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精霊国。ソルヴェイ・オーセ・ネレム姫
第68話 失われた記憶
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「ここは?」
そう、見覚えのない。知らない天井だった。
茅のような、草で編んだ天井。
木の枝を複雑に編んだところに、さらに草を編み込んでいるようだ。
天井はドーム型。
室内にもきちんと梁が架けてあるが、木組みではなく、丸太を引っかけて草の紐で結んである。
その雑な造りになぜかムカッとくる。
「うん? 目が覚めましたか?」
優しそうなオッサンが覗き込んでいる。
「ここは?」
「ここは、我ら精霊族の王城。ご神木に造られた宮でございます」
「王城? マジで?」
つい聞いてしまう。
草葺きの屋根。いい加減な造りの柱。
これが王城?
「うん? ご神木?」
「左様。この世界において力を循環させる、大いなる力を持った木がご神木でございます」
そう言って、ものすごく嬉しそうな表情。
ベッドから降りて、起ち上げると体の動きがおかしい。
「お気をつけください。あなたは月が半分欠ける時間、寝ておられていたのです」
半月も?
「無論お世話は行っていました。ああ大丈夫。ご不浄は自身で浄化なさっていたようでございます」
あー何を言ってんだ? えーあーそうか、二週間寝ていたら出る物は出る。
自身で浄化? 浄化って何だ??
「オレは今日、休日だったはず。嫁さんと子どもを連れて、買い物と食事に行かなきゃ。夜には、週明けにクライアントへ出す資料をこそっとまとめて……」
そう上司にはできたと言ったが、まだ出来ていない。
ぶつぶつと、記憶を辿りながらオレはぼやく。
こんな所で寝ているなんて、飛行機に乗ったっけ? 飛行機が不時着をして、あれはアメリカのドラマ? 六個の数字が出てきて宝くじを買ったなあ。
混濁をしている記憶。
オレはふらふらと、外へ出ようとした。
まさか、ドアのない出入り口。
踏み出した先には、通路があったのだが、踏み板は幅四十センチくらいだろうか? そこを横切れば、当然空だ。
「おおっ。絶景だな」
側に見える巨大な木、その枝に小屋を造っていたようだ。
落下していきながらオレは、自身の終焉を理解する。
ビルの七階とか八階くらいの高さかなぁ。
人を巻き添えにしませんように。わざとじゃないんです。
オレは祈る。
祈りは通じたのか、誰も巻き添えにすることはなく、スチャッと足から着地。
きっと、一瞬で足はぐちゃぐちゃになり、股関節や背骨が砕けて……
「あれ? ちょっとジンときた。足は少し埋まったが、なんで?」
ふと某アニメの主人公を思い出す。
駄女神に不細工だと言われて、荒野の果てに落とされた、かわいそうな主人公。
そうか、あれと同じ感じなのかな?
地球は本当に、生物が生きるのにはキツい世界なのか。
ほら、見回せば周囲で驚いている顔は、皆美形だし、耳が長い?
そう言えばさっきの人も、耳が長かった気がする。
あれ? そうか、あの高さから落ちても平気なんて夢を見ているのか?
そうだ、オレはまだ小学生、午前中はプールへ行って、昼はきっとそうめんで、宿題をして、適当に検索をして絵日記を……
「大丈夫ですか?」
ほら、夢だから、ご都合で美人さんが目の前に……
私は竜の生け贄にならなければ、とか言うんだろう。
思わず目の前の美人さんを抱きしめる。
「大丈夫です。ここは中央コロニー。私はイツカン・ダロのスタージア」
それを聞いて、何か記憶の中に残っていた、何かが思い出される。
なんだろう? 何もかも懐かしい。あれは?
「まだ病み上がりなのです。上へ戻りましょう。さあお手を」
そう言って、彼女は俺を連れて上がっていく。ひたすらスロープを上へ上へと。
まあ、彼女が着ている丈の短い巫女装束? で、ハシゴとか上がるとなると目の行き場がなくなるだろうが。
そして再びベッドへ座らされる。
「何か、思い出されましたでしょうか?」
「何か、だって?」
「ええ、そんなにお辛そうな顔をされて、涙を流していらっしゃいますので。何かを思い出されたのかと」
気がついていないが、オレは泣いていた様だ。
最近は泣いてばかりだ、この世界へ来て……
「この世界? あれ? 何か……」
「思い出せませんか?」
実は幾度となく、カグラは目を覚ましては昏睡を繰り返していた。
シーサーペントに対して放った魔力衝撃波、それは彼の体に流れる魔力を乱した。
そして、長時間の酸素不足。
それらが、彼を壊した。
常人なら一生その影響から逃れられないが、カグラは超回復を行っていた。
ほとんど味のないかゆ。そして木の実を潰し焼き固めたクッキー。
その体内に内包する力、そして氏族が管理するコロニーで見かけないタイプの美形。
姫は意外とノリノリでカグラの世話をやっていた。
スタージア・クラース・オーセ姫二十二歳の初恋だった。
ただ危惧をするのは、他種族は意外と早く死んでしまうこと。
海辺に流れ着く者が居たりするが、百年も生きられない。
姫達は、千年近く生きられる。
そう、もし囲碁がこの世にあれば、神の一手に届くかもしれない。
少し元気になったカグラが作ったのは、リバーシだったのだが。
程なく、カグラの体は復調をして元気になったのだが、記憶の方を取り戻すまでは数年がかかり、さらに全部は無理だった様だ。
そう、見覚えのない。知らない天井だった。
茅のような、草で編んだ天井。
木の枝を複雑に編んだところに、さらに草を編み込んでいるようだ。
天井はドーム型。
室内にもきちんと梁が架けてあるが、木組みではなく、丸太を引っかけて草の紐で結んである。
その雑な造りになぜかムカッとくる。
「うん? 目が覚めましたか?」
優しそうなオッサンが覗き込んでいる。
「ここは?」
「ここは、我ら精霊族の王城。ご神木に造られた宮でございます」
「王城? マジで?」
つい聞いてしまう。
草葺きの屋根。いい加減な造りの柱。
これが王城?
