不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第7章 宇宙(そら)へ

第130話 ラグナロク -終末の日-

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 ミロスラフ=クリシュトフ王には、なぜ教会関係者が撃たれたのか理解できない。
 だがそれを見ても、顔色を変えないヨシュート達。

 それでもまあ不都合はない……

 調印の会場へと進んでいく。

 途中幾人かのスナイパー達が、また空を飛びたくなったようだが、気にするほどの事はない。

 そんな穏やかな光景の裏で、徹底抗戦を選択した国にお告げが降る。
 『善良なる神民よ、その土地は神の子となる事を拒んだ、その地から離れよ。三日の後、その地は浄化の炎が吹き荒れる。智あるもの達は海岸へ。船を与えよう。急ぎなさい』
「もう少しやりようがあっただろう」
「ですが時間がかかります。力を見せるのも一つの手ですよ。民は救うのですし、浄化後はアデル様が、麦などを生やしてくれるそうですから」
 ロニーはなんだか嬉しそうだ。

「むう……」
 アデルめ力は減っても、やりたい放題か。
 さすが創造神。
 じゃあ、船を出さなくても、土地でも創れば良かったんじゃないか?

 考えただけなのに、人の思考を読みやがった。
「そうすると、国の状況と再生の奇蹟が見られません」
 どうやら、人々を乗せた後、上空から燃えていく様と、その後の再生を一気見させるようだ。

「仰っていた、エンターテイメントです」
「そうかぁ?」

 海岸へ向かう人の流れ、その中である地点から進めなくなる人々が現れる。
 そう、思考解析付きシールド。
 神民は善良でなくてはいけない。
 悪意を持った者達は、そこから先へ進めなくなる。
「畜生ふざけんな」
 ある若者は、手近な人を捕まえて強引に進もうとする。
 だが、次の瞬間晴天の空から雷が一つ。

「あがっ」
 捕まっていた人には影響がない、微妙なコントロール。

 アデルにはどういう景色が見えているのか、当然ヨシュートにはマネができない。
 神としてのランクが違っているようだ。
 最近はめっきり、魂の繋がりと称する行為に、どっぷりはまってはいるが、さすが神である。
 そう、アデルは行為の時、こそこそと力を取り返していた。

 無論ヨシュートの事が嫌いとか、そう言うわけではない。
 問題はユキ。
 こいつの方が、絶対的な力が強いのが許せない。

 あなたの愛が、私に力を与えてくれるのぉ、とまあ吸い取っている。

 さてさて、無事にクリシュトフ王国での調印が終わり、落ち着いた頃。
 空にスクリーンが現れる。

 どこという明示はない。
 だが、明らかにどこかの大陸。
 空には、神々の船が浮かび、様子を俯瞰している様子。

 それは突然始まった。
 雷が隙間無く降り注ぎ、地が沸き立ち燃え上がる。
 生きとし生けるもの、全てを焼き尽くす勢い。
 だが微生物や小動物植物などは全て、一瞬で亜空間へと避難。

 焼き尽くされたのは愚かな人々のみ。
 欲にまみれた罪人達。

「これは?」
 王が誰に聞くともなく発した言葉……
「終末の日」
 アデルはにっこりと笑いながら答える。
「愚者の終焉です」

「愚者の…… 終焉ですか……」
 今回調印を行わなければ、こうなっていた事を理解した王は青くなる。

 まあ無論、無差別に行ったわけではない。
 滅された連中、薬物の常用と精神的に、そう…… 闇へと落ちていた。
 情報を集めて、救いはないと判断された。

 そして、それを行っていたのが、教会だよ……
 国境を特権で自由に行き来して、各国の指導者を洗脳して悪意をはびこらせていた。
 それはもう…… 救えない事はなかったが、滅してしまおうと決まった。

 聖書にも書かれている、飴と鞭。
 粛正と救済。
 これこそが神とまあ……

「良いんじゃ無いでしょうか?」
 なぜかユキまで、そんな事を…… 
 皆がロニー化している?

 まあそうではなく、ヨシュートのこと意外に興味が無いだけ。
 
 その日、惑星エマージはでは、国同士の争いは消え、ものすごい量の無線が飛び交った。

 少なくとも、三つの大国が消え去った。と言うもの。

 空に浮かんでいた船の事は知っている。
 世界中どこでも、今も主都の近くに浮いているのだ。
 

「どっ、どうすれば……」
「王様、もし仮に神でなくとも和平をお結びください。あの船、我が国など一瞬で消し去ることが出来るようでございます。神でも悪魔でも問題ありません。生き残る為でございます」
 そんな話が、一気にまとまったようだ。

 さて国がなくなった大陸。
 船から何が起こったのかを見ていた民達。
 降下を始めた船から見ていると、いきなり焼け野原だった所が一気に芽吹く。
 遠くまで焼けただれ、岩石だけだった。

 それは一面色とりどりの花が咲き乱れ、山を源流とする静謐な水が川を創り、流れ始める。
 まとまって、木々が生え始めて、森が形成される。

 気がつけば、動物たちが、何があったのかという感じでオロオロしている。

 平野部の一角に、いきなり街が生えてきた。

 その周囲には、びしっと区画整理されて畑が出来上がり、そこにも家がいくつか建ち並ぶ。

 滅ぼす前の状況をある程度把握して、整備しながら元のように直していく。
 街道も、高低差なくびしっと整備。

 そうヨシュートの得意技を、一段階昇華して建設していく。
 今、力を使っているのは、アデルである。

 情報解析の力、創造力全てが私の方が上よ。
 そんな感じで胸を張る。

 面白くないのはユキ。
 どこからか、舌打ちが聞こえる。
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