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この世界に平和と愛を
第84話 何かが変わった
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俺達は幾度もこの国境に来て、奴らの神経を逆なで。周囲を適当に荒らして帰っていた。そう。その間に奴らの国でクーデターを起こす。
誰が考えたのか知らないが、賢いやり方だ。
だが、今回やって来た敵は何かがおかしかった。
今までの兵の中に、奇妙な、ものすごく軽装の奴らが混ざっていた。
「そこの盗賊もどき。よく聞きなさい!!」
そんな声が、まるで雷のような大声で戦場に響いた。
発言者は女のようだ。
ここは、カレール帝国とクロムウェル王国の国境。
領主は、オレガノ=ハーブとか言う侯爵様だ。
この辺りは畑や山が多く、荒らしてから減ってしまったが、珍しいスパイスや女達が沢山いた。
クロムウェル王国側は、草しか生えない危険な土地だというのに。
両国の境界、緩衝地帯はカルスト地形。
彼等が言っているように石灰岩で、農地には向かない土地。
そこが現在戦地として使われている。
気を付けないと奈落のような穴が開いている。
落ちれば、命は無い。
「鬱陶しいから帰りなさい。これは命令です」
そう、魔道具を使って拡声をする。
その言葉を発したのはカリニャー。
彼女の能力。愛らしい美声に意識操作と幻覚を乗せた逸品。
それが戦場に流れると、彼等は思い出したように帰り始める。
「そうだ、王都へ行こう」
懐かしいようなフレーズをぼやきながら彼等は歩き始める。
表情は抜けて、目に意識は無く。
だらりだらり、ぷらりぷらりと手を振って、まるでゾンビか何かのようだ。
「帰ろう」
「帰ろう……」
口々にそう言いながら、自国の方へと戻って行く。
そこに道があろうがなかろうが、だらりだらりと足を引きずる様に……
「あれは?」
「気にしなくて良い」
侯爵軍が七割と添え物のように三割の国軍が混ざっている軍。
総勢五千人の国境警備軍。
それを指揮するのは、バージル=ハーブノ伯爵と言って、少し爽やかそうな隊長だ。今現在は、少し状況に付いてこられずプチパニックのようだが。
そう敵が帰るのに付き合い、国境警備軍が侵攻を開始。
「われらは、国境警備……」
「気にするな。こんなものは元から何とかするのが鉄則だ。終われば良いのだろう」
「それはそうですが」
ゆっくりと動く敵軍およそ三千人。
その後をけだるそうに、カレール帝国軍である兵達が、次々と国境を越える。
「道から外れるな。穴が開いているぞ」
「「「「「おう」」」」」
声は威勢が良いが、大多数は馬車や荷車に乗り、さらに配給を貰い。囓りながら遠足は続く。
人の住めるところが少ないクロムウェル王国は、街道を中心に幾つか町がある。
元々は、周辺国から追い出された貴族達が、部下とともに開いたもの。
国としてはひとりの王が治めているのだが、その政治形態は議員制に近い。
個々が町であり国なのだ。
自国の兵達が帰って来たが、飲まず食わずで、色々なものを垂れ流しながら歩いてくる。
「なんだありゃ」
当然だが、門が閉ざされる。
各町に所属をする兵達は、閉ざされた門へと張り付き、ドンドンと叩いたり、「あけろーぉ、帰還をしたぞ」
などと叫ぶ。
町長はさっさと、「なんとかしろ」と言ったのだが、見知った者達が多数いるのに矢は射かけられない。
だがそんな状態は、長くは続かなかった。
「あれが町だな」
「門を閉ざしていますね。攻城兵器を造りましょうか?」
隊長からはまともな意見。
「いやあ、あの程度なら、殴れば開くだろう」
「はっ?」
