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王都ヴァハマー、ギルド受付嬢のマリレーナ
第22話 農場と異変
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「ありがとう。思ったより早くて助かったよ。他の人達は遅れているのかい?」
農場の親父さんと、働いている若い衆が和やかな顔で迎えてくれる。
ただ、農民にしては、目がギラギラしている。
腕まくりをしている腕には、剣で切られたような傷跡もある。
盗賊か? そう思ったが、行動の端々に上品さが漂う。
「いや、俺達は二人だけだ」
「二人だけ?」
「あの依頼料じゃ仕方が無いだろう」
おれは、一応常識を伝える。
「そうなのか……」
おやっさんは、落ち込んでしまうが、それはそれで俺達に対して失礼だぞ。
「まあ良いだろ、仕事はする。狼はどっちから来るんだ?」
「大体はあっちの山だが、日によって少し違う」
そう言って、南側の山を指さす。
この農場では、羊やヤギを飼っているようだ。
そうして俺は、周囲探査を行う……
「うん?」
範囲を広げていく……
「かなり遠くから来ているのか?」
「どうしたの? 居た?」
「居ない」
「どうして? 狼なら縄張りが決まっているはずでしょ?」
「そうだな」
そうして、探査を広げていると呼ばれた。
「まあ飯にしよう」
ニコニコとまあ、笑顔で呼ばれた。
テーブルには、質素だが芋と他の野菜が入った煮物が置いてあった。
「頂きます」
俺と、ディアナは頂きますをする。
俺がしていたので、マネをし始めた。
座った椅子は適当。
皆が手を付けるまで待って食い始める。
毒は無さそうだ。
ディアナはすぐに食い始めるから、反応を待ってから食べるのが最近癖になっている。
うーん。煮物だ。
独特の臭みに苦み、えぐみがその奥に潜んでいる。
一見肉じゃがだが、全く違う。
ただ、わずかに素材の甘みも感じる。
塩っ気も無し。
だが食えるだけ、ましだと知っている。
ただ軽く湯通しをするだけで、多分大分違うだろう。
そして、この臭み、何の肉だ?
「この匂い、狼さんですね」
ディアナが味というか、匂いを知っていたらしい。
「ああ来たときに、数頭狩ったんだ」
若い衆の一人が胸を張る。
「数頭?」
「ああ、二匹いや三匹だったかな?」
「そんな物だな」
不用意にそう言って、睨まれる若い男。
「君達は二人で来るということは、強いのかね」
唐突にオッサンから聞かれる。
「カグラは強いよ。一人でオークの村を潰せるみたいだし」
張り切って秘密、個人情報を暴露するディアナ……
「ほう。オークの集落を。若いのに金級かね?」
「いえ銀です」
タグになっているプレートを見せる。
「なるほど、嬢ちゃんも強いのかね」
「いえ、私は鉄です」
ぼしょぼしょと答える。
「それは…… まああれか……」
何を思ったのか? それは判らんが、オッサンの表情が一瞬下種な感じとなった。
でだ、切り出してきた。
「君らは、今の王についてどう思っている?」
目付きが変わり、周りの奴らも顔つきが代わる。
うーんどっちだろう?
だけど農園を営み、慣れた感じだった。
王に対する反乱分子を、面接のように聞き出す?
まあ集めて一網打尽という事もやりそうではあるが……
反乱分子が、潜んで同志を募るというのもありえる。
「どっちだ? 王を倒したいのか、守りたいのか?」
「貫様」
テーブルの脚に隠していた剣だな。
剣が鞘から、わずかに抜ける音がする。
「物騒だな。敵対するなら切るぞ」
威圧と殺気を振りまく。
なぜか、ディアナが引っくり返る。
「えっなに、うぴゃあぁ」
支えに行ったおかげで、左手が塞がってしまった。
「ビクンビクンじゃねえ、起きろ」
「はがっ?? えっ、何一体?」
「単なる威圧だ」
それだけで、彼らは集まり相談を始める。
だがその言葉の端々に、伯爵とか男爵とかそんな言葉が聞こえる。
「あーすまない。説明をしよう」
オッサンに変わり、若い男。
二十二歳とかその辺り?
ちなみにオッサンは、もう五十近くかな?
