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漁師。ダナ
第58話 繋がりは広く
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「それは大変だ」
「それだけなら良いが、領主 アクジーノ=フィクウサ伯爵や、さらに上位貴族。ツーゴウーノ=イーボース侯爵までご迷惑を掛けるからな」
どうやらこいつ、当たりのメンバーだったようだ。
色々詳しい。
「そうか。それで出荷はどうするんだ?」
「うーん。捜索は続けるが、人数をそろえて…… この際最低の十人でいいや。近くの村を襲うぞ」
あらら、そう思ったが、漁民区は塀で囲ったしまず安全。他は内陸だから、手を出していなかったがやばいかもな。
「数だけそろえれば、ごまかせるかな?」
歩きながら、適当に話しを振り色々と聞き出す。
「いや駄目だろ、向こうは酒場や色街だ。若くて見目の良い奴じゃないと買い取ってもらえねぇ」
そうか、街道沿いの宿場にいる子達は、こうやって売られたのか。
そうして、当然だが海辺へ向かうと立派な壁。
「なんだこりゃ」
夜間は、扉を閉めているし、攻城兵器でもなければドアは破れない。
俺は、飛び越せるもの。
「ちっ、次だ」
彼等の行く方向を見て、探査。
集落の詳細を頭の中に描き、一気に遠隔工事。
「なんだここもか? あのけちなジャイアノ=オーレンダ男爵が、民のためにこんな物を造るわけなどないし、どうなってんだ?」
まあどこへ行っても、同じ事。
結局彼等は、また捜索へと戻った。
まあ多分見つからないし、入れないだろうが。
通風口は、木の洞を通して作ってあるから、空を飛ばない限り見つからないだろう。
「それにしても、領主までが関わっているとはね。どこもかしこも腐っているな」
そんな事があった。
「―― まあそれは良い。さば節だけではなく、早く鰹が捕りたい」
片口鰯の煮干しや、さば節も良いが、鰹節と…… 醤油。
「そう言えば、大豆が無いのか見るのを忘れたままだ」
そんな事を考えながら、彼女達が暮らしている洞穴の上面。
排気口のカムフラージュを少し念入りにして、陸側を歩いて帰る。
そして、少し日当たりの良い法面をふと見ると、ツルマメが生えていた。
こいつは、ダイズの原種だと言われているが、蔓だし実も小さい。
だが、俺の中で何かが囁く。
願いながら育てなさい。然すれば望み叶う。
そんな、まるでおみくじの文言。そんな囁きが、声として頭の中に聞こえた気がする。
ダナの家へと帰り、家の前を少し耕して種を植える。
まだ、実のサイズは五ミリほど。
こいつは、育っても蔓草だが、大豆は自立する。
記憶にある大豆。
そうは言っても、あぜ道の端に植わっていて、実が熟す前に採られて、枝豆として食われていたが。
まあそれを思いながら、周りを回り始める。
なんとなく、傘をさして……
「何をしてるの?」
「うん? おまじない」
見ていて楽しそうだと思ったのか、ヴァイオレットが同じように回りはじめる。
どこかで見た光景。
おっきな狸? が居れば完璧だが、そんな生物はこの世界に来てまだ見ていない。
あの便利そうなバスも欲しい。
どこかに野良のバスがいないだろうか?
「ほい!!」
声をかけると、ふっと魔力が抜けた。
「あれ? ほい」
まただ……
見ると芽が出ている。
大体、田植え前に植えていた気がするから熟すまで四ヶ月くらいか?
「だが許さん。生えろ!!」
親父が、毎朝気合いを入れて洗面所で唱えていた呪文。
本人はそんな気は無かったのだろうが、その言葉は言霊として確かに効いていたようだ。―― いや何かを言葉に乗せていたのか?
いや、触れてはいけない事など誰にでもある。
ああくそ、米も欲しい。
願望が混ざり、見事に大豆の鞘がぶら下がった稲と、普通の稲穂がついた稲が生えた……
「気持ち悪い」
流石に、大豆の実った稲穂は重いのだろう。ものすごくしなっている。
「どこからシメーンを採ってきたの? えっ?もう一つはなに?」
ご近所さんのマリーナ。
ダナに子育ての仕方を教えて貰っている。
元々、様子を見かねて世話をしていたようだが、御礼を渡してお願いした。
銀貨を渡すと、なぜか、抱きたいのと聞かれた。
話しを聞くと、穀物はすべてシメーンで、稲っぽい物は山の方にある池近くに雑草として生えているらしい。
「探せば、他にも生えているかもしれないね」
あっさりとそう言われた。
そう言えば、ススキもイネ科だった気がする。
同じ様な感じで生えていたのか?
もう一回、大豆の種を植えて踊ってみる。
すると今度はまともな物が生えてきた。
昔遺伝子操作された大豆がとか言っていたが、自然界の交配種も同じなのか?
まあ、選択的に改良をするなら、交配も遺伝子操作も同じか?
