神の使徒は闇を走り、道化師は戯れる。ー 異世界、世直し道中記 ー

久遠 れんり

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この世界に平和と愛を

第81話 変化

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「御父様、お知り合いですか?」
「ああ、そうらしい」
 そうカグラの横には、王太子であるヒモロギが見聞を広げるために、社会見学として付いてきている。

「いい、ヒモロギ。御父様が、その…… お母様以外の女性と仲良くしないように見張っていなさい。もし、あまりにも仲が良さそうならば、この魔導具で画を撮りなさい」
「はい。お任せください。母上」
 などという約束をしていた。

 ヒモロギはさっと見て、それがビデオカメラだと理解をする。
 レンズと、これは夜間用赤外にも対応か、なるほど。

 父様だって男なのに、まあ、他とは違うから母様も必死になるか……

 こちらへ転生してから、毎日おっぱいが楽しみだったが、流石に飽きて少し眠っていた意識。最近起きてきたようだ。

 まあ無難に、体は子ども中身は大人を隠して生活中。
 どこかの誰かみたいに、事件に首を突っ込んだり、事件を呼び寄せたりしないようだ。

 船尾から着岸。係留して、後部甲板をスラントさせると、それが延びてスロープとなる。
 無論セキュリティ付きで、リモートスイッチがある。

 漁船に比べると二回りも大きい船。
 そこから降りてきた懐かしい顔…… 
 十年経っても全く変わっていない?
 少しりりしくはなったけれど、横に居る小さいカグラはなに?

 駆け寄ってきた速度が徐々に遅くなる。
 無論後ろから付いてきた連中が怖いのもあるが……

「カグラぁ」
 ディアナは開き直って駆け寄ってきた。
 ヴァイオレットは、やばそうなら逃げようと距離を取る。

「済まない、知り合いだとは思うが、記憶が無くて説明をしてくれ」
 カグラは素直に説明から入る。

 だが無視して、ディアナはカグラに抱きつきカグラ成分を漫喫をする。

 その横で、ヒモロギは子供らしくない笑顔を浮かべると、撮影を開始する。
 どうせ事情説明をしてくれるなら、その方が簡単だしということだ。

 すっかり顔役になっていたダナ達の許可を取り、港を一気に広げてすべての船を停泊させる。

 防波堤にもなるし港を囲む壁を造り、扉を付ける。

 出てきた異国の軍人。
 人種はあれだが、美男美女の軍団。

 一気に町は盛り上がる。

 そして、飲み食いをしながら、漁に出ていきなりいなくなったことを本人に説明をする。
「あんたが獲りに行った魚はこれだろう」
 そう言ってマグロがでてくる。
 片方はクロマグロそしてもう片方はカジキマグロだ。
 両方とも低温で熟成はできているようだ。

「低温で熟成をしたのか」
 少し切り取って、刺身で味見をする。

 すると周りは下がってしまう。

 まだそこまで教えていなかったか。
 ものすごく断片的な記憶。
 酸欠により、最近の浅い記憶ほど失われていた。

 だが……
「そうだ。マグロが釣れて。電気ショッカーの代わりに雷魔法を落としたらシーサーペントを怒らしたんだ。そうかそうか」
 本人は記憶を取り戻して嬉しそうだが、周りは断片的に話される内容でドン引きである。

「流石かカグラね」
 ヴァイオレットは呆れたようにつぶやく。
「でもやっぱり生きていたし、捨てられた訳じゃ無いみたいね」
 ディアナは素直に喜んでいるが、周囲の皆も小さなカグラが気になる。

「あの…… この子は?」
 そう言われて本人が気がつき、挨拶を始める。

「わたくし、若輩ながら精霊族王太子を務めさせていただいております。ヒモロギと申します。御年十歳…… いや十一歳でございます。何ぶん未熟者でありまする故、ご指導ご鞭撻を、皆様方よろしくお願い申し上げまする」
 そう言って頭を下げる。

 その言葉を聞いて皆が固まる。
 無論固まった原因は各方面で違う。

「おいヒモロギ。その日本人ライクな挨拶はなんだ?」
「そうですか? 父上、些少の事です。お気になさらず」
 そう言って酒を飲んでいる。

「こら未成年が酒を飲むな」
「あっ。しまった。浄化」
「うん。いつの間にそんなのを覚えた?」
「いやですね。前から使えましたよ」
「ほー」

 周囲から集まってくる者達。
「ねえカグラ。この子精霊族の王太子って言ったわよ。王様は誰なの?」
 ヴァイオレットの驚きと問いに対して、周囲の者達が一斉に指をさす。失礼にもカグラに向かって。

「「「おうさまぁ??!!!」」」

 ずざざと皆が下がって行く。

 そう一般的に王様とは偉い人。
 気軽に抱きしめてすりすりしたり、口に炙ったスルメを突っ込んだりしてはいけない。

 その中でヴァイオレットだけ、怪しく目が光る。
 籍は無くなったが王族の彼女。
 プライドはある。
 そこに…… 目の前に王族へと返り咲ける道がころりんと示された。

「ねえ王妃様はどんなお方? 私を側室…… じゃ駄目ね第二王妃にして」
 まるで、蜘蛛のようにカサカサとやって来てカグラの手を握る。

 流石のカグラも引いてしまう。
 そして悲しいかな、ヴァイオレットのことをあまり覚えていない。
 関係が新しかったせいなのか……
 その様子を見てすすすと、ユージーンがやって来る。

 彼はドラゴンで、オラオラ言ってカグラに鱗を引っこ抜かれた彼だ。
「主よ、力を。道を示しますのでこの娘?」
「老けていて悪かったわね」
 そう十年が経ち三十歳前後となれば普通に多少は……
 いや脂がのった妙齢の婦人にメタモルフォーゼをしていた。

「おほん。娘の記憶を主に繋ぎますが」
 記憶に残る、魂の記憶を読み出す方法。

「できるのか?」
「おそらく」
 軽く説明をして、ユージーンが二人の額に手の平を当てる。
 すると、ポワッと白い光が灯る。

 すると……
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