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最悪な国、ニコ国
第25話 盗賊退治
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カグラはディアナを連れたまま、ズィクムントの町へ戻ってきていた。
ギルドに姉御、ユスティが死んだことを伝えるために。
レーナとフィネッティは、黄昏の五人から報告は受けていたが、行方不明と聞いていたカグラを見て喜んだ。
つい、カウンターから飛び出して、抱きついてしまう。
「カグラくん無事だったのね」
レーナの顔は、事情が分かっているため一見すると悲しそうだが、心の中は……
帰ってきたぁ、もうユスティさんは居ない。
傷心の彼を慰めて…… でゅふふ。
抱きしめて頬ずりをする。
ああこれだけで、逝ってしまいそう……
レーナの体が反応して、わずかだが淫靡な匂いがただよい始める。
当然、むっつりフィネッティも同じだ。
ああ帰って来た。
消息不明と聞いたとき、泣き暮らした三日間。
良かったわ。彼女が亡くなった心を、私が癒やしてあげる……
揃って同じ事を考えていた。
当然そんな光景に、ギルド内は騒然となる。
年頃の受付嬢、 フィネッティは別だが、レーナに好意を持つ野郎どもは多い。
「カグラ、離れろよぉ」
怒声が響く。
「そうだそうだ」
ただ現実、張り付いているのは、女の子二人の方。
カグラは立っているだけ。
「なんの騒ぎだ。ああっ?」
タイミング良くやって来たギルド長。
カウンターに誰も居ないことを発見。
たまに突っ走った冒険者が、担当者に手を出そうとすることがある。
周囲に威圧が撒き散らかされ、空気が変わる。
だが、一部の空気がピンク色。
それを見つけたとき、アンジェラ=ベレフキナの目がクワッと開き、カウンターを飛び越すと縮地のような動きで三人に詰め寄り、怪しい匂いを出しているレーナ達を引っぺがして、カグラに抱きつく。
すべては一瞬。
それは、並みの冒険者では見えない動きだった。
「カグラ無事だったのか? あいつは残念だったな。これからは俺が面倒を見てやる」
威厳など無く、すりすりしながら、これ幸いとそんな事を明言。
「いえ結構です。ギルド長には話しがあったので、丁度良かった。ギルドランクの話しと、メンバーの追加をお願いします」
当然だが、きっぱりと断る。
「はっ?」
メンバーの追加?
そこにいた、アンジェラ、レーナ、フィネッティの目が、カグラの背後で呆然としている女の子に向けられる。
その目には、明確な殺意が浮かんでいる。
それを感じて、ディアナは思わず数歩さがってしまう。
ここってギルドよねぇ、なんでこんな怖い人ばかり居るの?
何この女? 普通じゃないの。
絶対、私の方が良い。
ディアナを見て、三人共にそう考えた。
ユスティには、遠慮をしていたカウンターの二人。
ギルド長であるアンジェラも、ユスティには同チームだった遠慮みたいなものがあった。
だが、今目の前にいる、おびえた子鹿のような女は、若いだけで普通だ。
此処で静に、女の闘志が燃え上がり始める。
それは、周囲にもピリピリとした空気感が、感じられるほどであった。
酒場側にいる冒険者達もそれを感じて、幾人かが生唾を飲み込んでしまう。
「ディアナ」
アンジェラが、がっしりと抱えていたはずなのに、カグラは平然と抜け出す。
それは、脱力という名の奥義。
あらゆる武道に共通する技である。
「あれ? なんで」
アンジェラは困惑をする。
本当に、するっと抜けられてしまった。
和やかにやって来るカグラを見て安心して、ディアナは駆け寄り張り付く。
カグラにまとわりついた他人の匂いに、少し腹が立つが仕方が無い。
「この子だ、ダミアン王国王都ヴァハマーから移動。当分は俺と行動する」
「チッ」
誰かの舌打ちが聞こえる。
「それでさっきの話だが…… ギルドマスターどうした?」
まだ、カグラに抜けられた事に驚いていた。
「ああ、アンジェラでいい。いや、アンジェラと呼べ」
「判った、アンジェラだな」
「ああ」
はううっ、名前を呼ばれただけで、俺の体が反応をする。