「こんど、ひまわりサイズのハエトリグサでも創ってみるか?」
ふと考えたが、盗賊避けにはよくても、なんとなく怖そうだから考えるのをやめた。
俺が願うと、色々なことにこの世界が、従ってくれると考えたら怖い。
うん。これは、女神もあずかり知らない現象だった。
女神にドーピングされて創られた体が、どうやら世界の理を少しゆがめていることに誰も気がつかなかった。
世界は、今静かにカグラ寄りに票を集めていた。
この世界は、もっとおもしろくなると言わんばかりに。
目指せA1とばかりに、世界は少しずつ変化をしていた。
「それだけなら良いが、領主 アクジーノ=フィクウサ伯爵や、さらに上位貴族。ツーゴウーノ=イーボース侯爵までご迷惑を掛けるからな」
どうやらこいつ、当たりのメンバーだったようだ。
色々詳しい。
「そうか。それで出荷はどうするんだ?」
「うーん。捜索は続けるが、人数をそろえて…… この際最低の十人でいいや。近くの村を襲うぞ」
あらら、そう思ったが、漁民区は塀で囲ったしまず安全。他は内陸だから、手を出していなかったがやばいかもな。
「数だけそろえれば、ごまかせるかな?」
歩きながら、適当に話しを振り色々と聞き出す。
「いや駄目だろ、向こうは酒場や色街だ。若くて見目の良い奴じゃないと買い取ってもらえねぇ」
そうか、街道沿いの宿場にいる子達は、こうやって売られたのか。
そうして、当然だが海辺へ向かうと立派な壁。
「なんだこりゃ」
夜間は、扉を閉めているし、攻城兵器でもなければドアは破れない。
俺は、飛び越せるもの。
「ちっ、次だ」
彼等の行く方向を見て、探査。
集落の詳細を頭の中に描き、一気に遠隔工事。
「なんだここもか? あのけちなジャイアノ=オーレンダ男爵が、民のためにこんな物を造るわけなどないし、どうなってんだ?」
まあどこへ行っても、同じ事。
結局彼等は、また捜索へと戻った。
まあ多分見つからないし、入れないだろうが。
通風口は、木の洞を通して作ってあるから、空を飛ばない限り見つからないだろう。
「それにしても、領主までが関わっているとはね。どこもかしこも腐っているな」
そんな事があった。
「―― まあそれは良い。さば節だけではなく、早く鰹が捕りたい」
片口鰯の煮干しや、さば節も良いが、鰹節と…… 醤油。
「そう言えば、大豆が無いのか見るのを忘れたままだ」
そんな事を考えながら、彼女達が暮らしている洞穴の上面。
排気口のカムフラージュを少し念入りにして、陸側を歩いて帰る。
そして、少し日当たりの良い法面をふと見ると、ツルマメが生えていた。
こいつは、ダイズの原種だと言われているが、蔓だし実も小さい。
だが、俺の中で何かが囁く。
願いながら育てなさい。然すれば望み叶う。
そんな、まるでおみくじの文言。そんな囁きが、声として頭の中に聞こえた気がする。
ダナの家へと帰り、家の前を少し耕して種を植える。
まだ、実のサイズは五ミリほど。
こいつは、育っても蔓草だが、大豆は自立する。
記憶にある大豆。
そうは言っても、あぜ道の端に植わっていて、実が熟す前に採られて、枝豆として食われていたが。
まあそれを思いながら、周りを回り始める。
なんとなく、傘をさして……
「何をしてるの?」
「うん? おまじない」
見ていて楽しそうだと思ったのか、ヴァイオレットが同じように回りはじめる。
どこかで見た光景。
おっきな狸? が居れば完璧だが、そんな生物はこの世界に来てまだ見ていない。
あの便利そうなバスも欲しい。
どこかに野良のバスがいないだろうか?
「ほい!!」
声をかけると、ふっと魔力が抜けた。
「あれ? ほい」
まただ……
見ると芽が出ている。
大体、田植え前に植えていた気がするから熟すまで四ヶ月くらいか?
「だが許さん。生えろ!!」
親父が、毎朝気合いを入れて洗面所で唱えていた呪文。
本人はそんな気は無かったのだろうが、その言葉は言霊として確かに効いていたようだ。―― いや何かを言葉に乗せていたのか?
いや、触れてはいけない事など誰にでもある。
ああくそ、米も欲しい。
願望が混ざり、見事に大豆の鞘がぶら下がった稲と、普通の稲穂がついた稲が生えた……
「気持ち悪い」
流石に、大豆の実った稲穂は重いのだろう。ものすごくしなっている。
「どこからシメーンを採ってきたの? えっ?もう一つはなに?」
ご近所さんのマリーナ。
ダナに子育ての仕方を教えて貰っている。
元々、様子を見かねて世話をしていたようだが、御礼を渡してお願いした。
銀貨を渡すと、なぜか、抱きたいのと聞かれた。
話しを聞くと、穀物はすべてシメーンで、稲っぽい物は山の方にある池近くに雑草として生えているらしい。
「探せば、他にも生えているかもしれないね」
あっさりとそう言われた。
そう言えば、ススキもイネ科だった気がする。
同じ様な感じで生えていたのか?
もう一回、大豆の種を植えて踊ってみる。
すると今度はまともな物が生えてきた。
昔遺伝子操作された大豆がとか言っていたが、自然界の交配種も同じなのか?
まあ、選択的に改良をするなら、交配も遺伝子操作も同じか?
「こんど、ひまわりサイズのハエトリグサでも創ってみるか?」
ふと考えたが、盗賊避けにはよくても、なんとなく怖そうだから考えるのをやめた。
俺が願うと、色々なことにこの世界が、従ってくれると考えたら怖い。
うん。これは、女神もあずかり知らない現象だった。
女神にドーピングされて創られた体が、どうやら世界の理を少しゆがめていることに誰も気がつかなかった。
世界は、今静かにカグラ寄りに票を集めていた。
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