「我らは、今の王により追放された者達。君達が知っているかどうかは知らないが、そうだな、六年ほど前から今の王は暗躍を始めた」
すると横で、うんうんと頷いていた男が喋り始める。
「そう兄君が、王太子と決定した年だ」
そして別の男が……
「権力者をとりまとめて、王位を転覆。王太子を殺害して自身がその位置についた」
そこまで聞いて、つい気になり聞いてしまった。
「その順番に喋るのは、何かの決まりでも?」
「いやそんな物は無い」
変なことを聞いたらしく困惑された。
「それで君達に依頼を出して、同士を……」
俺は、手を上げて言葉を遮る。
口元で人差し指を立てて静にと。
「それは何の合図かね?」
聞かれる。
どうも黙れというのは、右手の平で口を覆うらしい。
そういえば、ギルドの依頼中にユスティにされて、手の平を舐めたら、彼女が変な声を出したのに俺が殴られたが、そう言う意味だったのか。
「外にお友達がたくさん来ましたが、今日、集会の予定でも入っていました?」
「いや出してはいない」
「百くらいですね」
「何?」
農場は、狼では無く、兵に囲まれた。
「兵隊ぽいな」
「何だと」
そう言うと、すぐに灯りが消える。
今日は、新月。月の明かりは全くない。
こそっとドアを開けて、外に出る。
無論ディアナの手を引いている。
口を押さえて、屋根まで飛び上がる。
「ふぐうぅ」
「叫ぶな、喋るな」
小声で叫ぶ。
「さて、何が起こるのか見せて貰おう」
農場の親父さんと、働いている若い衆が和やかな顔で迎えてくれる。
ただ、農民にしては、目がギラギラしている。
腕まくりをしている腕には、剣で切られたような傷跡もある。
盗賊か? そう思ったが、行動の端々に上品さが漂う。
「いや、俺達は二人だけだ」
「二人だけ?」
「あの依頼料じゃ仕方が無いだろう」
おれは、一応常識を伝える。
「そうなのか……」
おやっさんは、落ち込んでしまうが、それはそれで俺達に対して失礼だぞ。
「まあ良いだろ、仕事はする。狼はどっちから来るんだ?」
「大体はあっちの山だが、日によって少し違う」
そう言って、南側の山を指さす。
この農場では、羊やヤギを飼っているようだ。
そうして俺は、周囲探査を行う……
「うん?」
範囲を広げていく……
「かなり遠くから来ているのか?」
「どうしたの? 居た?」
「居ない」
「どうして? 狼なら縄張りが決まっているはずでしょ?」
「そうだな」
そうして、探査を広げていると呼ばれた。
「まあ飯にしよう」
ニコニコとまあ、笑顔で呼ばれた。
テーブルには、質素だが芋と他の野菜が入った煮物が置いてあった。
「頂きます」
俺と、ディアナは頂きますをする。
俺がしていたので、マネをし始めた。
座った椅子は適当。
皆が手を付けるまで待って食い始める。
毒は無さそうだ。
ディアナはすぐに食い始めるから、反応を待ってから食べるのが最近癖になっている。
うーん。煮物だ。
独特の臭みに苦み、えぐみがその奥に潜んでいる。
一見肉じゃがだが、全く違う。
ただ、わずかに素材の甘みも感じる。
塩っ気も無し。
だが食えるだけ、ましだと知っている。
ただ軽く湯通しをするだけで、多分大分違うだろう。
そして、この臭み、何の肉だ?
「この匂い、狼さんですね」
ディアナが味というか、匂いを知っていたらしい。
「ああ来たときに、数頭狩ったんだ」
若い衆の一人が胸を張る。
「数頭?」
「ああ、二匹いや三匹だったかな?」
「そんな物だな」
不用意にそう言って、睨まれる若い男。
「君達は二人で来るということは、強いのかね」
唐突にオッサンから聞かれる。
「カグラは強いよ。一人でオークの村を潰せるみたいだし」
張り切って秘密、個人情報を暴露するディアナ……
「ほう。オークの集落を。若いのに金級かね?」
「いえ銀です」
タグになっているプレートを見せる。
「なるほど、嬢ちゃんも強いのかね」
「いえ、私は鉄です」
ぼしょぼしょと答える。
「それは…… まああれか……」
何を思ったのか? それは判らんが、オッサンの表情が一瞬下種な感じとなった。
でだ、切り出してきた。
「君らは、今の王についてどう思っている?」
目付きが変わり、周りの奴らも顔つきが代わる。
うーんどっちだろう?
だけど農園を営み、慣れた感じだった。
王に対する反乱分子を、面接のように聞き出す?
まあ集めて一網打尽という事もやりそうではあるが……
反乱分子が、潜んで同志を募るというのもありえる。
「どっちだ? 王を倒したいのか、守りたいのか?」
「貫様」
テーブルの脚に隠していた剣だな。
剣が鞘から、わずかに抜ける音がする。
「物騒だな。敵対するなら切るぞ」
威圧と殺気を振りまく。
なぜか、ディアナが引っくり返る。
「えっなに、うぴゃあぁ」
支えに行ったおかげで、左手が塞がってしまった。
「ビクンビクンじゃねえ、起きろ」
「はがっ?? えっ、何一体?」
「単なる威圧だ」
それだけで、彼らは集まり相談を始める。
だがその言葉の端々に、伯爵とか男爵とかそんな言葉が聞こえる。
「あーすまない。説明をしよう」
オッサンに変わり、若い男。
二十二歳とかその辺り?
ちなみにオッサンは、もう五十近くかな?
「我らは、今の王により追放された者達。君達が知っているかどうかは知らないが、そうだな、六年ほど前から今の王は暗躍を始めた」
すると横で、うんうんと頷いていた男が喋り始める。
「そう兄君が、王太子と決定した年だ」
そして別の男が……
「権力者をとりまとめて、王位を転覆。王太子を殺害して自身がその位置についた」
そこまで聞いて、つい気になり聞いてしまった。
「その順番に喋るのは、何かの決まりでも?」
「いやそんな物は無い」
変なことを聞いたらしく困惑された。
「それで君達に依頼を出して、同士を……」
俺は、手を上げて言葉を遮る。
口元で人差し指を立てて静にと。
「それは何の合図かね?」
聞かれる。
どうも黙れというのは、右手の平で口を覆うらしい。
そういえば、ギルドの依頼中にユスティにされて、手の平を舐めたら、彼女が変な声を出したのに俺が殴られたが、そう言う意味だったのか。
「外にお友達がたくさん来ましたが、今日、集会の予定でも入っていました?」
「いや出してはいない」
「百くらいですね」
「何?」
農場は、狼では無く、兵に囲まれた。
「兵隊ぽいな」
「何だと」
そう言うと、すぐに灯りが消える。
今日は、新月。月の明かりは全くない。
こそっとドアを開けて、外に出る。
無論ディアナの手を引いている。
口を押さえて、屋根まで飛び上がる。
「ふぐうぅ」
「叫ぶな、喋るな」
小声で叫ぶ。
「さて、何が起こるのか見せて貰おう」
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