これが本当の恋なのかぁ。
そんな、少しおかしな状況は、時間が経ち少しましになる。
応接室に引っ張り込まれた二人。
「ギルドランクは面倒だしそれで良いが、実績がなあ。戦場で多分がお前がやっただろうと言う話はあるが、まともな情報が無い。赤い光を纏った奴がダミアン王国を倒したという魔人伝説があるようだが」
「えっ、あれカグラなの?」
ディアナが驚く。
赤い魔人が戦場に現れて、数千に及ぶ国軍が消滅をしたという話しは聞いていた。
それは伝承に残る、魔王では無いかとも言われていた。
「その件は覚えていない。気がつけば農家に助けられていた」
覚えているが、しらを切る。
怒りにまかせた大量虐殺。
助けてくれた農民達の父親や旦那がいたことを知り、後から、少しだけ反省をした。そう興味の無い奴らに対する、憐憫の情などは、カグラの心に戻って来ていない。
「まあ、お前なら問題ないだろう。これをこなせ。そうすれば、そこのお嬢ちゃんもランクを上げてやる」
出された依頼は、ダミアン王国の迂回路。
そこに出てくる盗賊達の退治。
普通なら、ギルドの上位が総出で対応をしたいのだが、国の国境が絡まっているエリア。地図を見るとニコ国、ニスカ国、ヴァーラ国、ダミアン国の緩衝地帯?
主街道は、この国ヴァーラ国とダミアン国を通っている。
迂回するルートは、ダミアン国の南側で国境を接するニコ国、ニスカ国の間を通っている。
「ニコ国の王も、最近変わったらしくてな。文句が多いんだ。そのため、あまり大規模な行動が出来なくてな」
アンジェラは不機嫌そうな顔になる。
「なるほど、盗賊にしては、結構頭が賢いのかな?」
「ああ、これを渡しておこう」
「これは?」
「お尋ね者の人相書き。こいつらなら、誰か一人でも結構な手柄になる。盗賊達も数人切れば良いぞ。試験がてらだから、『境界の向こう』というチームと一緒に行ってくれ」
いつも不思議だが、書かれた文字だと『境界の向こう』なのだが、声はビヨンドザボーダーみたいに聞こえる。
「判った」
俺達は試験を引き受けた。
ギルドに姉御、ユスティが死んだことを伝えるために。
レーナとフィネッティは、黄昏の五人から報告は受けていたが、行方不明と聞いていたカグラを見て喜んだ。
つい、カウンターから飛び出して、抱きついてしまう。
「カグラくん無事だったのね」
レーナの顔は、事情が分かっているため一見すると悲しそうだが、心の中は……
帰ってきたぁ、もうユスティさんは居ない。
傷心の彼を慰めて…… でゅふふ。
抱きしめて頬ずりをする。
ああこれだけで、逝ってしまいそう……
レーナの体が反応して、わずかだが淫靡な匂いがただよい始める。
当然、むっつりフィネッティも同じだ。
ああ帰って来た。
消息不明と聞いたとき、泣き暮らした三日間。
良かったわ。彼女が亡くなった心を、私が癒やしてあげる……
揃って同じ事を考えていた。
当然そんな光景に、ギルド内は騒然となる。
年頃の受付嬢、 フィネッティは別だが、レーナに好意を持つ野郎どもは多い。
「カグラ、離れろよぉ」
怒声が響く。
「そうだそうだ」
ただ現実、張り付いているのは、女の子二人の方。
カグラは立っているだけ。
「なんの騒ぎだ。ああっ?」
タイミング良くやって来たギルド長。
カウンターに誰も居ないことを発見。
たまに突っ走った冒険者が、担当者に手を出そうとすることがある。
周囲に威圧が撒き散らかされ、空気が変わる。
だが、一部の空気がピンク色。
それを見つけたとき、アンジェラ=ベレフキナの目がクワッと開き、カウンターを飛び越すと縮地のような動きで三人に詰め寄り、怪しい匂いを出しているレーナ達を引っぺがして、カグラに抱きつく。
すべては一瞬。
それは、並みの冒険者では見えない動きだった。
「カグラ無事だったのか? あいつは残念だったな。これからは俺が面倒を見てやる」
威厳など無く、すりすりしながら、これ幸いとそんな事を明言。
「いえ結構です。ギルド長には話しがあったので、丁度良かった。ギルドランクの話しと、メンバーの追加をお願いします」
当然だが、きっぱりと断る。
「はっ?」
メンバーの追加?
