり大型に出来る」
 わたわたと、ロニーはメモを取り始める。

 ついでに情報を入れておこう。
「それなら、入った店からは、家賃と出店料を取れば、恒常的収入になる」
「おお、それなら、店に売り上げが無くとも、こちらは儲けが出る。いや素晴らしい」
「横に宿を作り、繋げれば、雨の日だって買い物に行けるぞ」
「それは、それならいっそ、乗合馬車の発着所を作ってしまえばよろしいですね」
 そう言いながら、ロニーは飛び出し、各方面へと圧力を掛ける。

 圧力というのは、各方面の担当で一番偉い人の膝に、バカに重たいお菓子を配るだけ。
「よろしくお願いいたしますね」
 そう言って、にっこり笑って……
 嫌がれば、膝の上にお菓子が積み上がるだけ。
 まるで江戸時代の拷問のように。
 そして、この世界で、初めての地上げが始まった。

 そして、町の入り口にあるギルドから、アーケードが造られて、そこがモールとなり、センターにまで接続をされた。

 宿泊から買い物、食事が一つの建物で済んでしまう。

 その後、中に入らなかった店達は、完全に客足が離れて閉店をする羽目になる。
「うちの店がここから移動しちまったら、客が困るだろう」
 その店の親父はそう言って参加しなかった。だが客は、そこまでの思い入れが無かったようだ。

 少し前までは、遠くのまずい店よりは、近くのまずい店だった。
 今は、近くのまずい店よりは、少し遠くとも美味い店。
 それも多くの店が集まっている。
 しかも…… 圧倒的に安い。
 直営農家制と、ギルドからの大量購入。

 依頼もドンドン来て、ギルドも冒険者も、そしてセンターも三者がウインウインである。
 この構想に乗り気では無かった商業ギルドだったが、こちらが勝手に買収整地建築を始めると、流石にやばいことに気がつく。偉そうだった態度は無くなり、揉み手で擦り寄ってきた。

 店主達が、後からそれを理解したときには、空きスペースがなく入れなかった。
 株と同じで、一瞬判断の遅れが、惨劇を招く。
 どこかで、叫び声が聞こえる。
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