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この世界に平和と愛を
第86話 心理
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守備隊隊長ライムンク=グラナド男爵は、兵達を押し出しながら考える。
奴らの動きはゆっくり。だが近くに行くと、いきなり弾けたように兵達が飛んでいく。
なぜか、体が動かないから、矢を射かけた。
自軍の兵がいたけれど気にせずに。
だが、いくつかの矢がある点で弾けて地面へと落ちる。
そして、最後の矢は空中で止まり、よく見ると掴まれていた。
そう、彼等は無手で飛んでくる矢をはじいていた。
「化け物か?」
つい口をついてそんな言葉が出る。
「そうだ。お知らせを、しなければ」
彼はそこそこ強いが、生まれと謀略によりこの立場まで上がってきた。
どうやら規格外の敵。つまり自分より強いと判断をして、尻尾を巻いて逃げることに決めたようだ。
「領主様に報告をしに行く。しっかり守備をしろ」
そう言い残して、彼は屋敷の上階へと移動をする。
そこからのみ出入りができる、脱出口を利用をするために。
「ジャック様。敵でございます。脱出を」
あわててやって来た守備隊隊長ライムンク=グラナド男爵。
それを見て、ジャスパーは眉をひそめる。
「敵が来たのは知っておる。二名という大軍のようだな」
彼は嫌みのつもりで言ったのだが、通じなかったようである。
「早く。早くお逃げください」
「ええい。やかましい。お前の職務は何だ? そして兵達はどうしたぁ」
「ほっ、ほぼ全滅でございますぅ」
焦燥した感じで告げられる、信じられない言葉。
「何? たかだか二人の敵に?」
「はい左様です」
「おもしろい」
そう言って彼は、下階へと降りて行ってしまう。
人には失敗すればやり直しがきく時と、効かないときがある。
よく勝ち続ける事などできない。次回に負けを取り返せば良いと言うがそれは、命があってこその話である。
「うぬら退けい」
「ジャック様。駄目です。お早くお逃げ…… うぎゃあ」
目の前で喋っていた兵。その姿がいきなり消えた。
「まだ強いらしい」
「下手くそめ。こうやってダナ」
「うぎゃあぁ」
「あれ。脆いものだな」
二人のちょっと大柄な優男。そいつらは兵を吹き飛ばしながらやって来る。
緊張も気負いもなく、目の前にいるのは虫けらであるかのように。
「我こそは、ジャックの町当主。ジャスパー=ジャックである。貴様ら何者だぁ」
其れは当然の質問。
だがそれが、以外と効果的であった。
「うん? 何者? それはどう答えれば良いんだ?」
「俺に聞くんじゃない。知恵者であると貴様らは言っておるではないか。答えよ」
確かにスフィンクス達は、知恵者であると喧伝をしている。
「そう…… そうだな…… わしらは、カグラ様への供物?」
「はっ? そうなのか。俺はお役に立ってこいと言われたが、供物だとすると…… 夜とぎをするのか?」
「あっいや。違うか? ならば護衛?」
そう言ったら、またユージーンが変な顔をする。
「主人の方が圧倒的にお強いのだが、護衛ってどういう役目だ?」
「それは、主人を守って……」
説明をしながら声が小さくなっていく。
「何をごちゃごちゃ言っておる。いくぞお」
「「やかましい」」
口を挟んだジャスパー。彼に関西人顔負けの突っ込みが行われた。
パンと言う軽快な音。
彼の胸部は鍛え上げられて、女性かと思うくらい大胸筋が発達をしていた。だが、中には空洞がある。そう一瞬で、深海に落ちたかのように、肺から空気は押し出されて、ベこりとヘコんでしまった。
彼は、次期領主として幼少から修行を行い、人並み外れた才覚を見せた。
それと同時に、イエスマンしかいない環境の中で増長をして、すっかり…… ジャイアン症候群に罹患をする。そう自分のものは自分のもの、人のものは自分のもの。力あるものがすべて正しいというあれだ。
ところが、本物の非常識にはかなわなかったようだ。
彼には、二人の突っ込みが見えなくて、もろにどつかれてしまった。
「てめえが変なことを聞くからだろうが…… あっ」
「おい動け、死ぬんじゃない。カグラ様が検分をするのに立ち会い…… だめだ。壊れちまった」
二人は駆け寄ったのだが、そんな状態で人は生きられない。
なぜか彼等の頭の中に”ショパン:エチュード Op・10-3 ホ長調 「別れの曲」”が流れていた気がした。
しかなく、壊れたそれを抱えて隊列に戻ることになる。
カグラ達は食事も終わって、お茶を飲み待ったりとしていた。
そこに帰ってくる二人。
何やら怪しいものを引きずって……
「まさかとは思うが?」
「すみません。つい」
カグラは、一応見てみる。だが、一目で治療は諦めた。
「仕方が無い。行くぞ」
「「「「「おう」」」」」
彼等は検分をして、一応新たな当主を町民の中から選ぶ。
そうして次々と移動をして、わずか二週間でクロムウェル王国は無くなった。
オレガノ=ハーブ侯爵へと伝令を放ち、彼等はそのまま西のイーデン王国へ報告に入った。
そう敵意はなかった。
ついうっかりである。
ところが此処の辺境伯は、いい加減追い詰められておかしくなっていた。
パニック障害その他もろもろ。
国外との境界を守るエラスギタ=アナーキーモウヴィチ侯爵は、王に対しても覚えがよく、信頼もされていた。
それが、国境へ敵が現れだした頃、いきなり王都への召喚状がやって来た。