当然世の中にある常識で、至極真っ当な判断をしたバージル=ハーブノ伯爵。だが、乗せて貰っている馬車の中では、まるで非常識扱い。
ある程度の兵達は用意をした馬車に乗って移動をしていたが遅いため、適度に入れ替わりながら遠足…… いや遠征をしていた。
その車列は結構長く、中盤以降が通り掛かる頃には、すでに町は落ちていた。
「開ぃ門おぉん」
ゆっくりとした馬車の旅。
ライアンは飽きていたようで、先に馬車から飛び降り門へと走る。
大剣を持ってはいるが、カグラが言ったとおり、フンと勢いを付けて殴れば門が内側に弾けて壊れてしまった。
「おい、この町の偉い奴はどこだ?」
門番だろうか? 青い顔をした彼が小高い丘にある一軒の立派な屋敷を指さす。
あれか? 彼はキョロキョロとすると、先ほど折れた閂。
一辺が四十センチはありそうな柱だが、途中で折れて長さが三メートルほど。
ヌンという感じで投げると、追いかけ始める。
その柱が、屋敷へと突き刺さる。
それと同時に屋敷の門がなぜか爆散をした。
ライアンが一人で飛び込み、そこにいた兵達をボウリングのピンのように吹っ飛ばす。
そこへ人化をしたグリフォン。ランベルトも続く。
一つ目の町シプリアノ。
町長はオビディオ=シプリアノ。先祖は昔、カレール帝国の男爵だったが悪さをして家督を失い国外追放を喰らった。
伯爵だったとうそぶき。この地に町を開いた。
彼で三代目だか四代目。
きちんとした圧政で、私腹を肥やしていたのだが、本日それは終わりを迎える。
圧倒的な力によって。
彼は、低い税金で民を集めて、何とか基金とか、緊急補修費用とか色々名前を付けて税金には見えない税金で金を取っていた。
そう表向きの税金は安いが、その本質的民の負担は合算をすると九割近かった。
まるで日本のようだ。
だがその暮らしも、今日で終わった。
帳簿を見たカグラは、「こんな町無くて良い」と判断をした。
そうその日から、圧政を行っていた町、そして国は滅ぼされていくことになる。
その後に、吟遊詩人の語るメジャーヒット『神皇帝カグラによる大陸大改革と粛正。伝説の一年戦争』その物語が今始まった。
誰が考えたのか知らないが、賢いやり方だ。
だが、今回やって来た敵は何かがおかしかった。
今までの兵の中に、奇妙な、ものすごく軽装の奴らが混ざっていた。
「そこの盗賊もどき。よく聞きなさい!!」
そんな声が、まるで雷のような大声で戦場に響いた。
発言者は女のようだ。
ここは、カレール帝国とクロムウェル王国の国境。
領主は、オレガノ=ハーブとか言う侯爵様だ。
この辺りは畑や山が多く、荒らしてから減ってしまったが、珍しいスパイスや女達が沢山いた。
クロムウェル王国側は、草しか生えない危険な土地だというのに。
両国の境界、緩衝地帯はカルスト地形。
彼等が言っているように石灰岩で、農地には向かない土地。
そこが現在戦地として使われている。
気を付けないと奈落のような穴が開いている。
落ちれば、命は無い。
「鬱陶しいから帰りなさい。これは命令です」
そう、魔道具を使って拡声をする。
その言葉を発したのはカリニャー。
彼女の能力。愛らしい美声に意識操作と幻覚を乗せた逸品。
それが戦場に流れると、彼等は思い出したように帰り始める。
「そうだ、王都へ行こう」
懐かしいようなフレーズをぼやきながら彼等は歩き始める。
表情は抜けて、目に意識は無く。
だらりだらり、ぷらりぷらりと手を振って、まるでゾンビか何かのようだ。
「帰ろう」
「帰ろう……」
口々にそう言いながら、自国の方へと戻って行く。
そこに道があろうがなかろうが、だらりだらりと足を引きずる様に……
「あれは?」
「気にしなくて良い」
侯爵軍が七割と添え物のように三割の国軍が混ざっている軍。
総勢五千人の国境警備軍。
