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依頼者シュザンヌ嬢は微笑む
第8話 場所
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「こっちだ」
ユスティの足は、出かけるときには過労で重かったが、今はそれとは違う足取り。
過労はまあ仕方が無いだろう、二日分まとめて可愛がったからな。
今朝ベッドから出て、そのまま倒れ込んだくらいだ。
足が立たなかったらしい。
光の魔法。
治癒を掛けてみたら使えた。
「あっ、えっ、おまそれ…… 人前では使うな」
そう言ってまた、首を絞められてしまった。
なんか癖になりそう。
ちょっとこう、くらっとくるのが気持ちいいかも。
それでまあ、道行く人に笑われながら、ギルドに向かう。
「ロープやめない?」
「やだ」
今日は後ろ手ではなく、腰に巻かれている。
ギルドに入っても、クスクスが聞こえる。
壁の依頼を見ていると、あの子がやって来た。
伝えなきゃ。
近くへ走っていく。
当然だが、ユスティは引きずられる。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
近くで見ると、かなりやつれた感じだ。
「魔力中毒症の薬なら、薬処安心堂へ行ってみな。店主アバドンに聞けば判るから」
「えっ? 本当ですか?」
いきなり表情が明るくなる。
「ああ、もう薬ができているはずだ」
「ありがとうございます。これで息子が助かります」
そう言って彼女は、ものすごい笑顔。
「えっ、息子?」
「はい。三歳の息子です。ずっと苦しそうで辛かったんです」
なぜか、ものすごい脱力感。
「ああ。薬のことは、言いふらさないようにね」
「はい。ありがとうございます」
笑顔で彼女を見送り、その後俺はがっくしと膝をつく。
ユスティは、床に寝転がりながら嬉しそうに笑っている。
「息子ねえ、良い事をしたな。良かったじゃないか。お前の力で、彼女の息子さんが元気になって」
「やかましい」
すると、カーラが近寄ってきて教えてくれる。
「ジェリオくん三歳。シュザンヌさんの息子で、シュザンヌさんは十八歳なのよね。若く見えるけれど。十八歳だと、カグラくんより随分と歳上じゃない。私なら十七歳だから若いわよ」
一歳の差をすごく力を込めて言う。
背後で笑っていた、ユスティの顔が引きつる。
「魔力茸の採取をしようと思ったが、やめるぞ」
「えー、今が納品の旬なのに。国境で何かもめているみたいよ」
「また戦争か?」
「さあ? んーとこれね」
勝手に依頼書を取り、サインをして俺達に手渡された。
まあそうして、外に出るとロープは外された。
「危険だからな」
そう言っててくてく歩き、途中から街道を逸れて、山に向かって歩いて行く。
「本当なら、家族にだって、魔力茸の生えているところは教えないんだ」
「へー舞茸みたいだな」
「マイタケ? 何だそりゃ?」
「茸、美味いらしい」
「へえ、どこにでもそんなのがあるんだ」
途中でいきなり止まり、ちょっとした瓦礫の積み上がった小山に向かって、ユスティはじっと見つめはじめる。
「何だ?」
「ああ此処に、ジルヴィが埋まってる。五年くらいコンビを組んでいたんだが、上から落ちてな」
「そうなのか」
そうと判れば、俺も拝んでおく。
それで、足が重い感じだったのか。
崖は、摂理にそって割れたような切り立った崖。
そこの一部にへこみを見つけた。
「言っていたのは、あそこか?」
「そうだ。あそこの途中から、下に降りられる」
そう言って、崖を指さす。
そして回り込み、山の上へ上がっていく。
妙に、ユスティが周囲を警戒する。
「どうした?」
「普段いないはずのオークに出会ったんだ、それに追われて、ジルヴィは足を滑らせた」
三日前に覚えた周辺探査。
魔力を放出して、レーダーのように広げる。
普段は、全方位放出で、十メートル範囲だが、少し遠くまで探る。
「これか? あっちだ」
東の方三キロくらい向こうに、集落っぽいのがあるが普段感じる魔力と違う。
「どうした?」
「向こうに集落がある」
そう言って、東を指さす。
「向こうに? 盗賊か?」
「いやあ、魔力が人間のものと違う」
「それ、おまえ。オークならギルドに報告をしないと」
そう言って、あたふたし始める。
「それも良いが、捕まっているのか、人間の反応もあるぞ?」
「ああ餌と繁殖用だ」
「繁殖? それに餌って人間の食用って聞いたぞ。オークって食えるんだろ」
「おお美味いぞ」
何か感覚が違うようだ。
「一応、見に行くか」
「バカやめろ、それに岩場の確認と魔力茸はどうする」
「あーそうだな。忘れてた。行こう」
そうして、一応降りる所を教えて貰うが、足を掛ける出っ張りは十センチあったりなかったり。
手を掛けるところも少ない。
「ユスティ。これは道とは言わん」
「十分だろう」
そう言って、すいすいと移動していく。
慣れたものだな。
だがふと気になる。
「ジルヴィは、もっと胸があったんじゃないか?」
「よく知っているな」
落ちた理由が分かった。
かわいそうに……
トラバースを二十メートルほど。
すると、下から見えていたくぼみへと到着。
「ここか」
「そうだ」
片側の切り欠けたコの字型、片側に柵でも付ければいけそうだ。これなら奴らも、逃げられないだろう。
問題は、周囲の山。簡単に上から見えてしまう。
少し改造しよう。
魔力茸は周りの山から、湧水がにじみ出ている所に群生していた。イメージはキクラゲ?