「うん? ご神木?」
「左様。この世界において力を循環させる、大いなる力を持った木がご神木でございます」
そう言って、ものすごく嬉しそうな表情。
ベッドから降りて、起ち上げると体の動きがおかしい。
「お気をつけください。あなたは月が半分欠ける時間、寝ておられていたのです」
半月も?
「無論お世話は行っていました。ああ大丈夫。ご不浄は自身で浄化なさっていたようでございます」
あー何を言ってんだ? えーあーそうか、二週間寝ていたら出る物は出る。
自身で浄化? 浄化って何だ??
「オレは今日、休日だったはず。嫁さんと子どもを連れて、買い物と食事に行かなきゃ。夜には、週明けにクライアントへ出す資料をこそっとまとめて……」
そう上司にはできたと言ったが、まだ出来ていない。
ぶつぶつと、記憶を辿りながらオレはぼやく。
こんな所で寝ているなんて、飛行機に乗ったっけ? 飛行機が不時着をして、あれはアメリカのドラマ? 六個の数字が出てきて宝くじを買ったなあ。
混濁をしている記憶。
オレはふらふらと、外へ出ようとした。
まさか、ドアのない出入り口。
踏み出した先には、通路があったのだが、踏み板は幅四十センチくらいだろうか? そこを横切れば、当然空だ。
「おおっ。絶景だな」
側に見える巨大な木、その枝に小屋を造っていたようだ。
落下していきながらオレは、自身の終焉を理解する。
ビルの七階とか八階くらいの高さかなぁ。
人を巻き添えにしませんように。わざとじゃないんです。
オレは祈る。
祈りは通じたのか、誰も巻き添えにすることはなく、スチャッと足から着地。
きっと、一瞬で足はぐちゃぐちゃになり、股関節や背骨が砕けて……
「あれ? ちょっとジンときた。足は少し埋まったが、なんで?」
ふと某アニメの主人公を思い出す。
駄女神に不細工だと言われて、荒野の果てに落とされた、かわいそうな主人公。
そうか、あれと同じ感じなのかな?
地球は本当に、生物が生きるのにはキツい世界なのか。
ほら、見回せば周囲で驚いている顔は、皆美形だし、耳が長い?
そう言えばさっきの人も、耳が長かった気がする。
あれ? そうか、あの高さから落ちても平気なんて夢を見ているのか?
そうだ、オレはまだ小学生、午前中はプールへ行って、昼はきっとそうめんで、宿題をして、適当に検索をして絵日記を……
「大丈夫ですか?」
ほら、夢だから、ご都合で美人さんが目の前に……
私は竜の生け贄にならなければ、とか言うんだろう。
思わず目の前の美人さんを抱きしめる。
「大丈夫です。ここは中央コロニー。私はイツカン・ダロのスタージア」
それを聞いて、何か記憶の中に残っていた、何かが思い出される。
なんだろう? 何もかも懐かしい。あれは?
「まだ病み上がりなのです。上へ戻りましょう。さあお手を」
そう言って、彼女は俺を連れて上がっていく。ひたすらスロープを上へ上へと。
まあ、彼女が着ている丈の短い巫女装束? で、ハシゴとか上がるとなると目の行き場がなくなるだろうが。
そして再びベッドへ座らされる。
「何か、思い出されましたでしょうか?」
「何か、だって?」
「ええ、そんなにお辛そうな顔をされて、涙を流していらっしゃいますので。何かを思い出されたのかと」
気がついていないが、オレは泣いていた様だ。
最近は泣いてばかりだ、この世界へ来て……
「この世界? あれ? 何か……」
「思い出せませんか?」
実は幾度となく、カグラは目を覚ましては昏睡を繰り返していた。
シーサーペントに対して放った魔力衝撃波、それは彼の体に流れる魔力を乱した。
そして、長時間の酸素不足。
それらが、彼を壊した。
常人なら一生その影響から逃れられないが、カグラは超回復を行っていた。
ほとんど味のないかゆ。そして木の実を潰し焼き固めたクッキー。
その体内に内包する力、そして氏族が管理するコロニーで見かけないタイプの美形。
姫は意外とノリノリでカグラの世話をやっていた。
スタージア・クラース・オーセ姫二十二歳の初恋だった。
ただ危惧をするのは、他種族は意外と早く死んでしまうこと。
海辺に流れ着く者が居たりするが、百年も生きられない。
姫達は、千年近く生きられる。
そう、もし囲碁がこの世にあれば、神の一手に届くかもしれない。
少し元気になったカグラが作ったのは、リバーシだったのだが。
程なく、カグラの体は復調をして元気になったのだが、記憶の方を取り戻すまでは数年がかかり、さらに全部は無理だった様だ。
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