神の使徒は闇を走り、道化師は戯れる。ー 異世界、世直し道中記 ー

久遠 れんり

文字の大きさ
101 / 117
魔神討伐

第100話 関係者は集う

しおりを挟む
「どうします?」
 ここは、小国家群との分岐点。

 峠の茶屋周辺に……
 いや重要拠点だから、宿場町で結構な町があるのだが、そこに集う奇妙な集団。
「カレール帝国へ行けと言われたが、事が事だ。どうする?」
 額を付き合わせて彼等は悩む。

「よし。ちと見てくる」
 その日、この周辺でドラゴンが目撃されて大騒ぎとなった。
 ここは、三国の国境でもあり、どこも害がなかったのならいいかと流されたのだが。

 ユージーンが、変化をとき飛んだだけ。
 あっという間に、カグラ達の馬車を見つけて戻っていく。
 着替えさえあれば、報告をすれば良かったと後で後悔をした。


「見つけたぞ。まだ山の中におられた」
「ではそちらに行こう」
 そうして集団は進路を変えた。


 ―― その頃。
「あの奇妙な奴らが動き出す前に事を進めるか……」
「奇妙? ああ、あれは、獣たちよ」
「獣?」
「えーとね。ドラゴンとかが居たわね」
「なぜそんな物が、人の姿で?」
「さあ?」
 そんなのんきな会話だが、暗黒聖教の施設。その地下では、魔神様の好物である恨み妬み恐怖。そんな物を得るために、家族の前でなぶり犯し殺すというエグい事が繰り替えされていた。

 無論見せられている者達は、血の涙を流し発狂寸前である。

 これは彼等が逃げ込んだ施設だけではなく、大陸中の施設で行われていた。
 そう、生け贄を捧げよという事だ。

 そんな教団を引き込んだ領主が一人。
 元ダミアン王国。現モナリチア王国、バークヘア=ウィリアム子爵家。
 自身の趣味と教団の思惑が合致をして、彼は引き入れてしまった。
 周辺の町や村から家族単位で攫い、生きたまま家族が解剖された。

 だがどこにでも人目はあり、それが露呈する。
 かの家を復興するために尽力をした貴族達は、当然だが怒り。かの家へと懲罰のために向かった。

 そう今回。モナリチア王国から、使者が来ていなかった理由である。


「ぬううっ。何じゃあれは。人なのか?」
 その集団は、真っ黒なフード付きの修道服を着て、手にナイフなどを持ち、切られようがヤリで突かれようが、痛みを感じる雰囲気ではなく。そのまま攻撃をしてくる。
 そうそれはゾンビの集団。

 高濃度の瘴気により蘇った地獄の軍団。
 目の前で家族を殺された恨みのみを持ち、目の前にいる生者達を襲う。
 ただそれだけのモンスター。

 討伐軍のトビアス=ハーケス侯爵達は、じりじりと押し返される。
 あの一件で、伯爵から侯爵と陞爵しょうしゃくをした様だ。
 そんな中、倒されたはずの自軍の兵が、こちらに向かってやって来始める。
 そう敵となって……

「撤収。増援の伝令を出せぇ」

 その後彼等は、第三次討伐隊までを出したのだが、敵を利するのみでかえって敵勢力が増してしまった。

「どうする?」
「恥を忍び、周辺国に助力を願おう……」
 長い沈黙の後、答えが出る。

「そうだな。このままでは他国にまで被害が広がる可能性がある。デュラム=モナリチア王から、助力の触れを出していただこう」



 ―― そして。
「誓約の書類はこれで結構でしょう」
 ヴァイオレット達が中心となって国としての誓約書を作成。
 調印をして、正式に傘下へ納まった。

 そんな事をしていると、ドラゴンが現れたと大騒ぎになる。

「何かがあったのかな?」
 心配をしたのだが、三日ほどで彼等は合流をしてきた。

「カグラ様。実は……」
 その話は驚きだった。

「なんで、二国も滅ぼすの?」
「あーいや……」
「まあいい。それで、居たのは魔人族?」
「いえ、それとは様子が違います。魔人族はこんな感じなので」
 マルファは指をさされて驚く。

 魔人族は、大陸に吹きだしてきていた瘴気を浴びて変異した者達。
 マルファは悪魔と人間の交配種。
 少し違うのだが、まあ同じ感じなのだろう。

 ただ彼女の変化は少しで、角がちょっと生えて、身体能力が爆上がり、そして魔力量も爆上がりしただけの普通の人間だ。

 カグラ達に比べれば……

「もっと強く、もっと邪悪です」
「そうそう、魔力量も半端なくて」
「カグラ並みなの?」
 ディアナに突っ込まれる。

「いえ。そこまでは。いきなり取り付かれて、鱗をはがすような非道もされませんでしたし」
「そうなんだ」
 そんな彼らの話を聞いてカグラは少し首をかしげる。

「俺の方がひどいような話だな?」
「そりゃあも…… あー。いいえ。カグラ様を尊敬しております」
 びしっとユージーンは敬礼をする。


 そんな後に、ごまかすように話が出る。
「エザリントン帝国へ向かう途中で、一人人間を拾いまして」
「人間? 拾った」
「ええ、こちらの小国家群へ行くなら頼むと言われて」
「何者だ?」
「ええと、金級冒険者のバーリフェルトとか言う名前です」
「金級?」
 カグラの頭に色ボケギルド長が浮かぶ。

「あれ? バーリフェルト…… そんな名前を聞いた気がする。会おう」
「あっ、本人は動けないので寝ています。リリスとか言う奴の攻撃で、まきぞえをくらったとか」

 少し考えるが……
「まあいい。行こう」
 一瞬担架で運んでこようかと、兵達が気を利かしたところで、カグラは歩き出してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...