それを指揮するのは、バージル=ハーブノ伯爵と言って、少し爽やかそうな隊長だ。今現在は、少し状況に付いてこられずプチパニックのようだが。
そう敵が帰るのに付き合い、国境警備軍が侵攻を開始。
「われらは、国境警備……」
「気にするな。こんなものは元から何とかするのが鉄則だ。終われば良いのだろう」
「それはそうですが」
ゆっくりと動く敵軍およそ三千人。
その後をけだるそうに、カレール帝国軍である兵達が、次々と国境を越える。
「道から外れるな。穴が開いているぞ」
「「「「「おう」」」」」
声は威勢が良いが、大多数は馬車や荷車に乗り、さらに配給を貰い。囓りながら遠足は続く。
人の住めるところが少ないクロムウェル王国は、街道を中心に幾つか町がある。
元々は、周辺国から追い出された貴族達が、部下とともに開いたもの。
国としてはひとりの王が治めているのだが、その政治形態は議員制に近い。
個々が町であり国なのだ。
自国の兵達が帰って来たが、飲まず食わずで、色々なものを垂れ流しながら歩いてくる。
「なんだありゃ」
当然だが、門が閉ざされる。
各町に所属をする兵達は、閉ざされた門へと張り付き、ドンドンと叩いたり、「あけろーぉ、帰還をしたぞ」
などと叫ぶ。
町長はさっさと、「なんとかしろ」と言ったのだが、見知った者達が多数いるのに矢は射かけられない。
だがそんな状態は、長くは続かなかった。
「あれが町だな」
「門を閉ざしていますね。攻城兵器を造りましょうか?」
隊長からはまともな意見。
「いやあ、あの程度なら、殴れば開くだろう」
「はっ?」
当然世の中にある常識で、至極真っ当な判断をしたバージル=ハーブノ伯爵。だが、乗せて貰っている馬車の中では、まるで非常識扱い。
ある程度の兵達は用意をした馬車に乗って移動をしていたが遅いため、適度に入れ替わりながら遠足…… いや遠征をしていた。
その車列は結構長く、中盤以降が通り掛かる頃には、すでに町は落ちていた。
「開ぃ門おぉん」
ゆっくりとした馬車の旅。
ライアンは飽きていたようで、先に馬車から飛び降り門へと走る。
大剣を持ってはいるが、カグラが言ったとおり、フンと勢いを付けて殴れば門が内側に弾けて壊れてしまった。
「おい、この町の偉い奴はどこだ?」
門番だろうか? 青い顔をした彼が小高い丘にある一軒の立派な屋敷を指さす。
あれか? 彼はキョロキョロとすると、先ほど折れた閂。
一辺が四十センチはありそうな柱だが、途中で折れて長さが三メートルほど。
ヌンという感じで投げると、追いかけ始める。
その柱が、屋敷へと突き刺さる。
それと同時に屋敷の門がなぜか爆散をした。
ライアンが一人で飛び込み、そこにいた兵達をボウリングのピンのように吹っ飛ばす。
そこへ人化をしたグリフォン。ランベルトも続く。
一つ目の町シプリアノ。
町長はオビディオ=シプリアノ。先祖は昔、カレール帝国の男爵だったが悪さをして家督を失い国外追放を喰らった。
伯爵だったとうそぶき。この地に町を開いた。
彼で三代目だか四代目。
きちんとした圧政で、私腹を肥やしていたのだが、本日それは終わりを迎える。
圧倒的な力によって。
彼は、低い税金で民を集めて、何とか基金とか、緊急補修費用とか色々名前を付けて税金には見えない税金で金を取っていた。
そう表向きの税金は安いが、その本質的民の負担は合算をすると九割近かった。
まるで日本のようだ。
だがその暮らしも、今日で終わった。
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そうその日から、圧政を行っていた町、そして国は滅ぼされていくことになる。
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