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この世界に平和と愛を
第85話 その者達、人でなし
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「ええい。敵は数人。なんとかしろぉ」
武の町。ジャック。
当主であるジャスパー=ジャックは、弱き者は人ではないと宣言を行い、周辺を治めている。
そう言って、力なき者達は奴隷として飼われていた。
「力があれば上に上がれるはず」
下剋上上等!!
そんな町。
知っている者が見れば、世紀末。ひゃっはーな町である。
強い者はそれだけで町に貢献をしていると言って、爵位でいう騎士爵のような役職を与えた。一代役、武人である。
それなのに、やって来た者達。
多くのカレール帝国兵達は、馬車に乗ったまま後方で見ている様子。
それどころか、飯の準備を始める始末。
周囲に香辛料の良い匂いがただよってくる。
そんな中、お役に立ってみせると馬車から降りてきたのは、泣き虫ユージーン。
ドラゴンである彼は、聖獣の中でも上位のはずだが、先日鱗を毟られて泣いた話しが広まり仲間内での株価はだだ下がりである。
それでまあ、ドラゴンとしての立場を取り戻すと言って立ち上がった。
そこで彼は、強者のくせに張り切り、今度は極悪非道な奴と言われることになる。
「おう。そこの優男止まれや。ここからは、武の町。ジャックだ。通行料を払えや。それともヤル気かぁ?」
ユージーンの見た目は身長百八十センチで、白髪。目はブルー。
人化をするときにカグラに合わせたため、以外と美形。
そうこの世界では大柄ではあるが、言って見れば優男に見える。
五人組が声をかけてきたのだが、その騒動を見て、わさわさと人が集まってくる。
最初は、後ろに控える軍が気になっていたのだが、ものすごく良い匂いをさせて食事を始めたため、いらつきと安心を彼等は持ったようだ。
「やる? 俺と戦うつもりか? やめておけ、お前のようなひ弱な体では無理だろう」
ユージーンとしては相手を見て、一応警告のつもりだ。
「あんだとてめえ。ざけやがって」
「なんだかお粗末な絵が描いてあるが、その細腕。無理だ無理」
彼としては、あくまでも無難に収めているつもりである。
「この野郎」
一応の忠告に腹が立ち、彼は突っ込んでくる。
大ぶりのテレフォンパンチで、素人感丸出しである。
「ふん」
当然だが、ユージーンは軽く避けながらパンチを繰り出す。
見事なカウンターパンチ。それは彼の入れ墨。変な五芒星の真ん中にクリーンヒットをする。
ただその時に、ユージーンは感じる。
妙な文様が破壊されたときに流れ出た何か。
それは彼を持ってしても奇妙な悪寒を感じさせた。
だがそれは一瞬で、相手の頭が爆散をする。
「あれ? カグラは平気だったのに? 脆いな」
そう。力加減が分からない。
「あーやばいな。あの調子じゃ皆殺しをするぞ」
「私が行こう」
馬車からライアンが降りる。
片手に持っていた大剣を、背負うと駆け足でユージーンの所へ行く。
「カグラ様が殺生はやめろと仰っている」
「あー分かった。だけどさ。こいつら脆いんだよ。カグラ様との模擬戦。あれの百分の一くらいでも壊れるんだぜ」
そう言われて悩む。前の町では力任せに押し通り、戦いらしい戦いはしなかった。
「そうなのか?」
結果、残虐な破壊者が二人となった。
丁度町の城郭へと入ったためにカグラ達には見えなくなったが、カグラは分かっていた。
「うーんまあ。町の意識というか、主だった人々は壊れているなぁ。頭が盗賊のそれと一緒だ」
町ごと破壊しても良いかもしれない。
そんな事を思うくらい、その町に住む者達は性格がひどかった。
日々、ただ己の快楽を求めて、他人を思いやることなど考えもしない。
領主の考えに染まり、賛同する者だけが集まる町。
「自分たちがやって来たことを、やり返されるだけだ。反省をしろ」
そうぼやきながら、でてくる瘴気を浄化する。
そう悪しき心を食い荒らし、増殖した瘴気が、宿主が殺されるたびにでてくるようだ。
見た目教会ではないが、一軒の店先に置かれた水晶にそれが流れ込んでいた。
それに気がつき、水晶の破壊と浄化を行う。
悪しき者達にとって、ここは都合のよい餌場だったのだろう。
つけあがった上位市民と、虐げられる下級市民。
双方が緩衝をして、質の良い瘴気が生まれる。
恨み、そねみ、妬み。
それは格差と特権が生み出す。繁殖場としては都合が良いようだ。
「光と闇があるとき、闇は深くなるか……」
「なあにそれ?」
ディアナが昼食のカレーを食いながら聞いてくる。
当然だがヴァイオレットも横にいる。
ちっと目を離すと十年も帰ってこなかったから、当然よねということで、店はダナ達に任せたようだ。
戦争行為なのに、遠足気分だし、まあ二人とも荒事には慣れている。
オレガノ=ハーブ侯爵からは、ご意見無用の書状を貰っている。
まあ少し違うが、代理人として行政や司法的手続きを免除してくれる、そう代官の任命状のようなもの。
確かにカグラはそれを貰ったが、いきなり国境を越えた。
他国で、侯爵が出した許可証が効力を発することは無いが、誰も突っ込まない。
カグラだし。本人が他国の王だし。
そうカグラが法律。
侯爵以外はそう思っていた。
「こいつらたった二人で。兵達がアッというまに」
守備隊隊長ライムンク=グラナド男爵は人間とは思えない表情と顔色で驚く。
「あいつら、人間じゃありません」
兵が飛び込んでくる。
「人じゃないなら、なんなんだぁ」
彼等の推論は正しい。
ドラゴンと、スフィンクス。人じゃない。
武の町。ジャック。
当主であるジャスパー=ジャックは、弱き者は人ではないと宣言を行い、周辺を治めている。
そう言って、力なき者達は奴隷として飼われていた。
「力があれば上に上がれるはず」
下剋上上等!!
