93 / 135
第5章 獣人国平定
第93話 訪問者
しおりを挟む
「行きましょうか?」
そう言って、ユキに手を引かれる。
「そうか、そうだな」
屋敷の避難路から外へ出る。
「ご案内をいたします」
通路を抜けると、そこに待っていた、豹人族に案内をされながら一軒一軒ご挨拶に回る。
無論手ぶらだ。
これは、ご機嫌伺いではない。
襲撃の御礼だ。
「こんばんわ」
落日共に行動が終わるこの世界。
だがどの屋敷も人々は忙しそうに走り回り、そこには非現実な何かがあったようだ。
「なんだおまえら」
「それはお前達が詳しいだろう。帝の暗殺未遂。全員逮捕する」
ロニーが、俺達の背後に隠れながら宣言をする。
一応逮捕令状ぽいものは見せている。
「おまえら、猿か。なぜここに」
そう言いながら、そいつは嬉しそうな顔になり、躊躇なく攻撃をしてくる。
「ええい、ひかえろ」
ロニーの腕が引っ込み、完全に隠れる。
「やるか」
「ええ、制圧をしましょう、無礼者どもを」
そう言った瞬間、そこを中心として、空気が重くなった。
それがすべての始まり。
彼らの終わりでもあった。
そう幕は上がったのだ。
彼らの何よりも大事な家が、いま終焉へと……
「彼らも殺さず、捕まえれば鉱山仕事がはかどりましたね」
帰りに、ロニーがぼやく。
屋敷にいた連中は無力化をして、本国の牢へと放り込んだ。
無期懲役だ。
そこで、思い出す。
二十ミリで倒し、浄化をした者達、最終的には三百人近くになった。
「そうだな、だが、まあいいだろ」
「そうですか」
鉱山開発は今魔導具の開発を行っている。
含む金属、その質量つまり分子量による違いを自動的に判断して掘削するミミズ型魔導具。
大部分はできているのだが、掘りまくって山体崩壊でも起こせば大変なことになる。
そこが問題だ。
不要部分の土砂を、後部から吐きだしすぐに石化する。
そんな機構を今造っている最中だが、ユキがいま俺に張り付き発情期に入っているから開発が止まっている。
「ああっ、もっと深くまで、ああ、そこがいいっ…… うっはっ、ああぁぁっ」
なんていうことで、自身を掘られることに燃えているので魔導具は後回しだ。
そして、当然だが。
翌日から、会場が騒然となる。
準々決勝の八人のうち、三人が消えた。
「出来る試合は三試合、その内第二試合は不戦勝が決まり、キボンヌ=リーブスが勝ち上がっております。第四試合は両者不出場。そのため第三試合の勝者は決勝へと進出が決まります」
アナウンサーはなんとか盛り上げようと必死だが、会場からは落胆の声しか聞こえない。
「第四試合は試合不成立のため、光栄戦士選出投票母ら戻されます、窓口にてお手続きをお願いいたします」
そんなアナウンスが会場に流れる。
「さあ、第一試合。地方選勝ち抜き者として、初のベスト八。謎の男ヨシュートとスミス家の期待の星ウインチ、一体どんな試合となるのか? 第三試合はスタローン家とクルーズ家の戦いとなりました」
紹介を進めふと思いだしたアナウンサー。
「スタローン家と言えば、地方予選へと突然出場し、噂の男であるヨシュートに負けたわけですが、普通に勝ち上がってきましたね」
「ええ彼は、スタローン家の神童と呼ばれ、歴代最強なんていう噂があります。そして、本当に噂ですが、地方会で負けた後、彼はさらに強くなっているとか、まあ情報源はスタローン家の親族…… そのお隣の娘の友人らしいので、気にしていませんでしたが」
そこで、アナウンサーの目が光る。
「カイセツ―さん。娘の友人と言うことは女性ですよね? どういう関係でしょうか?」
そう聞かれて、一瞬固まる。
「彼女は幼馴染みだが邪推しないでくれ」
「ほう、幼馴染み。そう言う気持ちがないと?」
「無いとは言えないが、まだ若いし、その……」
「カイセツーさんは、まんざらでもないようです。よかったですね」
「ばっ……」
そう言って、彼は俯いてしまった。
「そうですか、彼は強くなったと、それはどのような感じなんでしょうかね?」
「知りません」
「カイセツーさんが黙り込みましたが、試合が始まるようです。期待しましょう」
二人のかけ合いで、奇妙な空気感となった会場。
関係者が現れ、審判が手を上げる。
「それでは、試合開始。うおっ」
審判は、かけ声の後、両者から吹きだした気迫に押されて、文字通り下がってしまった。
こっ、この場にいると死んでしまう。
それは防衛本能か、体が勝手に動いてしまった。
怖い。絶対いつもの試合じゃない。
この審判、この試合から担当の上級資格者。
このレベルになると、審判の目もよくないと見えないため審判団も入れ替わった。
無論今までの審判のように、気に押され漏らしたりなどしない。
だが……
今まで経験をしたことの無い気迫、それに混ざった殺気。
「これは一体?」
時間は夜半に戻る。
屋敷に突っ込んできたバカを制圧をする。
当主として、若い頃は幾度か獣王も務めた。
「どれ、みんな若い者は不甲斐ないようだな。どけ、わしが出る」
そう言って、自信満々に出て行った。
だが、視界にはわずか猿が三人。
その内一人は隠れているので、番なのか二人。
「だが、この気配、そして、気の質が…… 普通ではない」
歴戦の猛者、相手が纏う雰囲気で強さが判る。
その猛者でさえ、足が勝手に下がり、つい腹を出して降伏をしたくなる。
「この者達…… 何者? わしらは一体何に手を出した?」
そう、今更遅いが、やっと理解をした……
