不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第7章 宇宙(そら)へ

第124話 神の降臨

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 阿鼻叫喚の議会場。
 いきなりのブラックアウト。
 昼間で天気は良い。
 それなのに、闇に包まれて暗くなる。

 見ていた国民は、あまりのひどい画だったので中継が切られたと思った。

 だが、その予想は外れることになる。
 『暗い世の中に、一筋の光。その煌めきは、人々の希望の糸。今混沌とした世の中に神が自ら力をお貸しくださる』

 台詞にそって、光の柱が降りてくる。
 その光、周囲にも雪のような煌めきがあり、そこに小さな天使が舞い降りてくる。

 そこへゆっくりとヨシュート達が降りてくる。

 無論、転移の一種と自身の体を浮かべる重力魔法。
 前にやったとおり、頭へ一気に血が上る。

 だが笑顔。
 会議場の床にヨシュート達が降り立った瞬間、光が会議場を埋め尽くす。

 そう…… 神降臨の一幕。
 脚本ロニー=ウィル
 演出ヨシュート=ヒトーノ。
 演出補助、ユキ。初等女神候補、女神眷属のフェリシアナ=グロリア=ラミレス=ケサダ=アクエリアス。
 同じく演出補助、女神アデルミラ=ヘルトルディス=アバスカル=デルリオ=アプロディーテー。
 主演ヨシュート=ヒトーノ。

 謎のテロップが流れる。

 そう神降臨をいかに演出をするのか、ロニーは考えた。
 その結果が、暗雲立ちこめる世界に光あれ……

 まあ今の景色。
 だが、その演出は驚かれる。

 この星に行きる者達、自然発生なだけあって、魔力回路を持っていない言わば地球型の人類。
 そこにやって来たのは、神の意図が盛り込まれた人種。
 根本が違う。

 言ってしまえば、種族的にもアデルミラ星系に住んでいる者の方が強い。

「さて…… ファビタブルの諸君。我は来た。この世界を統治するために…… 紹介しよう。この世界の創造神、女神アデルミラ=ヘルトルディス=アバスカル=デルリオ=アプロディーテーだ。ひれ伏すが良い」
 この時、ドキドキだった。
 暴動が起きたら面倒になる。

 だが、アデルは神威を発動。
 彼女の姿を見ただけで、幸福感に満たされ、涙が止まらなくなる。
 状態だけ見ると、質の悪い花粉症だが、心に訴え掛ける物がある。

「「「「おおお、神が」」」」
 人々は意外と信じる。

 だが、この星にも、古来からの教会がある。
 女神伝説。
 我らに言葉を与えてくれたお方。
 今まさに降臨中だが、諸手を挙げて喜ぶわけにはいけない。
 彼らには彼らの都合があるのだ。
 そう彼らの心は、上位に行けば行くほど真っ黒だった。

 だが彼らは神と名乗り、不思議な力まで見せる。

「おい誰か居るか?」
「はっ」
「議会会場に赴き奴らを捕まえろ。神の名をかたる者達だ」
「ですが教皇様、彼の者達は不思議な力を持ち、その…… 皆神だと認めて……」
「ほう、お前は私の言葉より、あの者達を信じるというのだな?」
 教皇は、今まで散々儲けたのに、まだ今の既得権益を守ろうと欲をだした。
 そこを、ロニーに付け込まれて、教会自体が一度解体されることになる。


 ヨシュート達は、議員達が総辞職をした後、この星系の経済的な流れ、仕組みの聴取を行っていた。
 そして部外者であったため、その切り口はしがらみなど無く、すっぱりと行く。
 それに付いて苦情があれば、耳を傾けそれにより判断を覆すこともあった。

「さすが神だ、この膨大な案件をあっという間に処理していく」
 行政系の人間は驚いたが、当然と言えば当然。

 事態を、ドラスティックに変更するなら、専制的な政治形態のほうが早い。
 危険なのは、その君主が壊れたり無能だった場合。

 ヨシュートは、人間に見えるが寿命は長い、これから千年は安泰だろう。
 だがそんな化け物に、教会が苦情を言ってくる。
「あれが神だと? あれは手品だ。そんな者に皆が踊らされるなど」
「では、どうしろと?」
 担当の行政官はうんざりした顔になる。

 確かに、教会は心傷ついた人々の救いにはなる。
 だが、古くからある組織で横の繋がりが多くの問題ごとを解決もするが、より複雑にもする。
 必要悪と言えばそうだが、あのお方達にご迷惑になることは避けたい。

 そうだ、本人と家族の安寧のために教会が引き受けている難病の人達。
 言い方は悪いが利用させていただこう。
 ロニー様が言っておられた、ヨシュート様にお願いをすればどんな病人もけが人も治る。

 そう仰られて、国からお願いをして、幾人かのアスリートを治していただいた。
 希望の星だった選手が、事故により半身不随になっていた。
 この国の最新医療でも、切断された神経を繋ぐことは出来なかった。

 そして、機械を付けてやっと生きていた選手は、今、涙を流しながら喜び鍛え直している。まだ報道はしていない。
 彼のお方に、やって貰ったのは、病室に足をお運びいただき、奇蹟の光をくださった。

 それだけだ。
 あれこそ本当に神のお力。

 ふっと、笑顔が出てしまう。
「ならば教会におられる、病人達。彼らも救いが欲しいでしょう、お願いを行ってみますので、当然あなた方もお力を見せるのでしょう?」
「ぬっ…… そうだな」
 早急に話しは上へと上がり、全国放送特番。『この世界に降臨されたヨシュート様のお力。我々は、あのお方によるお力、本当の奇蹟を見る事になるだろう』そんな番組が放送された。


 教会から来た千人を超える病人。
 実は終末期の治療として使われていたのは、麻薬。
 痛み止めの代わり。
 もう、通常の痛み止めでは、効かない患者ばかり。
 
 テロップでは、個人情報に配慮しつつ、症状と病名が流れている。
 そして、そんな人々が集められた建物では、よく言う終末期、末期の匂いが感じられる。

「では、手前側の人々をお願いいたします」
 厳かな雰囲気で、告げられる。

「ひどいなこれは」
 ヨシュートは、一言そうつぶやくと、浄化と治癒の光が辺りを包んだ。
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