「貴様がクロムウェル王国と繋がっていると、報告が上がってきた」
まあそんな感じで、王は聞き耳を持たない状態。
仕組んだのは第一王妃だったのだが、その時にはまだそんな事は知られていなかった。
奴らの動きはゆっくり。だが近くに行くと、いきなり弾けたように兵達が飛んでいく。
なぜか、体が動かないから、矢を射かけた。
自軍の兵がいたけれど気にせずに。
だが、いくつかの矢がある点で弾けて地面へと落ちる。
そして、最後の矢は空中で止まり、よく見ると掴まれていた。
そう、彼等は無手で飛んでくる矢をはじいていた。
「化け物か?」
つい口をついてそんな言葉が出る。
「そうだ。お知らせを、しなければ」
彼はそこそこ強いが、生まれと謀略によりこの立場まで上がってきた。
どうやら規格外の敵。つまり自分より強いと判断をして、尻尾を巻いて逃げることに決めたようだ。
「領主様に報告をしに行く。しっかり守備をしろ」
そう言い残して、彼は屋敷の上階へと移動をする。
そこからのみ出入りができる、脱出口を利用をするために。
「ジャック様。敵でございます。脱出を」
あわててやって来た守備隊隊長ライムンク=グラナド男爵。
それを見て、ジャスパーは眉をひそめる。
「敵が来たのは知っておる。二名という大軍のようだな」
彼は嫌みのつもりで言ったのだが、通じなかったようである。
「早く。早くお逃げください」
「ええい。やかましい。お前の職務は何だ? そして兵達はどうしたぁ」
「ほっ、ほぼ全滅でございますぅ」
焦燥した感じで告げられる、信じられない言葉。
「何? たかだか二人の敵に?」
「はい左様です」
「おもしろい」
そう言って彼は、下階へと降りて行ってしまう。
人には失敗すればやり直しがきく時と、効かないときがある。
よく勝ち続ける事などできない。次回に負けを取り返せば良いと言うがそれは、命があってこその話である。
「うぬら退けい」
「ジャック様。駄目です。お早くお逃げ…… うぎゃあ」
目の前で喋っていた兵。その姿がいきなり消えた。
「まだ強いらしい」
「下手くそめ。こうやってダナ」
「うぎゃあぁ」
「あれ。脆いものだな」
二人のちょっと大柄な優男。そいつらは兵を吹き飛ばしながらやって来る。
緊張も気負いもなく、目の前にいるのは虫けらであるかのように。
「我こそは、ジャックの町当主。ジャスパー=ジャックである。貴様ら何者だぁ」
其れは当然の質問。
だがそれが、以外と効果的であった。
「うん? 何者? それはどう答えれば良いんだ?」
「俺に聞くんじゃない。知恵者であると貴様らは言っておるではないか。答えよ」
確かにスフィンクス達は、知恵者であると喧伝をしている。
「そう…… そうだな…… わしらは、カグラ様への供物?」
「はっ? そうなのか。俺はお役に立ってこいと言われたが、供物だとすると…… 夜とぎをするのか?」
「あっいや。違うか? ならば護衛?」
そう言ったら、またユージーンが変な顔をする。
「主人の方が圧倒的にお強いのだが、護衛ってどういう役目だ?」
「それは、主人を守って……」
説明をしながら声が小さくなっていく。
「何をごちゃごちゃ言っておる。いくぞお」
「「やかましい」」
口を挟んだジャスパー。彼に関西人顔負けの突っ込みが行われた。
パンと言う軽快な音。
彼の胸部は鍛え上げられて、女性かと思うくらい大胸筋が発達をしていた。だが、中には空洞がある。そう一瞬で、深海に落ちたかのように、肺から空気は押し出されて、ベこりとヘコんでしまった。
彼は、次期領主として幼少から修行を行い、人並み外れた才覚を見せた。
それと同時に、イエスマンしかいない環境の中で増長をして、すっかり…… ジャイアン症候群に罹患をする。そう自分のものは自分のもの、人のものは自分のもの。力あるものがすべて正しいというあれだ。
ところが、本物の非常識にはかなわなかったようだ。
彼には、二人の突っ込みが見えなくて、もろにどつかれてしまった。
「てめえが変なことを聞くからだろうが…… あっ」
「おい動け、死ぬんじゃない。カグラ様が検分をするのに立ち会い…… だめだ。壊れちまった」
二人は駆け寄ったのだが、そんな状態で人は生きられない。
なぜか彼等の頭の中に”ショパン:エチュード Op・10-3 ホ長調 「別れの曲」”が流れていた気がした。
しかなく、壊れたそれを抱えて隊列に戻ることになる。
カグラ達は食事も終わって、お茶を飲み待ったりとしていた。
そこに帰ってくる二人。
何やら怪しいものを引きずって……
「まさかとは思うが?」
「すみません。つい」
カグラは、一応見てみる。だが、一目で治療は諦めた。
「仕方が無い。行くぞ」
「「「「「おう」」」」」
彼等は検分をして、一応新たな当主を町民の中から選ぶ。
そうして次々と移動をして、わずか二週間でクロムウェル王国は無くなった。
オレガノ=ハーブ侯爵へと伝令を放ち、彼等はそのまま西のイーデン王国へ報告に入った。
そう敵意はなかった。
ついうっかりである。
ところが此処の辺境伯は、いい加減追い詰められておかしくなっていた。
パニック障害その他もろもろ。
国外との境界を守るエラスギタ=アナーキーモウヴィチ侯爵は、王に対しても覚えがよく、信頼もされていた。
それが、国境へ敵が現れだした頃、いきなり王都への召喚状がやって来た。
「貴様がクロムウェル王国と繋がっていると、報告が上がってきた」
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