そんな町。
知っている者が見れば、世紀末。ひゃっはーな町である。
強い者はそれだけで町に貢献をしていると言って、爵位でいう騎士爵のような役職を与えた。一代役、武人である。
それなのに、やって来た者達。
多くのカレール帝国兵達は、馬車に乗ったまま後方で見ている様子。
それどころか、飯の準備を始める始末。
周囲に香辛料の良い匂いがただよってくる。
そんな中、お役に立ってみせると馬車から降りてきたのは、泣き虫ユージーン。
ドラゴンである彼は、聖獣の中でも上位のはずだが、先日鱗を毟られて泣いた話しが広まり仲間内での株価はだだ下がりである。
それでまあ、ドラゴンとしての立場を取り戻すと言って立ち上がった。
そこで彼は、強者のくせに張り切り、今度は極悪非道な奴と言われることになる。
「おう。そこの優男止まれや。ここからは、武の町。ジャックだ。通行料を払えや。それともヤル気かぁ?」
ユージーンの見た目は身長百八十センチで、白髪。目はブルー。
人化をするときにカグラに合わせたため、以外と美形。
そうこの世界では大柄ではあるが、言って見れば優男に見える。
五人組が声をかけてきたのだが、その騒動を見て、わさわさと人が集まってくる。
最初は、後ろに控える軍が気になっていたのだが、ものすごく良い匂いをさせて食事を始めたため、いらつきと安心を彼等は持ったようだ。
「やる? 俺と戦うつもりか? やめておけ、お前のようなひ弱な体では無理だろう」
ユージーンとしては相手を見て、一応警告のつもりだ。
「あんだとてめえ。ざけやがって」
「なんだかお粗末な絵が描いてあるが、その細腕。無理だ無理」
彼としては、あくまでも無難に収めているつもりである。
「この野郎」
一応の忠告に腹が立ち、彼は突っ込んでくる。
大ぶりのテレフォンパンチで、素人感丸出しである。
「ふん」
当然だが、ユージーンは軽く避けながらパンチを繰り出す。
見事なカウンターパンチ。それは彼の入れ墨。変な五芒星の真ん中にクリーンヒットをする。
ただその時に、ユージーンは感じる。
妙な文様が破壊されたときに流れ出た何か。
それは彼を持ってしても奇妙な悪寒を感じさせた。
だがそれは一瞬で、相手の頭が爆散をする。
「あれ? カグラは平気だったのに? 脆いな」
そう。力加減が分からない。
「あーやばいな。あの調子じゃ皆殺しをするぞ」
「私が行こう」
馬車からライアンが降りる。
片手に持っていた大剣を、背負うと駆け足でユージーンの所へ行く。
「カグラ様が殺生はやめろと仰っている」
「あー分かった。だけどさ。こいつら脆いんだよ。カグラ様との模擬戦。あれの百分の一くらいでも壊れるんだぜ」
そう言われて悩む。前の町では力任せに押し通り、戦いらしい戦いはしなかった。
「そうなのか?」
結果、残虐な破壊者が二人となった。
丁度町の城郭へと入ったためにカグラ達には見えなくなったが、カグラは分かっていた。
「うーんまあ。町の意識というか、主だった人々は壊れているなぁ。頭が盗賊のそれと一緒だ」
町ごと破壊しても良いかもしれない。
そんな事を思うくらい、その町に住む者達は性格がひどかった。
日々、ただ己の快楽を求めて、他人を思いやることなど考えもしない。
領主の考えに染まり、賛同する者だけが集まる町。
「自分たちがやって来たことを、やり返されるだけだ。反省をしろ」
そうぼやきながら、でてくる瘴気を浄化する。
そう悪しき心を食い荒らし、増殖した瘴気が、宿主が殺されるたびにでてくるようだ。
見た目教会ではないが、一軒の店先に置かれた水晶にそれが流れ込んでいた。
それに気がつき、水晶の破壊と浄化を行う。
悪しき者達にとって、ここは都合のよい餌場だったのだろう。
つけあがった上位市民と、虐げられる下級市民。
双方が緩衝をして、質の良い瘴気が生まれる。
恨み、そねみ、妬み。
それは格差と特権が生み出す。繁殖場としては都合が良いようだ。
「光と闇があるとき、闇は深くなるか……」
「なあにそれ?」
ディアナが昼食のカレーを食いながら聞いてくる。
当然だがヴァイオレットも横にいる。
ちっと目を離すと十年も帰ってこなかったから、当然よねということで、店はダナ達に任せたようだ。
戦争行為なのに、遠足気分だし、まあ二人とも荒事には慣れている。
オレガノ=ハーブ侯爵からは、ご意見無用の書状を貰っている。
まあ少し違うが、代理人として行政や司法的手続きを免除してくれる、そう代官の任命状のようなもの。
確かにカグラはそれを貰ったが、いきなり国境を越えた。
他国で、侯爵が出した許可証が効力を発することは無いが、誰も突っ込まない。
カグラだし。本人が他国の王だし。
そうカグラが法律。
侯爵以外はそう思っていた。
「こいつらたった二人で。兵達がアッというまに」
守備隊隊長ライムンク=グラナド男爵は人間とは思えない表情と顔色で驚く。
「あいつら、人間じゃありません」
兵が飛び込んでくる。
「人じゃないなら、なんなんだぁ」
彼等の推論は正しい。
ドラゴンと、スフィンクス。人じゃない。
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