神の使徒は闇を走り、道化師は戯れる。ー 異世界、世直し道中記 ー

久遠 れんり

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精霊国。ソルヴェイ・オーセ・ネレム姫

第69話 騒乱

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「奴らが来るぞぉ」
 朝っぱらから下界が騒がしい。

 このコロニーは中央コロニーと呼ばれている。イツカン・ダロでは、身分により住める高さが違っているようだ。
 一般民は、地面に小屋を建てて住んでいる。

 上位者は木の上。
 他コロニーとの戦争や魔獣の襲撃時に、上の方が生き残る確率が高い。
 まあ、単純に頭が高いという意味もあるのだろうが。
 そして数年に一度、神の使いと言われている、幻獣達が暴れることがあるようだ。

 そう幻獣。
 ドラゴンとかさ、ウロボロスとかさ、あのシーサーペントだってそうだ。
 そいつが暴れるんだってさ。

 そして、名前が思い出せないオレは、スタージアなどからは、アエクオと呼ばれているが民の間では、アポストロと呼ばれているようだ。
 アエクオは海という意味で、アポストロはどうやら神の使いを意味するようだ。

「姫様、神木の洞へ避難を」
 王の相談役であるシクステン・イングヴェ・エンロートが走り込んでくる。
 そう俺の様子を見に来ていた男。
 ある程度警戒もあり、様子を見ていたようだ。
 ちなみに、六百四十八歳。

 王は、クラース・オーセ・ネレム七百三十六歳で、王妃さんは、サンドラ・シーヴ・アールバリさんは###歳とか、王が暴露したときに言葉に対してモザイクが掛かっていた。夫婦別姓というか、必要な期間しか基本一緒に暮らさないらしい。
 まあ、中にはずっと一緒というカップルもいるようだが。

 彼等は千年ほど生きるのだが、晩年になり死期が迫ると急に老化をするらしい。
 そう老化が始まると五年くらいがリミットのようだ。

 スタージアには、兄貴がいて百歳くらい離れている。
 クリストフェル・クラース・オーセ、百二十五歳くらい。

 そうそう、スタージアは二十二歳のようだ。
 
 のんびり紹介をしていたが、人々の声に悲鳴や絶叫が混じり始める。
「姫様早く」
 シクステンが叫ぶ。

「そんなにあわてるなんて、何があった?」
 オレが聞くと、やれやれと言う顔をされる。
「先日のクマとは違います。今回はモンストルムビーの集団でございます。誰ぞが巣を壊したのでしょう。瞳が真っ赤で怒りが治まっていません。大変に危険です。手を出さないでお逃げください」
 そう言って、諭すようにオレに向かって言葉をかけてくる。

「王族が逃げたら民はどうなる?」
「兵が向かっておりますから」
「勝てるのか?」
「いやそれは……」
 確か、モンストルムビーは、体長二メートルくらい。
 風魔法を操り、お尻の針から麻痺する毒をマシンガンのように射出する。体は硬く非常にやっかいで、退治しにくい。

 だが巣には、子育て用の蜜を蓄えていて、定期的に誰かがちょっかいを出す。
 まあ、クオンタムデスベアが手を出したのかもしれないが。

 そう先日コロニー近くに現れた。
 クオンタムデスベアは体長三メートル。腕は四本。
 毛が剛毛で、剣や槍も通らない。
 無論弓など目や口以外には刺さらない。

 散歩していたオレが、丁度悲鳴を聞いて駆けつけて、腕ブンブン攻撃を躱しながら殴ったら死んだ……
 その時、周囲が跪き。アポストロ様流石ですと合唱された。

 いや、シクステンには呆れられたのだが。

 そう、今は記憶も無いし、ここで暮らしながら、魔法を習っている。
 オレが持つ力は精霊力と言って、魔法を使う力は人並みを外れているようだ。
 スタージアは、そんな力が見える子らしい。
「ええ。アエクオはね、非常識なくらい多くって、まるで人間じゃないの」
 そう言ってにっこり。
 人間じゃ無いと言われて、オレは多少モヤモヤしたが、魔法以外も非常識なようで、普通なら皆は木から落ちたら死ぬようだ。

 地球での常識が通じて安心したよ。
 ただ中には、風の加護を持つ人間がいて、そう言う人は空を飛べる。

 そう、彼等は加護という名の能力を持っている。
 火とか風とか、水とか光とか。

 光は、治療に浄化、そして強力な光で焼き尽くすことができる。
 だけど今、大量のモンストルムビーがやって来て、大騒ぎ中で風使いが彼等の使う風を相殺して、地面に落としたところをたこ殴りしたり、燃やしたりしている。

 美人さんや美男子が、必死で殴る姿はなんか怖い。
 蜂が死にそうになったら、無意識だろうがニヤッと笑っているし。

 オレは空間魔法で、蜂を収納。
 生きている物は中へ入ると死ぬようだから非常に便利。
 目で見てロックオン。
「収納」
 距離が少々遠くても大丈夫。
 

「姫、お早く」
「大丈夫みたいよ」
 木の上、渡り廊下から下を見ている姫達。

 攻撃をしに来たのはどうやら数百のようだったが、あっという間に消えていく。
「あれはどういう魔法でしょうか?」
 相談役シクステンの歳でも、見たことがなかった空間魔法。
「魔法で世界を、理をゆがめているようね」
 姫があっさりと言ったが……

「それは、神の領域。どこぞの書物に空間魔法という物があると書かれておりましたが、それでございましょうか?」
「多分ね。でもあの書物に書かれていたのは、空間を曲げて点と点を繋ぐ。暗殺に適した闇の魔法と書かれていたようだけど?」
「それは、閲覧者の目をそらすための文章。確かに悪用をすればそのようなこともできますし、防げません。それに、あの術式は個人の裁量で発動などできず、魔導具や魔法陣を使わねばとても無理でございます」
 だがそう話す二人の目の前で、黒い空間へ蜂たちが吸い込まれていく。
 入るのを嫌がった蜂は、空間が閉まるときに、すっぱりと切られた。

 魔法陣が必要な超級魔法がポンポンと発動されて、蜂たちが恐るべきスピードで消えていく。
「終わりましたね。発見者から話しを聞いて頂戴」
「はっ、直ちに」
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