そこにいた、アンジェラ、レーナ、フィネッティの目が、カグラの背後で呆然としている女の子に向けられる。
その目には、明確な殺意が浮かんでいる。
それを感じて、ディアナは思わず数歩さがってしまう。
ここってギルドよねぇ、なんでこんな怖い人ばかり居るの?
何この女? 普通じゃないの。
絶対、私の方が良い。
ディアナを見て、三人共にそう考えた。
ユスティには、遠慮をしていたカウンターの二人。
ギルド長であるアンジェラも、ユスティには同チームだった遠慮みたいなものがあった。
だが、今目の前にいる、おびえた子鹿のような女は、若いだけで普通だ。
此処で静に、女の闘志が燃え上がり始める。
それは、周囲にもピリピリとした空気感が、感じられるほどであった。
酒場側にいる冒険者達もそれを感じて、幾人かが生唾を飲み込んでしまう。
「ディアナ」
アンジェラが、がっしりと抱えていたはずなのに、カグラは平然と抜け出す。
それは、脱力という名の奥義。
あらゆる武道に共通する技である。
「あれ? なんで」
アンジェラは困惑をする。
本当に、するっと抜けられてしまった。
和やかにやって来るカグラを見て安心して、ディアナは駆け寄り張り付く。
カグラにまとわりついた他人の匂いに、少し腹が立つが仕方が無い。
「この子だ、ダミアン王国王都ヴァハマーから移動。当分は俺と行動する」
「チッ」
誰かの舌打ちが聞こえる。
「それでさっきの話だが…… ギルドマスターどうした?」
まだ、カグラに抜けられた事に驚いていた。
「ああ、アンジェラでいい。いや、アンジェラと呼べ」
「判った、アンジェラだな」
「ああ」
はううっ、名前を呼ばれただけで、俺の体が反応をする。
これが本当の恋なのかぁ。
そんな、少しおかしな状況は、時間が経ち少しましになる。
応接室に引っ張り込まれた二人。
「ギルドランクは面倒だしそれで良いが、実績がなあ。戦場で多分がお前がやっただろうと言う話はあるが、まともな情報が無い。赤い光を纏った奴がダミアン王国を倒したという魔人伝説があるようだが」
「えっ、あれカグラなの?」
ディアナが驚く。
赤い魔人が戦場に現れて、数千に及ぶ国軍が消滅をしたという話しは聞いていた。
それは伝承に残る、魔王では無いかとも言われていた。
「その件は覚えていない。気がつけば農家に助けられていた」
覚えているが、しらを切る。
怒りにまかせた大量虐殺。
助けてくれた農民達の父親や旦那がいたことを知り、後から、少しだけ反省をした。そう興味の無い奴らに対する、憐憫の情などは、カグラの心に戻って来ていない。
「まあ、お前なら問題ないだろう。これをこなせ。そうすれば、そこのお嬢ちゃんもランクを上げてやる」
出された依頼は、ダミアン王国の迂回路。
そこに出てくる盗賊達の退治。
普通なら、ギルドの上位が総出で対応をしたいのだが、国の国境が絡まっているエリア。地図を見るとニコ国、ニスカ国、ヴァーラ国、ダミアン国の緩衝地帯?
主街道は、この国ヴァーラ国とダミアン国を通っている。
迂回するルートは、ダミアン国の南側で国境を接するニコ国、ニスカ国の間を通っている。
「ニコ国の王も、最近変わったらしくてな。文句が多いんだ。そのため、あまり大規模な行動が出来なくてな」
アンジェラは不機嫌そうな顔になる。
「なるほど、盗賊にしては、結構頭が賢いのかな?」
「ああ、これを渡しておこう」
「これは?」
「お尋ね者の人相書き。こいつらなら、誰か一人でも結構な手柄になる。盗賊達も数人切れば良いぞ。試験がてらだから、『境界の向こう』というチームと一緒に行ってくれ」
いつも不思議だが、書かれた文字だと『境界の向こう』なのだが、声はビヨンドザボーダーみたいに聞こえる。
「判った」
俺達は試験を引き受けた。
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