そう言って、ユキに手を引かれる。
「そうか、そうだな」
屋敷の避難路から外へ出る。
「ご案内をいたします」
通路を抜けると、そこに待っていた、豹人族に案内をされながら一軒一軒ご挨拶に回る。
無論手ぶらだ。
これは、ご機嫌伺いではない。
襲撃の御礼だ。
「こんばんわ」
落日共に行動が終わるこの世界。
だがどの屋敷も人々は忙しそうに走り回り、そこには非現実な何かがあったようだ。
「なんだおまえら」
「それはお前達が詳しいだろう。帝の暗殺未遂。全員逮捕する」
ロニーが、俺達の背後に隠れながら宣言をする。
一応逮捕令状ぽいものは見せている。
「おまえら、猿か。なぜここに」
そう言いながら、そいつは嬉しそうな顔になり、躊躇なく攻撃をしてくる。
「ええい、ひかえろ」
ロニーの腕が引っ込み、完全に隠れる。
「やるか」
「ええ、制圧をしましょう、無礼者どもを」
そう言った瞬間、そこを中心として、空気が重くなった。
それがすべての始まり。
彼らの終わりでもあった。
そう幕は上がったのだ。
彼らの何よりも大事な家が、いま終焉へと……
「彼らも殺さず、捕まえれば鉱山仕事がはかどりましたね」
帰りに、ロニーがぼやく。
屋敷にいた連中は無力化をして、本国の牢へと放り込んだ。
無期懲役だ。
そこで、思い出す。
二十ミリで倒し、浄化をした者達、最終的には三百人近くになった。
「そうだな、だが、まあいいだろ」
「そうですか」
鉱山開発は今魔導具の開発を行っている。
含む金属、その質量つまり分子量による違いを自動的に判断して掘削するミミズ型魔導具。
大部分はできているのだが、掘りまくって山体崩壊でも起こせば大変なことになる。
そこが問題だ。
不要部分の土砂を、後部から吐きだしすぐに石化する。
そんな機構を今造っている最中だが、ユキがいま俺に張り付き発情期に入っているから開発が止まっている。
「ああっ、もっと深くまで、ああ、そこがいいっ…… うっはっ、ああぁぁっ」
なんていうことで、自身を掘られることに燃えているので魔導具は後回しだ。
そして、当然だが。
翌日から、会場が騒然となる。
準々決勝の八人のうち、三人が消えた。
「出来る試合は三試合、その内第二試合は不戦勝が決まり、キボンヌ=リーブスが勝ち上がっております。第四試合は両者不出場。そのため第三試合の勝者は決勝へと進出が決まります」
アナウンサーはなんとか盛り上げようと必死だが、会場からは落胆の声しか聞こえない。
「第四試合は試合不成立のため、光栄戦士選出投票母ら戻されます、窓口にてお手続きをお願いいたします」
そんなアナウンスが会場に流れる。
「さあ、第一試合。地方選勝ち抜き者として、初のベスト八。謎の男ヨシュートとスミス家の期待の星ウインチ、一体どんな試合となるのか? 第三試合はスタローン家とクルーズ家の戦いとなりました」
紹介を進めふと思いだしたアナウンサー。
「スタローン家と言えば、地方予選へと突然出場し、噂の男であるヨシュートに負けたわけですが、普通に勝ち上がってきましたね」
「ええ彼は、スタローン家の神童と呼ばれ、歴代最強なんていう噂があります。そして、本当に噂ですが、地方会で負けた後、彼はさらに強くなっているとか、まあ情報源はスタローン家の親族…… そのお隣の娘の友人らしいので、気にしていませんでしたが」
そこで、アナウンサーの目が光る。
「カイセツ―さん。娘の友人と言うことは女性ですよね? どういう関係でしょうか?」
そう聞かれて、一瞬固まる。
「彼女は幼馴染みだが邪推しないでくれ」
「ほう、幼馴染み。そう言う気持ちがないと?」
「無いとは言えないが、まだ若いし、その……」
「カイセツーさんは、まんざらでもないようです。よかったですね」
「ばっ……」
そう言って、彼は俯いてしまった。
「そうですか、彼は強くなったと、それはどのような感じなんでしょうかね?」
「知りません」
「カイセツーさんが黙り込みましたが、試合が始まるようです。期待しましょう」
二人のかけ合いで、奇妙な空気感となった会場。
関係者が現れ、審判が手を上げる。
「それでは、試合開始。うおっ」
審判は、かけ声の後、両者から吹きだした気迫に押されて、文字通り下がってしまった。
こっ、この場にいると死んでしまう。
それは防衛本能か、体が勝手に動いてしまった。
怖い。絶対いつもの試合じゃない。
この審判、この試合から担当の上級資格者。
このレベルになると、審判の目もよくないと見えないため審判団も入れ替わった。
無論今までの審判のように、気に押され漏らしたりなどしない。
だが……
今まで経験をしたことの無い気迫、それに混ざった殺気。
「これは一体?」
時間は夜半に戻る。
屋敷に突っ込んできたバカを制圧をする。
当主として、若い頃は幾度か獣王も務めた。
「どれ、みんな若い者は不甲斐ないようだな。どけ、わしが出る」
そう言って、自信満々に出て行った。
だが、視界にはわずか猿が三人。
その内一人は隠れているので、番なのか二人。
「だが、この気配、そして、気の質が…… 普通ではない」
歴戦の猛者、相手が纏う雰囲気で強さが判る。
その猛者でさえ、足が勝手に下がり、つい腹を出して降伏をしたくなる。
「この者達…… 何者? わしらは一体何に手を出した?」
そう、今更遅いが、やっと理解をした……
1
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる