不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第91話 旧家の焦り

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「なんと、また勝ったでは無いか。しかもウイリス家、武の勇だぞ」
「予想外…… ですな」
 今度は、新興ではなく旧家の面々。

「かのスタローン家の孫が負けたと思ったが、相手が強かった様じゃな」
「ええ、そのスタローン家も順調に勝ち進んでおります」
 そう全く持っての予想外。

「強き者は歓迎じゃが…… 種族がなあ。なんとかせねばと思うが、どうじゃ?」
「はっ。御意でございます」

 流石に、次から準々決勝となり、焦りが生まれる。
 ずらっと並ぶ竜人族の中に、ぽつんと一匹の猿がいる。
 本人の申告では、人間とか言う種族にはなっているが、毛の無い猿だ。

 それは、彼らにとっては許されない事。

 そして、案の定、馬鹿な暴挙が行われた……
 この都市では、彼らがルール。
 武装もせず、無手でただ押し寄せ、更地に変える力が彼らにはある。
 そして、兵達や憲兵も見て見ぬ振りである。

 夜半、屋敷を囲む者達。
 一般の宿ではなく、屋敷を買っていたのが裏目に出た。
 無関係の者に被害を出さず、彼の者を亡き者にできる。
 彼らにとっては好都合だと思われた……

 そう、好機。
 だが、相手は普通じゃなかった。
 そんな事を知らない彼らの手により、問答無用で門が破壊された。
 それにより、自動防衛システムが起動。

 改造をされて住宅地仕様のそれは、金属製の筒の奥で土魔法と風魔法、そして火魔法が綿密に組み合わさり動作をする。

 タングステンと鉄の生成と合金化、弾頭は二十ミリ掛ける百二十五ミリメートル。そしてそれは生成と同時に風魔法により高速で回転を始める。
 そう種族的に敵になるとして、竜人族を考えたとき、ストッピングパワーよりも貫通性が配慮された。

 そして、チャンバー内に発動をする火魔法により、内包された空気を急速に膨張させる。
 銃口にはサプレッサーが装備され、ご近所様にもきっちりと配慮されている。
 
 そう、話がどこかから入り、警備兵達は意図的に屋敷から遠ざかっていたのだ。
 ご近所に配慮された、サイレントな住宅用防衛システムは、その牙を存分に発揮した。

 暗視装置のカメラを通し、現在作戦室となっている『神の光芒』達の一室。
 そこに、ヨシュートまで現れて、モニターを見ていた。

 周囲の構成員は、尊敬と憧れの目だが、ヨシュートは気がつかない。
 未だに、豹人族の顔も判断が出来なかったりする。

 夜半のため、全員にワインや軽食が振る舞われる。
 
 正面には、イギリス式とフランス式の混ざった庭。
 そこには適度な死角があり、多少誰かが倒れても気がつかない。
 総勢三十名ほどの侵入者は、あっという間に駆逐される事になる。

 そしてモニター越しにヨシュートが力を使うと、壊されていた門扉が復旧をする。

「さて、こんな物ですかね。行きましょうか?」
 ユキは応戦する気が満々。
 さっきから、殺気が漏れている。

「どうされます?」
 ロニーからも聞かれるが、どうするべきか……

 そう考えて、悩んでいるとお代わりがやって来た。
 五十人ほど。
 そして、門を壊されてしまう。
「さっき直したのに」
 少しむっときた。

 
 その頃、事実上の支配者である、イェンセスター家が動いていた。
 いや、今現在攻撃中であると会議中にいきなり吐露されて、これから先を周囲につめられて、困ってしまう。

 だが状態を考える。
 手柄を焦った家が、すでに攻撃中。
 そして、憲兵達にも話は通しているらしい。

 その家が、暴挙に出たのは、屋台の売り上げがやばいことになったせいだ。仕入れ代すら払えなくなり、店主達に泣き付かれた。
 そして御大自らが、商業ギルドへとわざわざ話しをしに行ったが、丁寧に追い返される。
「例年よりも盛況で、何倍もの税金が上がってきております。それをやめろと仰られれるのは、町のためにはならないでしょう……」
 税金と言ったが、あそこに出すと、売り上げの一割は使用権としてギルドに金が入る。

「ちっ、金の亡者め」
 などと言い残し、自身も金のために文句を言いに来たのを忘れて、彼は帰っていった。

 そして、小さなプライドが傷つけられて暴挙に出る。
 どうせ出来損ない。
 奪ってしまえば、大もうけじゃないか。

 などとまあ。盗賊のような発想が実行されることになった。
 まあ歴史の中で、幾度もこういう事はあり、勝ち抜いた家が今残っている。
 おかしな事ではない。

 人の欲というのは、発展の原動力ではあるが、相手を見ないと滅亡することになる。

 そう、彼は、似ていても裸の猿では無い。
 人間であり、そこからも少しはみ出した存在。

 彼の前に常識は通用しない。

 まあそう言うことで、イェンセスター家もこのウェーブに乗らなければと…… 乗ってしまった。

「各家に通達、目標ヨシュートと言う輩」
「はっ」

 その通達は、今現場で実行中ために、ものすごく早く送られた。
 夜間に、馬が走り回る。

 町の人達も、なんだよと気になり顔を出すが、走り回っている者達が掲げる家の紋章を見て、顔を引っ込め閂をおろす。
 そう、今晩何かが始まった。
 きっと知らない方が良い。
 明日の朝には、平和になると願い、彼らは布団へ潜り込んだ。

「ヨシュート様、やっぱりこうなりましたね。最初っから制圧すればよかったのに」
 ロニーが嬉しそうに笑う。
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