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
「おい待て、どこに」
「村が本当にオークかの確認、盗賊だったらギルドも困るだろ」
「それはそうだが…… 手は出すなよ」
「わかった」
ユスティの足は、出かけるときには過労で重かったが、今はそれとは違う足取り。
過労はまあ仕方が無いだろう、二日分まとめて可愛がったからな。
今朝ベッドから出て、そのまま倒れ込んだくらいだ。
足が立たなかったらしい。
光の魔法。
治癒を掛けてみたら使えた。
「あっ、えっ、おまそれ…… 人前では使うな」
そう言ってまた、首を絞められてしまった。
なんか癖になりそう。
ちょっとこう、くらっとくるのが気持ちいいかも。
それでまあ、道行く人に笑われながら、ギルドに向かう。
「ロープやめない?」
「やだ」
今日は後ろ手ではなく、腰に巻かれている。
ギルドに入っても、クスクスが聞こえる。
壁の依頼を見ていると、あの子がやって来た。
伝えなきゃ。
近くへ走っていく。
当然だが、ユスティは引きずられる。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
近くで見ると、かなりやつれた感じだ。
「魔力中毒症の薬なら、薬処安心堂へ行ってみな。店主アバドンに聞けば判るから」
「えっ? 本当ですか?」
いきなり表情が明るくなる。
「ああ、もう薬ができているはずだ」
「ありがとうございます。これで息子が助かります」
そう言って彼女は、ものすごい笑顔。
「えっ、息子?」
「はい。三歳の息子です。ずっと苦しそうで辛かったんです」
なぜか、ものすごい脱力感。
「ああ。薬のことは、言いふらさないようにね」
「はい。ありがとうございます」
笑顔で彼女を見送り、その後俺はがっくしと膝をつく。
ユスティは、床に寝転がりながら嬉しそうに笑っている。
「息子ねえ、良い事をしたな。良かったじゃないか。お前の力で、彼女の息子さんが元気になって」
「やかましい」
すると、カーラが近寄ってきて教えてくれる。
「ジェリオくん三歳。シュザンヌさんの息子で、シュザンヌさんは十八歳なのよね。若く見えるけれど。十八歳だと、カグラくんより随分と歳上じゃない。私なら十七歳だから若いわよ」
一歳の差をすごく力を込めて言う。
背後で笑っていた、ユスティの顔が引きつる。
「魔力茸の採取をしようと思ったが、やめるぞ」
「えー、今が納品の旬なのに。国境で何かもめているみたいよ」
「また戦争か?」
「さあ? んーとこれね」
勝手に依頼書を取り、サインをして俺達に手渡された。
まあそうして、外に出るとロープは外された。
「危険だからな」
そう言っててくてく歩き、途中から街道を逸れて、山に向かって歩いて行く。
「本当なら、家族にだって、魔力茸の生えているところは教えないんだ」
「へー舞茸みたいだな」
「マイタケ? 何だそりゃ?」
「茸、美味いらしい」
「へえ、どこにでもそんなのがあるんだ」
途中でいきなり止まり、ちょっとした瓦礫の積み上がった小山に向かって、ユスティはじっと見つめはじめる。
「何だ?」
「ああ此処に、ジルヴィが埋まってる。五年くらいコンビを組んでいたんだが、上から落ちてな」
「そうなのか」
そうと判れば、俺も拝んでおく。
それで、足が重い感じだったのか。
崖は、摂理にそって割れたような切り立った崖。
そこの一部にへこみを見つけた。
「言っていたのは、あそこか?」
「そうだ。あそこの途中から、下に降りられる」
そう言って、崖を指さす。
そして回り込み、山の上へ上がっていく。
妙に、ユスティが周囲を警戒する。
「どうした?」
「普段いないはずのオークに出会ったんだ、それに追われて、ジルヴィは足を滑らせた」
三日前に覚えた周辺探査。
魔力を放出して、レーダーのように広げる。
普段は、全方位放出で、十メートル範囲だが、少し遠くまで探る。
「これか? あっちだ」
東の方三キロくらい向こうに、集落っぽいのがあるが普段感じる魔力と違う。
「どうした?」
「向こうに集落がある」
そう言って、東を指さす。
「向こうに? 盗賊か?」
「いやあ、魔力が人間のものと違う」
「それ、おまえ。オークならギルドに報告をしないと」
そう言って、あたふたし始める。
「それも良いが、捕まっているのか、人間の反応もあるぞ?」
「ああ餌と繁殖用だ」
「繁殖? それに餌って人間の食用って聞いたぞ。オークって食えるんだろ」
「おお美味いぞ」
何か感覚が違うようだ。
「一応、見に行くか」
「バカやめろ、それに岩場の確認と魔力茸はどうする」
「あーそうだな。忘れてた。行こう」
そうして、一応降りる所を教えて貰うが、足を掛ける出っ張りは十センチあったりなかったり。
手を掛けるところも少ない。
「ユスティ。これは道とは言わん」
「十分だろう」
そう言って、すいすいと移動していく。
慣れたものだな。
だがふと気になる。
「ジルヴィは、もっと胸があったんじゃないか?」
「よく知っているな」
落ちた理由が分かった。
かわいそうに……
トラバースを二十メートルほど。
すると、下から見えていたくぼみへと到着。
「ここか」
「そうだ」
片側の切り欠けたコの字型、片側に柵でも付ければいけそうだ。これなら奴らも、逃げられないだろう。
問題は、周囲の山。簡単に上から見えてしまう。
少し改造しよう。
魔力茸は周りの山から、湧水がにじみ出ている所に群生していた。イメージはキクラゲ?
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
「おい待て、どこに」
「村が本当にオークかの確認、盗賊だったらギルドも困るだろ」
「それはそうだが…… 手は出すなよ」
「わかった」
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